エピローグ
神域にて———少年、シリウスは必死に木剣を振るっていた。
ただ我武者羅に木剣を振るうだけではない。より洗練され、より鋭く。木剣を振るう。
それを離れた場所から見詰め、山神である俺は思う。シリウスの持つ資質、真なる霊長種としての資質は神霊種である俺を遥かに上回るだろう。或いは、後々神霊種すら上回るかもしれない。
神霊種。最強たる精神体を持つ種族。肉体ではなく、精神の頂点に立つ種族だ。精神を主体とする神霊種は主に精神活動により奇跡を起こす。即ち、霊性としての頂点だ。
しかし、それとは違いシリウスの持つ資質。固有宇宙は己の存在を一つの概念宇宙とする。
それは即ち、人の形をした単一宇宙だ。固有宇宙とは、文字通り固有の宇宙を差す。
固有の宇宙概念。単一の宇宙概念だ。
己を固有の宇宙とする事で、人は単一の概念存在と化す。それは即ち、神霊種ともまた異なる法則で動く存在になるという事だろう。それは、即ち一つの進化形態に他ならない。
異なる進化のカタチ。異なる在り方。異なる摂理。
多元宇宙は、それ等異なる進化を果たす事こそを是としている。それ故に、あらゆる多元宇宙は異なる進化のカタチを内包している。異なる進化により、滅びを回避している。
「或いは、その先にこそ世界の真の造物主に辿り着く道筋になるやもしれんな」
世界の真の造物主———あらゆる多元宇宙の根源たる原初世界の王。
或いは、彼こそがそれに到達出来うる存在やもしれない。そう、俺は考えた。




