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めんどくさいのはわかってる

短編「めんどくさいのはわかってる」と内容同じです。

「今度こそは、と思ったのだ。今度こそは運命だと。」




俺の言葉に、彼女は柔らかく微笑んだ。そして、先程執事が入れた紅茶の入ったカップを口元に運んだ。




彼女は、俺の婚約者である。全国チェーンのホテルのご令嬢だ。最近は、ブライダル部門にも力をいれ、そこから美容関係にも手を伸ばす方針らしい。




「そうでしたか。今回の方はどちらの方でしたの?」


「3日前はじめて入ったコンビニエンスストアの店員だ。その場で電話番号とSNSを渡された。」


「…そうでしたの。」




そして、俺の運命の相手探しを唯一認めてくれてる人でもある。


まわりはいう、「運命」なんて、物語の世界のことだ、と。今の環境に何の不満があるのだ、と。素敵な婚約者ではないか、と。




わかっている。自分がどれだけ恵まれた環境にいて、わがままを許され生きていることを。この運命探しも、幾度となく両親に咎められた。それを許してあげてほしいと言ったのは、目の前でガトーショコラを口に運んでいる婚約者である。




この「運命」探しを始めた当初、彼女も反対した。「私の気持ちだけではない」「政略婚約ということを理解しておられますか?」「相手の心を支える覚悟をもっておられますか?」様々な言葉をかけられた。




それでも、やめられないのだ。




1度知ってしまったあの感覚が。


あのときめきが。






忘れられないのだ。










それは、俺の誕生日パーティーというなの、お見合いパーティーの時。その子は、静かに壁にかけられていた絵を眺めていた。変哲もない、誰が描いたかもわからない絵だったと思う。それを眺めている姿に目が奪われた。まわりの音が、聞こえなくなった。その子が振り返っただけで、こちらを見ただけで、目が離せなかった。そのあと、挨拶かなにかをして、その子は、離れていった。のちに、その子が婚約者となった。




婚約者である彼女のことは、両家承認のもと詳細に調べられた。もちろん、こちらも詳細を提出した。その上で、企業戦略も含め、様々な契約がなされた。




彼女のことを知る度に、彼女が婚約者として頑張る姿により惹かれた。俺も精進しなければと思っていた。




ただ、月日が流れ、ふと気づいたとき、ときめきがなくなったことに気づいた。彼女を見ても、はじめてあったときの苦しくて甘い気持ちが感じられなくなった。穏やかな、緩やかな気持ちはあるのだが、あの時の気持ちが忘れられないのだ。




だから焦った。あの、運命をまた味わいたくなった。




最初はどこかの令嬢だったか。使用人だったかもしれない。


「押さえられない気持ちなのです」と思いを伝えられた。


その時、確かに、その瞳にときめいた。


だから、もしかしたら、これが運命なのかと思ったのだ。そして、婚約者と同様に、いや、それ以上に婚約者としての覚悟をもってほしいと思った。運命ならできると思った。




しかし、できるものはいなかった。すぐに、皆去っていった。そして、それを追おうとも思えない自分にも落胆した。








今日も俺の話を聞きながら、彼女は優雅にガトーショコラを食べている。最初の調査書にショコラアレルギーと記載していた、俺の初恋の婚約者である。



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