第2話 神との接触
「うぅ…ここは?」
いきなり目の前が真っ白になったと思ったら今度は林の中に仰向けで倒れていた。とりあえず全員無事か確認しなければ。
「全員生きてるか?」
「あぁ、全員無傷だ、だが俺も含めて他の奴らは混乱してるがな。」
そう返事したのはこの部隊の副隊長のジョン・フィリップス中尉だ。彼はこの部隊に来てから6年間ずっと俺と一緒にいる同期だ。爆発に巻き込まれて、見知らぬ場所に放り出されて混乱しているのは当たり前だろう。
まぁ、こんな状況になったのも俺がテロリストを無力化出来てなかったのが悪いんだがな…。後悔は生きてる内にするものだと思っていたが、死んだ後もするとはな。
「ハハハ、俺もその内の1人だ。」
俺はそう返事を返すと再度、本部と通信を試みた、がやはり応答する気配は無い。
舌打ちをした直後、突然俺の持っている端末が振動し始めた。画面を見てみると非通知設定だ。隊員達と目を合わせ、彼らにも聞こえる用にスピーカーに無線のマイクを近づけ通話に出た。
「…誰だ?」
『君がショウだね?』
声の高さからすると女だ。透き通る様な美しい声だが、油断出来ない。
「さぁ、誰のことだか。」
『とぼけても無駄だよ。君はクレメント・ショウ大尉だ。その部隊の隊長で、テロリストの自爆に隊員達と巻き添えを食らって、気付いたら一緒にその世界にいた。それに今スピーカーにマイクを近づけてるだろ?』
「っ…!!」
心臓が跳ねた。何故俺の階級とフルネームがわかった?そして今やってる事も。
俺は辺りを見回したが、誰かがいる気配は無かった。
スピーカー越しに紙をペラペラめくる様な音が聞こえた。
『えっと、あったあった。うっわ、目付き悪っ。えっと、名前はクレメント・ショウ。7歳の頃、テロリストに両親を殺害された。』
それを聞いた途端、いきなり目の前にいた2人が射殺されているシーンがフラッシュバックされた。
「黙れ…ッ!」
『テロリストに復讐の為に英国軍に入隊し、SASに所属。今まで行った任務は23回、失敗した任務は2回、イラクの時とイギリスの時だ。まず失敗したイラクの任務では…』
「黙れ…っ!それ以上喋るな!」
気が付くと全身から汗が吹き出して、呼吸も上がっている。隊員達は少し驚いている様だ。俺は呼吸を整えてから続けた。
「…すまない、少し取り乱してしまった。」
何故こいつは俺についての情報をそこまで知っている?俺の過去は誰にも話してない筈だ。
『ふふっ、その焦りと怒りは想定済みだよ。…さて、そろそろ本題に入ろう。
何故異世界に飛ばされたか、理由がわかるかい?』
「知らん。」
『素直でよろしい。じゃあ今から教えて上げよう。理由は簡単、単に私の遊び心だ。』
遊び心?遊び心でこんな所に転移させられるのか?こいつは一体何者だ?
「お前は一体何者だ?」
『ストレートに聞いてくるねぇ。その感じ嫌いじゃないよ。神だよ。君達が信仰してる様な神とはちょっと違うけどね。私は君達のいた世界とその世界を管理している神さ。』
神か…俺は神は信じん。両親が殺された時からな。
「…お前は俺達に何かして欲しくて転移させたんだろ?何をしたらいい?」
『察しが良くて助かるよ。さっすが特殊部隊。頭の回転が早いね。
最初は簡単なミッションさ。そこから西の方角へ少し行った所に道がある、そこを真っ直ぐ進んでいくと町がある。今から大体3時間後にモンスター供がその町を潰しにやって来る。君達はそいつらを殲滅してその町と守ればいいだけ。ね?簡単でしょ?』
「モンスターの数と編成は?」
『ゴブリンと狼、各40体、オーク15体とオーガ5体の計100体だ。報酬はきちんと用意してあるよ。ちなみにその町を潰されると、しばらくは人里は無いからね。』
つまりその町が消えたら俺達は次の町に着くまで彷徨い続ければいけないと言う事か…。
『あとは、この電話はこちら側からしかかけられない事と、その無線はもう本部と繋がらない事ぐらいかな。それじゃ伝えるものは伝えたから切るね。ご武運を。』
通話が切れ、BT音が流れた。思わずため息が出てしまう。あいつの言ってた通りにするしか無いか。
「各員、これから西の方角にある町にいってモンスター達から町を防衛する。敵の数は推定100体だ。今の戦闘服からDPM迷彩の戦闘服に変更。メインはMP5からL119A1に変更。カスタマイズや他の武器の装備は個人の判断に任せる。質問は?」
「では僕が。何故隊長は奴の言う事を聞くのですか?」
あれはデッカード・ジャック一等准尉だ。21歳と言う若さででSASに入隊し、ここの部隊に配属され、初めての任務でこの世界に転移した。肉体、精神、射撃面と全ての面で同じ彼の同期で右に出る者はいないと言う。
「あいつは政府が隠していた俺の個人情報を全て知ってるかの様に喋っていたし、誰にも話してない俺の過去も知っていた…。おそらくあいつはここにいる全員の事を知り尽くしている。それにあいつはここの管理者だからミッションを達成したら何かこの世界についての情報をくれる筈だ。あいつの言いなりにはなりたくないが…今はそうするしかない。」
「了解。失礼しまた。」と言って彼は下がった。俺は隊員達を見回した。
「他に質問がある奴は…無さそうだな。各員戦闘準備。」
俺は端末を操作して武器画面へ移行するとL119A1を選択して、カスタマイズを施しACOGサイトとバーティカルフォアグリップを装着する。次に装備画面へ行って、ヘルメットと服装とベストを選択して決定ボタンをタップすると、今着ている装備が生き物のようにうねりながら、要求した装備に変身した。弾倉もマガジンポケットに3つ入っている。隊員達を見ると、すでに準備が完了しているようだ。俺は武器のコッキングレバーを引き、薬室に装弾すると命令した。
「作戦開始。行くぞ。」
次回は戦闘です。
頑張らせて頂きます!
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