開店(2)
家に帰ると一之瀬から貰った資料をベットに寝転がり眺める。
このまま他校の真似事をした作りにするのもアリなのだと思うが、ただ駄菓子と学校用品のみを揃えるだけでは人なんて来ないだろう。
そうなると独自の路線に進むのが近道なんだが、如何せん失敗すると目もあてられなくなるが問題だ。
「そういや、何で駄菓子屋がなくなったんだっけ?」
初歩的な疑問にぶち当たった俺は、暫く首を捻り思い出そうとしたが思い出せなかった。
何せ幼い時の出来事だったから覚えてないのが普通だし。
なので、国のデータベースを借りる事にした。
愛知県のデータベースは県民IDを使えば1部のデータを閲覧出来る。
どうせ秘密事にするような事ではないので一般用データベースでも閲覧出来るだろうという考えだ。
「あったあった」
まさか、駄菓子屋の検索ワードで引っかかるとは思わなかったが、ざっくり説明すると魔法学苑とスクールストリートを建設するにあたって、総立ち退きがあったらしくその時に数軒あった駄菓子屋が無くなり今に至る感じだ。
「なるほどねぇ、立ち退きで無くなった訳か」
少しだけだが、幼い頃の記憶が蘇ってきた。
当時魔法学苑建設にあたって広範囲の立ち退きがあってその時一部の民間は立ち退きを拒否していたのを覚えている。
その中に俺と一之瀬の行き付けだった駄菓子屋も対象になってたのを思い出した。
まぁ、結果は政府の力づくの強制退去で子供の頃の俺の大切な場所を壊された訳だ。
あの時の悔しさも蘇ってきたが、そんな因縁のある学苑の卒業生でもあるから何か昔の自分に謝りたくなるほど恥ずかしくなった。
「そっか、今の若者は駄菓子屋なんて知らんよな」
駄菓子なぞコンビニやスーパーに置いてある一部の物くらいしか知らないだろうな。
そう考えると駄菓子屋ベースの購買をやる意欲が湧いてきた。
駄菓子の入口程度しか分からん後輩諸君に駄菓子のお手軽さなどを教えてやろうではないかと。
意気込みだけは立派な俺は、クローゼットから着替えを取り出すと浴室に向かうのだった。