表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

かくおの短い物語集

「感情たち」

作者: かくお

喜怒哀楽。


きっとそれだけじゃ感情は説明しきれないけど、もしかしたら、それぞれの感情ごとに別々の人格があるのかもしれない。


部屋でボーッとテレビを眺める男の中で、何かが起こっていても男が気付く事はない。


喜男は嬉しそうに言った。

「お、テレビ見てるぜ」


怒男が拳を握り立ち上がる。

「こいつごときがテレビなんて百年早いわ!」


哀男はうなだれている。

「そんな事言わないでおくれよ」


楽男は飛び跳ねた。

「ひゃっほーい!」


何年もの間、部屋でひきこもる男の心は、自分でもよく分からない気持ちで一杯。


多重人格なんかではない、何とも言えない複雑な気分。


様々な感情がそれぞれの人格の様に男の中にいても、男がそれに気付く事はない。


「今日はなんか変な気分だなあ」


いくつかの感情が混在する時、男はそんな気持ちになる。


それなら一つの感情だけの方がよっぽどいい。


怒男だけなら怒りってばかりだし、

哀男だけなら泣いてばかりだ。


一つの感情だけの方が分かり易くてやっぱりいい。


複雑な感情の時はなんとも言えない気持ちになるし、何をしたらいいのか、どうすればスッキリするのかも分からない。


男が眺めるテレビの中では、タレントさん達が色々喋っているけど、この人達の感情は複雑そうには見えない。


タレントさんそれぞれがそれぞれの求められるキャラクターを演じているだけに見えてしまうし、感情なんて持っていないんじゃないかとさえ思えた。


男はテレビに向かって叫んだ。


「おーい!やーい!」


もちろんテレビの中の人達が反応してくれるはずもない。


「なるほど、そういう事か」


男は何か納得した様に今度は自分の心に向かって叫んだ。


「おーい!わーい!」


男の心だって反応してくれる事はない。


「自分の感情って、もはや自分ではないのかもな」


男は笑ったが、自分が今どんな感情なのかはさっばり分からなかった。


それでも、感情が別の人格だと考えれば、何かスッと理解出来た気分になれた。


「明日は外に出てみようかな」




おしまい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] ご都合よく主人公が他人格に気づいたりしないところ。 [気になる点] 「自分の感情って、もはや自分ではないのかもな」と男が言うところ。結構台詞としての無理があるような。 [一言] 中の人格た…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ