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無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
閑章、神霊ミコト編
27/57

9、神霊種の時代

 世界は新たな時代(アイオン)にシフトいたしました。ようこそ、マスター……


          ・・・・・・・・・


 世界(せかい)は新たな時代へシフトした。そう、俺は(たし)かに自覚した。


 気付けば、俺は真っ白な世界にいた。其処は物質界(マテリアル)のたゆたう次元のはざまのようであり、量子論的なエネルギーの海のようであり、そして、純精神世界(スピリチュアル)でもあった。


 そう、其処は純精神世界だ。量子論的エネルギーの海だ。次元のはざまだ。そして、其処こそが神霊種の故郷とも呼ぶべき高次世界。思考界(しこうかい)だ。純粋に、思考活動こそが全ての世界だ。


 即ち、此処こそが宇宙を創造する為のリソースの(うみ)なのである。神霊種は、この海で世界を観測する事であらゆる宇宙を創造(そうぞう)する事が可能となる。


 異なる物理、異なる法、異なる摂理。それ等を創造し宇宙(セカイ)を創る。


 文字通り、この世界は神霊種が宇宙という巨大な概念(がいねん)を創造する()なのだろう。


 新たに神霊種となった俺。俺は、神霊種として無事覚醒(かくせい)したのだ。


 そして、神霊種となった自身に新たな力が宿っている事を俺は即座に理解した。


 それは、神の権能(けんのう)とも呼ぶべき力だ。いや、或いは神の権能以上の権限か。それは、この多元宇宙を掌握する真なる霊長種としての権限だ。真なる霊長権(れいちょうけん)、それが俺に宿っていた。


 或いは、マスターコードとも()ぶべきかもしれない。この世界、この多元宇宙に住まう全生命を完全掌握する特級権限。それは、この多元宇宙に住まう全生命(すべて)を覚醒させる為の権限だ。


 そう、俺は神霊種でありながら神霊種を()えた権限を持つ。特級権能と呼ぶべき力を。


 故に、後は一言命じるだけで良い。一言命じるだけで、この多元宇宙は(すく)われる。


 文字通り、それだけの権限を有するのだから……


『霊長種ミコトの名の下に命ずる。全人類よ、神霊種に覚醒(かくせい)せよ!』


 瞬間、それは即座に実行(じっこう)された———


 人は、どうあっても神にはなれない。それは、世界の真理(しんり)だ。しかし、その不条理を捻じ曲げて人類は今神霊種として覚醒した。それは、最上級の奇跡(きせき)だ。


 奇跡は起きた。文字通り、世界のシステムは覆され人類は(さき)の時代へと進んだのだろう。それを確認して俺は()しと頷いた。これで良いと……


 世界は、宇宙は救われた。後は、各々がそれぞれの意思と意志により前へと進めばいい。


 あとは、全て世界に住まう新人類の手に(ゆだ)ねられたのだから。新人類、神族に委ねられた。


 ふと、意識を元居た世界に向ける。其処(そこ)には、全人類が神霊種へと進化した世界が。新たな時代を迎え新たな世界へとシフトした。神霊種として覚醒した人類は、(なか)ば混乱状態だった。


 中には、暴動が起きている場所もある。世界は混乱の(きわ)みにあった。


 まあ、いきなり何の脈絡もなく覚醒したのだ。それも当然だろう。


 しかし、中には超常の力を得て半ば喜んでいる者も居る。超常の世界に歓喜(かんき)する者も居る。


 何処もかしこもお(まつ)り騒ぎ———


 おそらく、これから人類は(ため)される事だろう。文字通り、人類は次のステージに立った。


 それはつまり、()くも悪くも新たな世界は新人類に、覚醒者達に委ねられたという事だ。この世界がどうなるかは、後は世界に()まう者達に委ねられる事だろう……


 俺は、安堵(あんど)の情を(いだ)きそのまま意識を手放した———


          ・・・・・・・・・


 そして、気付けば俺は知らない世界に居た。そして、目の前には知らない男が居た。


「………ようやく目を()ましたか。新たな霊長種」


「………とりあえず、お()まりのセリフから。此処(ここ)は何処?貴方は誰?」


「それを言うなら、此処は何処?私は誰?ではないか」


 うむ、そうともいう。しかし、本当にこいつは(だれ)だ?一体俺は何処に居る?少なくとも、俺が今まで居た多元宇宙の何処でもない事は確かだ。此処は、全く未知(みち)の世界だった。


 ()ての観測出来ない、無限と永遠(えいえん)の世界。全てが自己完結した。大地も空も、構成粒子の全てが宇宙規模の質量を持つ規格外の世界。其処(そこ)に、俺は立っていた。


 存在密度も、内在時間も、世界規模も、なにもかもが規格外。限界も制限も存在しない、文字通り絶対至高の世界だった。物理も数学も、あらゆる概念法則が意味を()さない。


 ……本当に、此処は何処だ?


「本当に(だれ)だお前?此処は一体何処だ?」


「俺の事はチーフとでも呼んでくれ。そして、此処は原初世界(げんしょせかい)だ」


「原初世界?」


 首を(かし)げた俺に、チーフと名乗った男は言った。


「そう、此処は原初世界。(すべ)ての多元宇宙の源流世界だ」


「全ての多元宇宙の……源流(げんりゅう)だって?」


「そう、全ての多元宇宙はこの世界を源流にしている。見ろ、上空の輝く星々(ほしぼし)を。その全てが多元宇宙の集合である超多元宇宙群だ。そして、全ての多元宇宙はこの世界を(もと)にして誕生する」


 超多元宇宙群。そう、チーフは()げる。この夜空の星々が、原初世界の空を彩る星々が、全て多元宇宙の集合であると。そんなとんでもない事を()った。


 それが本当なら、とんでもない規模(きぼ)の世界だろう。世界や宇宙どころか、多元宇宙そのものがまるで夜空の星のように(ちい)さく見える規模の世界なのだから……


 その世界規模は、明らかに図抜けている。流石の俺も、笑うしかなかった。


「……そうか、俺はずいぶんと小さい世界に()んでいたんだな。俺達は」


「………………」


「なあ、俺は一体どうすれば良いんだ?俺は、俺の住む世界を(すく)う為に神霊種になった。俺の住む多元宇宙を救う為に神霊種へと(いた)った。しかし……」


 しかし、その救った宇宙すら原初世界にとって無数にある(ほし)の一つに過ぎない。


 その事実に、俺の心は()れそうだった。俺は、一体何の為に世界を(すく)ったのか?


 しかし、チーフはそっと溜息を吐くと言った。


「残念ながら、その(こた)えはお前自身が見つけるべきだ。しかし、そうだな……」


「…………」


「他でもないお前が望むなら、お前に新たな道を提示(ていじ)しよう。その世界で答えを探せ」


 そう言い、チーフはある多元宇宙を指差す。ある多元宇宙の中にある、ある世界。その中の一つの惑星を見て俺は激しい雷に()たれたような気がした。


 其処は、その世界はまごう事なき神造世界だった。七つの大陸を、大海に(かこ)まれた世界。その神造世界には人類と神霊、魔族と幻想種、巨人がそれぞれ()んでいた。


 人類が居た。神霊種が居た。魔族が居た。巨人族が居た。幻想種が居た。魔物が居た。


 それは、ある種の箱庭のようでありある種の理想郷(りそうきょう)のようであった。


 そう、其処は一種のユートピアだ。その世界には、あらゆる(しゅ)が存在している。神域というある種の異次元も存在している。あらゆる文明(ぶんめい)が存在している。


 その世界は、俺にとって本当に輝いていた。それこそ、星のように輝いて見えた。


 あらゆる種が、あらゆる生命(いのち)が、星のように輝いていた。()きていた。


 そして、俺は理解した。ああ、そうか。そう言う事かと。どれほど小さくとも、どれほど極小の世界であろうとも、それでも人は生きている。輝いている。


 例え、世界が明日(ほろ)ぼうともきっとそれまでの一瞬を全力で()きる。


 それは、ある少女(しょうじょ)の言葉ではなかったか。


「あの、世界は……?」


「あの世界は、神造世界”ウロボロス”。世界巨人の骸と命から()まれた世界だ」


「世界巨人?」


 チーフは、こくりと頷いた。そして、その世界を指差したまま俺に視線を()けて言った。


「お前、あの世界に別宇宙(べつうちゅう)からの神霊種として向かってみないか?」


「別宇宙からの、神霊種として……」


「……無論、その手引きは俺がしよう。ただし、その世界に()いた後はお前に任せる」


 その世界で何を()すのかは、お前次第だ。そう、チーフは言った。その言葉に、少なくとも俺は心を揺り動かされていた。心()かれていた。


 そう、後は俺の意思(いし)次第だ。これは、俺の意思で決める事だろう。なら、どうするか?


 ・・・


 ・・・・・・


 ・・・・・・・・・


 良し、と俺は頷いた。そして、覚悟(かくご)を決めた()みを浮かべて言った。


「解った。お前にどんな目的があるのかは知らないが、それに()ろう」


 その言葉に、チーフは口元を獰猛に引き裂いて笑った。その笑みはとても(たの)しそうだ。


「では、早速はじめよう。お前をあの世界に(おく)り届ける」


 そう言い、チーフは俺の額に指を()き付けた。その瞬間、俺の意識(いしき)は……

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