表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
無銘の世界~personaluniverse~リメイク  作者: ネツアッハ=ソフ
1、少年編
14/57

エピローグ

 その頃、エルピス伯爵領にある辺境の村にて。ちょっとした(さわ)ぎが起きていた。


「マーヤー‼」


「っ、ハワード⁉」


 村に、突然領主であるエルピス伯爵が来訪(らいほう)したからだ。その光景に、村人達は騒然として村長も慌てて地面に額をこすり付け平伏(へいふく)している。それを見て、呆然(ぼうぜん)とするミィ。


 しかし、当の本人であるエルピス伯爵と呼びかけられたマーヤーにはそれどころではない。何故なら彼等は決して他人ではない、強い(えん)があったからだ。それこそ、切っても切れない深い縁が。


 その縁とは・・・


「何故、此処が・・・?ハワード」


「解らないと思うか?自分の(つま)の居場所を探さない(おっと)が何処に居るのか・・・」


「それは・・・」


 そう、この会話からも解る通り二人は夫婦(ふうふ)なのだ。その会話の内容に、場はより騒然とする。そんな中母親と伯爵の二人を交互に見ていたミィは、小首を(かし)げて問う。


「えっと、貴方が私のお父さんですか?」


 その言葉に、村長達は大いに慌てる。伯爵に対し、何て口の()き方をと。しかし、当のエルピス伯爵はそんな幼い我が子の姿に小さく微笑んだ。とても(おだ)やかな、優しい笑顔だ。


「ああ、そうだよ?君は私の()だ」


 そう言い、そっと娘の頭を()でる。ミィはくすぐったそうに目を細めた。


 どうやら、自分の父親を嫌ってはいないらしい。その表情は少し嬉しそうだ。


 そして、伯爵は。ハワード=エルピスは視線(しせん)をミィから自分の妻であるマーヤーに向けると、表情を真剣な物に変えて静かに告げた。自身の来訪の目的(もくてき)を・・・


「マーヤー、本当は俺も君に会うつもりは無かったんだ。君の想いを()んで、影から君を守る事に専念するつもりでいた。その筈だったんだが、状況が変わったんだ」


「状況が・・・変わった・・・?」


 少し、不安そうな顔をするマーヤーに対し、ハワードは静かに頷く。


「この傍の山道を通ったレイニー伯爵の(むすめ)が、山賊に襲われたらしい。それを、黒髪に青い瞳の少年が魔術を使い助けたそうだ」


「っ、お兄ちゃん‼?」


 ハワードの言葉に、真っ先にミィが反応した。マーヤーは、ただ黙って辛そうに唇を()む。その姿に伯爵であり彼女の夫でもあるハワードは何かを(さっ)した。


 彼はマーヤーの瞳に視線を合わせ、あくまで穏やかな口調で問う。


「マーヤー、君は何かを知っているのではないか?」


「それは・・・、それ、は・・・・・・」


 言い辛そうにするマーヤーだったが、やがて何かを諦めたように項垂(うなだ)れた。その表情には、何処か悲しげな感情が見え隠れしていた。その表情に、ハワードは思わず彼女を()き寄せる。


 抱き寄せられた彼女は、そっとハワードの胸元に(すが)り付きながら呟いた。


「あの子は、何か巨大な使命と試練(しれん)を宿して生まれてきたの」


「巨大な使命と、試練・・・?」


 問い返したハワードに、マーヤーは静かに頷いた。


「あの子は、神大陸に住む神々ですら関与しえない巨大な運命(うんめい)を宿して生まれてきたの。その為の使命と試練があの子の未来に立ちふさがっている。私にはそれが()えた。だから・・・」


「だから、君は我が子に魔術の知識(ちしき)を与えたと?」


「・・・・・・・・・・・・」


 ハワードの言葉に、マーヤーは(だま)って頷いた。傍で二人を見ている村人達には、全く理解出来ない意味不明な内容の話であった。実際、彼等には欠片(かけら)ほども理解出来てはいない。


 恐らくは、二人にしか理解出来ない(はなし)であろう。ミィはそう理解した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ