日常パートその1
やっくん「と、いうわけで……」
南「全然説明してないじゃないですか。最初から話してください」
3人を並ばせておいて自分は立派な回転椅子に腰を下ろす、やっくん。
やっくん「また1から……めんどいなぁ……」
南「開始早々のタイミングを利用して語った後みたいに取り繕うのは、お止めなさい。」
やっくん「ちぇーっ……わかったよ……」
そう言ってやっくんは机に置かれた、ある品を真に投げ渡す。キャッチした真の手元に皆の視線が集まった。
それはゴーグルによく似た……
やっくん「やっくん特製VRであーーーるぅぅうっ!!」
3人「な、なんだってー!」
*
南「VR……ですか」
やっくん「それを着けたら、女と【自主規制】している場面を立体映像で楽しめる!!」
真「空! 人の奪うなよ!」
空「うるせぇ! 後でお前にもヤらせてやるから!」
VRを巡り、愚かな奪い合いを始める2人。それを呆れた様子で見ながら南は、やっくんと向き直る。
南「で? 『と、いうわけで』? 何を企んでるんです?」
やっくん「人聞き悪い事を言うんじゃない。あくまでも、開発の……」
空「ひょーーーっ!! 早速、裸体のねーちゃんに、俺のゲイボルグがぁぁあああっっ!!」
真「空! 俺にも……」
南「おだまりっ!!」
*
やっくん「開発のクオリティ向上のため、よりリアルなデータが欲しいのさ」
南「……裸の?」
やっくん「ノンノン。いきなり裸ってのも面白さが……」
空「やっくん隊長! 俺、下着から脱がす機能ほしいです!!」
やっくん「我が弥生の科学は世界一ィィィ!その通り! 要は下着! よりリアルなデータ即ちパンtooO!!」
その通りと言わんばかりに指をならすやっくん。何を言いたいか察した空と真は期待に目を輝かせ。
南は首を横に振り、肩をすくめながら。
やっくん「報酬(VRであんなことやこんなことする権利)を以て命ずる!!
下着を手に入れろ!!」
*
真「と、いうわけでー……今回はフラク姉さんの……部屋に来ておりまーすー……」
寝起き実況のような小声で自撮り棒先端のスマホに手を振る真と空。
フラクさんには空を通じて、ちょっと長引きそうな買い物に。その間に、3人は部屋に。
南「またこんな……ところでこの部屋、鍵が……」
真「安心さー」
真の手には、怪しげに曲がったピンが。
真「開けといた」
南「犯罪ですよ……?」
空「まぁまぁ。早いとこ、モノを確保しとこーぜー」
クローゼットを開け、下着用の衣装ケースを引っ張り出す空……
*
空「……いい……」
薄く、しかし手触りの良い布地のTバックを胸に、見えない何かに祈りを捧げる空と
真「神のお恵みに、レースに感謝を……アーメン……って、【自主規制】と似てるな……」
レースの施されたパンツを前に膝をつき、両手を挙げてはお辞儀を繰り返す真。
南は「何言ってるんです……」と表情をしかめつつ、まだこの部屋の主が帰宅していないことを部屋の外で確かめる。
南「ほら。早く行きますよ」
真「よし。空。これでVRで、脱がしプレイが……」
空「そうだな。真……次はブラジャー脱がす機能も実装してもらおうぜ!!」
南「…………二次元まで行くと最早、哀れみの目さえ向けちゃいそうですよ…………」
*
あたかも大物を捕ったと言わんばかりにパンツを掲げ、鼻歌&スキップしながら、やっくんの部屋に突入(というか扉を蹴り破りながら)する空と真。それに続く空。
南「ただ今戻りました」
空「やっくーん! 持ってきたよ! 義姉ちゃんのパンツー!!」
真「捕ってきたよー!! 俺達の未来への可能性!!」
空・真「これで、新しい機能を……」
??「へーぇ。急にお使い頼まれたなぁ、と思ったら・・・ねぇ」
南・空・真「・・・・ホワッチュ?」
無惨に砕かれたパソコン。VR。ついでに血を吐いて倒れている、やっくん…………
真「ヤックンんん!?!?」
空「ムチャしやがって……」
カーテンを閉めた暗い部屋に佇む人影からは、世紀末で言う闘気が漂っていた。
その人物の目が赤く光る(ように見えた)。
*
??「あまりに急で不自然な、おつかい……
もしかして、と思ってそこの馬鹿に聞いてみようと思ったら……」
世紀末の神拳使い(?)である、人影……空の義姉であるフラクが、2人の手元に視線を向ける。
フラク「案の定……ねえ……私のパンツで何をしようとしてたの……?」
南「(ふ、2人とも、隠して……!)ふ、フラクさん、何の話しでしょう?」
フラク「……その2人が口に隠したパンツの出所を聞いてるんだよ」
南「口に……?……! 何してるんですか!!」
見ると空と真の頬はパンパンに。口の端からは、さっきまで掲げていたパンツの紐が垂れていた。
*
真「ふぁんふははふぇひはんはん(パンツなだけにパンパン)」
南「冗談言ってる場合ですかっっ!!」
空「へーひぁん(義姉ちゃん)、ほひほーはは(ごちそうさま)」
南「ああもう、開き直ってますし!!」
頭を抱えて「がーーっ!」とヤケクソに吠える南。
そんな彼に影が、にじり寄った。
冷たくて威圧的で絶対的な何かが、南達を捕らえる。そのプレッシャーに、誰1人逃げ出そうとすることさえ出来なかった。
フラク「……わかってるよね……」
3人「……ぃえーす(フィエーフ)……」
*
南「……結局、こうなるんですね……」
盗み出した(&食べた)パンツ代、あと、真が破壊した部屋の鍵代。それらを弁償すべく、3人は道路を眺めながら、通過した車の数だけカウンターをポチポチと押すのであった。
空「……なんでバイトしてまで?」
真「それはだな。これまでも私達が同様の事件を起こしたせいで、フラクさんのパンツ代が……」
南「そろそろホームセンターの重機とか買える額に到達しそうだからですよ」
空は目をカッと開き、次に南と真に目をやり……
空「……そこまでパンツ盗まれてたの?」
南「貴様はそうやって何枚のパンツを盗んで来たっっっ!!!」
南のカウントを押す指に力が入り、測定器を砕き、口からピッ○ロの如く光線を放ったのだった──