これは運命なんだ
パタン。
しまったドアを暫し見つめてしまった。
彼女が俺の前から立ち去ったのは、これで2回目だ。
運命の出会いは、街角だった。
歩いていたら、目の前で転んだのが、あの子だ。
あの子は、慌てて立ち上がり、俺の顔をみて、固まった、その目は恋をした目であった。だからわかった。これは、「運命のはじまり」だと。そして、やはり告白された。
それからはいつもと同じだった。
違ったのは、自ら笑顔でサインし、車に乗り込み、マンションにおさまり、教育に取り組んでいる事だ。
今までの運命とは違った。会いに行けば、不満を言うのではなく、感謝を言う。照れたように微笑む。拗ねたかと思うと、裾を引っ張り甘える。全身で恋しているのアピールに、ときめくよりもほっとした。やっと、俺は見つけたのかもしれないと。
「運命」を、あのときの感情を、もう一度味わいたい。そのために、チャンスは逃がさなかった。一時でもその雰囲気があればすがった。チャンスは幾度となくめぐってきた。だからこそ、運命の相手に試練をかした。相手にだけ求めるのも違うと思ったが、最終的に多くのものを失うのは俺だと思っていた。だから、まずは相手の覚悟を知りたかった。
でも、今まではすべて「運命」ではなかった。運命の相手はすぐにいなくなってしまった。
落胆した。
でも、忘れられないのだ。あのときめきを。
あの子がマンションにいるかどうかを、定期的に連絡させる。
「ご執心ですね」
と、秘書にからかわれたこともある。
そう、俺も今までとは違った。気になるのだ。まだ、あの場所にあの子がいるのか。初めて、試練に立ち向かってくれているあの子が。
あの子に執着しているのか。あの子がまだいるということに、「運命」がそこにあるということに執着しているのか。
この気持ちが「運命」対するときめきなのか、「運命」があったという安堵なのか。
だからこそ、婚約者に報告に言った。見つけたのだと、俺は間違ってなかったのだと。
彼女の好きなアーモンドクリームのはいったタルトを土産に。
ドアから目をはなし、テーブルを見る。そこにはきれいに盛られたタルトが、そのままの形で残っていた。キラキラと光る苺は彼女の好きな果物だった。
彼女の顔を思い出す。彼女のしぐさを思い出す。
そして気がつく。今日は彼女を見れていなかった。彼女の顔を、目を見ていなかった。何故か見れなかった。
あの子は俺の「運命」なのだ。
あの子はあのときの俺と同じ目をしてた。「運命」を感じたあとの時の俺と。だから、それを受け取った俺はきっと、彼女のように努力できるはずだ。
彼女の立ち去った姿を見送るは、2度目だ。
なぜだろう。今回は彼女の背中を追いたくなった。




