表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/15

序章編ーしましまの回ー

南「早いとこ見つけましょう。女の子一人は危ない」


 星校はこの辺りでは有名な不良の掃き溜め校だ。そんな学校の奴らが彷徨く中に女子一人で歩かせては……


空「この坊主がその弟? なら後はお姉さんを見つけたらいいんだよな……真ォ!」

真『お前も働けよー』


 真はやる気のない返事をしつつ、電話を繋いだまま離れた場所を探している様子だ。

 いきなり慌ただしくなった空気に源先生は戸惑う。


源「ま、まだお姉さんが大変と決まった訳じゃ……」

空「だから? 折角の尻神様しりがみさま乳神様ちちがみさまの恩恵を他の野郎に奪われて良いってのか?」

南「最早、清々しい下衆っぷりですね……」

源「いや、でも……」


 源先生はまだ納得がいかない様子だ。

 まだお姉さんが不良達に捕まったと決まったわけでない今、下手をすれば生徒達が他校の生徒に迷惑をかけてしまうかもしれないのだ。


 それは自分達四人の首を絞めるようなもの。


 誰だって、自分の肩書きを自ら捨てるような真似は好まない。


 しかし、南と空(と、電話越しの真)の決意は揺るがない。


真『先生。15分経っても見つからなかったら、弟さん連れてどっかに隠れてろよ』

源「何を言うのよ、あなた達は……」

空「俺達の足で15分かけても見つからなかったら流石に、何かあったと見るのが普通だろ」

源「でも! 他校の生徒に手を出すなんて……」

南「先生……」


 源先生を残して颯爽と走って行く空。それを追いかけようとする源先生の肩に手を置いて制したのは、南だった。


南「もう止められませんよ。それに……」


 小さく微笑み、源先生を押し退けるようにして走り出す。別れ際、南の声だけが残された。


南「こういう時ばかりは私もあの二人同様、女の子を第一優先にしたいんです」


 *


 15分後───


 三人で手分けして探したが、女子学生の姿は見つからなかった。

 集合場所の外灯下で息を切らしながら互いの顔を見合せ、情報交換をする。


 園内全域を探しても見つからなかった。


 幼い弟を置いて帰るとは思えない。何かあったと考えていいだろう。


真「……星校の奴らを見た時は……四人だった」

南「いくら力尽くで運んだとしても、そう遠くない場所でしょうね……」

空「となると、隠れるのに良さそうな場所だよなぁ……あ、それと……」


 空が取り出したのは、明らかに彼のではない、花の刺繍が施された白いハンカチ。

 それを彼は鼻にあてて、深く深呼吸すると──


空「んー……あのお姉さんの匂い! 間違いない!!」

南「何処で盗んだんですか」

空「盗んでない!! 落ちてたんだよ!!」


 それを聞いて南と真がハッと顔をあげた。

 空の言いたいことがわかったからだ。


 探しても見つからない。しかも落とし物。


南「どの辺りで落ちてましたか?!」

空「あー? そりゃ、噴水近くの……」


 空が言い終わるよりも先に、二人は走り出した。


空「あ! まてよ!! あともう少しだけ、デリシャスメルを……!!」


 *


 噴水の近くに出るなり、辺りを見る。

 隠れられそうな場所……茂み、廃屋、何でも良い!


南「仕方ないですね、しらみ潰しに……」

真「待て、南!!」


 真が携帯を取り出して何処かに電話をかけた。


真「もしもし、兄ちゃん?! 至急、……地区の公園周辺に廃屋が無いか、監視カメラを操作して見てくれない?!」

南「もしかして……!!」


 真が何をしたのか、察した南は息を飲んだ。

 しかし愁いも直ぐに断ち切られる。直ぐ様返事を貰えたらしく、携帯を切って真は、向かうべき方向を指差した。


真「あっちだ!! 急げ!! 廃屋なのに人が使ってる気配があるらしいぞ!!」

南「! それはまさか……」

空「畜生!! 俺達の乳神様を楽しみやがってぇ!」


 *


??「……本当に弟が、ここに?」

不良(モブ1)「ああ。だから早く会ってやれよ」

不良(モブ2)「お姉ちゃんに会いたがってるぜ?」


 女子高生が連れてこられたのは、古びた小屋だった。

 弟が待ってる。そう言われて渋々ついてきたのだが、小屋の扉を開けるなり女子高生それが嘘だと確信した。


 小屋の中には幼い弟の姿など無く、代わりに星校の制服をだらしなく崩した男子が座っていた。


不良(ボスw)「……よぅ」

??「!!……騙したわね……!!」


 直ぐ様、扉から離れようとする。しかし案内役の男子校生に両脇を固められ、小屋に引き込まれてしまった。


??「やめなさい!! 弟がいないなら……」

不良(ボスw)「弟ぉ? ああ、代わりに俺の仲間達が探してやるからよぉ……それまで遊んで待っててようぜぇ?」


 汚ならしい笑みが顔全体に広がり、仲間に命じて女子高生を床に押し倒させると、その制服に手をかける。


??「…………っ!!」


 女子高生が悲鳴をあげるのと、制服のボタンが引きちぎられるのと……


真「丸太は持ったかぁ!」

空「おぅ!!」

南「行くぞぉ!!」


 どこから仕入れたのか全くわからない丸太を抱えて三人が廃屋の壁をぶち破ったのは同時だった。


不良(モブ1)「はぁあっ?!」

不良(モブ3)「な、なんだぁ?!」


 パラパラと砕けた壁の破片を頭に、肩に被りながら突然現れた三人は……


南「女の子を弄ぶような不埒な輩は……」

真「たとえ御天道様、尻神様が許そうと……」

空「俺達の乳神様ちちがみさまが許さないぜぇ!……oh、そこまで脱がすとは……羨まs……けしからん!!」


 ブチィッ!!


 女子高生があられもない姿になりつつあった現状を認識し、三人の中で何かが切れた。


南「情けをかける余地はなさそうですね……」

真「そこまで【自主規制】したいのか貴様らぁ!」

空「南さん! 真さん! やっておしまいなさい!!」


~~~~~

戦闘シーン

~~~~~


三人「成敗!!」


 伸びた不良達を見下ろす。突如現れた三人の正義の味方。彼等になんて声をかけたら良いのか迷う女子高生。

 そこへ……


源「ここにいたのね!」

子供「おねえちゃん!!」


 弟が駆け寄り、姉に抱きついてわんわん泣き始めた。


 はだけた胸に。顔をうずめて。 


空「……羨ましい……」

真「……【自主規制】……」


空・真「乳神よぉ!! 静まりたまe……」

南「お黙りなさい」


 折角の再会に水を指す行為に走ろうとする二人を制し、源先生と向き合う南。源先生は状況を完全に把握したらしい。


源「……とりあえず……両者の学校に連絡入れるわ。でも……」

南「先生。私は……あなたが思うほど出来た生徒じゃありません」


 南は首を横に振る。


南「あの二人を止められない。こういう時に限っては暴力に荷担する。

 私は……」


 そこでようやく、南はとびきりの笑顔を見せた。


南「遊びも、おふざけも、誰かのための時も……常に全力。そんなあの二人を追いかけてる、最低な生徒です」


 源の目が大きく見開かれる。

 彼は南があの二人に振り回されてばかりの生徒だと思っていただけに、その笑顔が何よりも衝撃的に感じたのだ───


 *


源「と、いうわけで。あの女子高生の学校からお礼の言葉(と、私へのポイントも)もらったわよぉ」

空「はぁー? そんなんより生乳ナマチチがいい!」

真「【自主規制】は?!」

南「無いでしょう」


 騒ぐ部員を見て源は微笑む。

 以前、真と空に向けたような辛辣な何かは既に取り除かれている。


源「それでね。あなた達、ボランティア部にするにはちょっとアレだと私、学んだの」

南「? 先生。それは……」

源「ボランティア部と呼ぶにはあまりにアグレッシブ過ぎるからね。もっと行動に見合った名前が良いかと思って……じゃーん☆」


 そうして部活申請の紙を取り出す。「ボランティア部」の箇所は二重選で消され、代わりに


源「助っ人部……」

空「だせーよ!! もっとマシなのを!!」

源「あ! いやん、空ちゃん! 乱暴に奪わ……ぁーーーん!!」


 申請用紙を奪い、イタズラっぽく笑う空と真。どうせろくでもない名前を考えてるなと悟り、肩を落とす南。「返してぇ! 私の大事なー」と泣き叫ぶ源先生


 そうして乱暴な字で書きなぐられたのは─



     駄楽部

序章編完

次回から一章が始まります

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ