第3話 接敵
戦闘です。
電話で神の言ってた通り、西側に少し行った所に道があった。道と言ってもあまり整備されておらず、山奥にある舗装されてない道の様な感じだ。
そこで俺は端末からランドローバーウルフを2両出して乗り込んだ。俺が乗る車両は後部銃座にブローニングM2が搭載されているが、別の一両にはMk19自動擲弾銃が搭載されている。
前者で言った銃は12.7mmという大口径弾を毎分1200発で飛ばせる。軽装甲車両なら簡単に穴を開ける事が出来る。前に任務で敵に撃った事があるが、敵の上半身と下半身がさようならした位の威力だ。有効射程は2000mだ。
後者で言った銃は40mmグレネード弾を毎分375発で発射できる。着弾すると10mの範囲でを負傷させ、直撃すれば装甲車両の装甲なら叩き割れる威力を持つ。有効射程は1500mだ。両火器ともカスタマイズでスコープを付けている。
先頭車両の運転は俺が担当している。助手席にはジョン、後部銃座にはジャックだ。もう一台の車両は運転席と後部銃座に隊員が乗っている。
町が襲われるまで残り2時間30分。
「間に合うか?」
「不可能な事を押し付ける程馬鹿じゃない筈だ。」
林から出て行くに連れて段々と揺れが収まってきた。そういえば俺はジョンに聞きたい事があったんだ。
「ジョン…お前は何でSASに入った?」
「ん?あぁ…憧れだな。特殊部隊に入って悪い奴らをぶっ殺す。それがガキの頃からの夢だった。そんな軽い気持ちで入ったお陰で入隊試験とか色んな所で死にかけたよ。お前が助けてくれなかったら今頃は棺桶にいたかもな。」
「…。」
「まぁ入隊理由は人それぞれだ。俺みたいにただの憧れだって言う奴もいれば、お前みたいに強い復讐心を持って入隊する奴もいる。俺もあんまり気にしてない様に、隊員達もあまり気にしてないだろうよ。じゃあちょっと寝るから、 戦闘前になったら起こせよ。」
「…わかった。」
しばらく走らせていると草原に出た。揺れはもう殆ど感じない。腕時計を見ると襲撃まで残り10分を切っていた。まだ敵は見つからないのかと焦り始めた直後、後部銃座にいるジャックが報告してきた。
「2時の方向に防壁らしき建造物を視認!そして10時の方向に標的と思われる多数の敵影を視認!距離2000!」
「おい、ジョン!起きろ!各員戦闘態勢!」
「もう敵さんの登場かい!早いねぇ!」
俺はジョンを叩き起こすと無線で全員に指示を出した。
距離が1500になった所で全火器の有効射程範囲だ。俺は全車両を丘になっている所に止め、双眼鏡を覗きながら指示を出す。敵の陣形はオーガを中心とした密集陣形を組んでいるが、こちらにとっては好都合だ。
いよいよ交戦だ。
「mk19の発砲を許可する。各員戦闘開始。繰り返す、戦闘開始。優先目標はオーガやオークのデカ物からだ。奴らに40mmをぶち込んでやれ。」
最初はmk19の40mmグレネード弾による掃討だ。発射音が複数回なった後、オーガとその周囲が爆発を起こしていた。
「弾着。オーガを一体仕留めた。」
爆風によってオーガだけでなくその周りにいるゴブリンや狼も巻き添えを食らっている。
敵は突然の奇襲で混乱している様だ。こちらはオーガを順調に殲滅し続けている。
「これM2の出番無いんじゃないか?」
ジョンがそう聞いて来た。
「まぁ、待ってろ。そろそろの筈だが…」
「弾切れです!リロードします!」
「M2の射撃許可を出す!薙ぎ払え!」
連続して撃ち続ける事によって敵に隙を見せない戦法だ。
今度は12.7mmの鉛の雨が敵の軍団に襲いかかった。ゴブリンの胴体が真っ二つに千切れ、狼の脚が吹き飛び、オークの頭が弾け飛んで、オーガに無数の穴が開いたりしている。まさに地獄絵図だ。敵は撤退を始めている。
「mk19装填完了!」
「一斉掃射!畳み掛けるぞ!全車両を敵に近づけろ!1匹も逃すな!」
俺は双眼鏡から目を離してハンドルを握ると、思いっきりアクセルを踏んで敵に近づく。次々と敵が肉塊になっていく。もう機銃や爆発による粉塵で何も見えず、敵の悲鳴も銃声によって揉み消されて何も聞こえない。
「撃ち方やめ!」
そう命令すると銃声はピタリと止み、粉塵が徐々に消えて行く。そこにはバラバラになった死体、こげている死体や原型をとどめてない死体が転がっていた。周りを見ても何も逃げていないから全員殲滅したんだろう。
「生存者はいるか?」
「何も残ってません。あるのは死体だけです。」
某戦争映画のセリフをジョンが言いながら、一旦は安堵した…が、いきなり後ろから拍手が聞こえた。
「ははは!素晴らしい!実に素晴らしい働きだ!」
突然の音にびっくりした俺や他の隊員は後ろの音のした方に向かって銃を構える。そこには女がいた。見た目は10代後半くらいで、髪は腰まで伸びて白髪。瞳は気持ち悪いくらいに赤い。服装はファンクな感じだ。
「おおっと、いきなり銃を向けないでくれ。僕は君達に害を加えるつもりはないよ。」
この声と喋り方からしてあの神だ。
「いきなり後ろから現れるな。心臓に悪い。」
「これは失礼。ちょっと驚かせたくてね。…そろそろ話を進めたいんだけど、銃を下ろしてくれないかな。怖くて話が出来ないよ。」
隊員達に銃を下ろすように指示をすると、神は続けた。
「よし、まずは諸君、ミッション達成おめでとう、そしてご苦労様。諸君らの働きでこの街が蹂躙されずに済んだ。ここの民達は君達の功績を讃えるだろう。御託はこの辺にしてそろそろ報酬を与えよう。きっと君達にも役に立つ筈だ。」
そう言うと彼女は指を鳴らした。
イスラエルでのテロリスト制圧任務を終えて俺達Seals、乗員を含めた総勢15名はヘリコプターで帰投している最中だった。今は町の上にいる。
何かおかしい。静寂すぎる。もう日が落ちたという事もあるが、それとはまた違う感じだ。まるで何者かに狙われてるような…。
「隊長、どうかしましたか?」
「嫌な予感がする。」
「やめてくださいよ。こういう時の隊長の勘はよく当たるんですから。」
「そうですよ。この任務が終わったら国に帰れるんですから、嫌な事は言わないで下さい。」
「そうだな…。すまなかった。」
部下達からブーイングを食らってしまった。ふと外を見てみると、何かを構えている人影が見えた。背中に氷を入れられたかのような悪寒に襲われ、俺はすぐに叫んだ。
「RPG!!」
そう叫んだが遅すぎた。RPGの弾が飛んで来るとヘリコプター下部に被弾し、燃料タンクに引火して爆発を起こした。
気が付いたら真っ白な空間にいた。辺りを見回すと墜落したヘリに乗っていた隊員達やパイロット達もいた。ついさっきヘリの爆発で全員死んだ筈だぞ?まさかここが天国じゃないよな。
すると突然ポケットが振動を始めた。
「携帯…?」
取り出して見ると液晶には白い文字でこう表示していた。
「突然ですが貴方達は死んでしまいました。しかし神の導きで別の世界に転移して戦士と戦うことになりました!」
転移?どういう事だ?…理解できん。
周りの隊員達も疑問の声を上げていた。どうやらこの携帯は他の隊員達も持っているようだ。液晶を見て見ると言葉が続いていた。
「この端末では貴方達のニーズに合わせて、武器、弾薬、装備、兵器の供給、さらにはそれらのカスタマイズも可能です。」
そんな事ができるのか。
「では3秒後に転移します。ご武運を。」
「3秒後?!待て!まだ心の準備がッ…!」
すると突然目の前が真っ白になった。
やっとSeals出せた…