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うちの息子はバカだ

ここから新作です。

「で、今回もか」

「はい。いつも通りです。」


秘書の報告を、次の打ち合わせの車移動の際に聞く。

内容は、ほぼ変わらない。どこかで告白され、こちらの条件を突き付け、逃げられ、それをわざわざ婚約者に報告しにいく。

一応、大企業を担うからには、跡取りに告白をして来た女のバックグラウンドも知っておかなくてはならないため、毎回報告だけはさせているのだ。女個人の思惑ならまだいいが、組織が絡んでいる場合、後々被害を被るのはごめんだからだ。


そして、いつも思う。息子の婚約者殿にはいつでも破棄してもらって構わないと。


この騒動が起きてからも、何度か打診をした。

向こう側も了承したとはいえ、バカ息子の希望に沿って、なされた婚約である。それなのに、バカはすっかり忘れたかのように「運命」探しをしている。何度も忠告、警告をした。それでも、今好きなようにさせているのは、「運命」に対処するのはバカの手の内のもので社や他の者には迷惑をかけていないこと、そして、婚約者殿が了承しているからだ。

そして、状況によっては職を辞してもらおうにも、バカは仕事に関しては私を抜く優秀さを持っていた。「運命」を考えなければ、創立以来の天才であろう。


そこまでこだわる「運命」とやらについては、1度聞いたことがある。小説かなんからの知識かと思えば、婚約者殿にあったときに感じたと。なら婚約者殿でいいのではないかというと、違う可能性が出てきていると。婚約者殿に対して、申し訳ないとの気持ちはないのかと問うと、だからこそ、「運命」を探すのだと。


はっきり言う。バカだと思う。何度も話し合った。それでも考えを曲げなかった。


婚約者殿が了承しているから、この婚約は続いている。


はじめはすぐに婚約破棄がなされるはずであったのだ。

それは、妻の会話から始まった。なんでも、知人の見舞いに行った先で、婚約者殿を見かけたと言う。挨拶をしようと思ったが、周りを警備でかこまれ、ちらりとしか見えなかったし、話しかけれる雰囲気でもなかったと。病院は大きいが紹介者しか入れないところであるし、本人だとは思うのだけどと。それを聞いて、内密に調査した結果、アレルギー克服に動いているとのことであった。ショコラアレルギーははじめの調査書で確認もしていた。ひどいときは痙攣もあったとのことだから、こちらに招くときも、ショコラには十分気を付けていた。今どきアレルギーは普通に受け入れられるものであり、時によってはショック死する可能性があるため、配慮するものと思っていた。それをまだ幼い子が自ら治療にあたってるとのことだった。いくら医師監修のもととはいえ、無理はするべきではないと、調査後すぐに婚約者殿のご両親と面会し、告げた。本人の強い意思であることを苦々しく告げ、息子には言わないでほしいと伝えられる。これも婚約者殿の要望であると。治療内容だけは教えてもらえなかったが、のちに、医師を口説き落とし、一般例として治療方法を聞いた。内容は人体実験と思ってしまうものであった。適切量をしらべ、反応を見ていく。ただ、ショコラということで、産地や製法によって反応が違うのかも調べなくてはならず、他のものよりも体の負担は大きくなると思われます。とのことだ。それを聞いたとき、妻は泣いた。痙攣まで起こしてしまうアレルギーだ。大人でも怖くなる。それを自らの意思で。

婚約する前はなにもしていなかったことからも、この婚約が要因であろう。そして、婚約者殿のご家族みんなが反対しているのも面会時でひしひしと伝わってきた。

だから、こそ、破棄を提案させていただいた。いくら、代替品もあるし、むしろ食さなくて良いといっても、行うのであれば、命より大切なものはないと。それでも、婚約者殿がやめることも、破棄することもなかった。


なのに、「運命」である。

約束通り、息子に伝えることも、「運命」を止めることもしない。


うちの息子はバカだ。そして、婚約者殿のために、息子のためになにもできない私もバカだ。


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