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総合魔法学苑購買部  作者: 安藤きつね
2/8

序章という名の始まりの朝②

言い訳はしない。書けてるのに面倒になって投稿しなかった。


 喫茶リバーサイド。

 総合魔法学苑のスクールストリートの中央通りにある築20年の洋館型の店舗

。注文が入る度に豆を挽いてドリップする店で、コーヒーフリークには人気のある店だ。

 スクールストリート内の店舗なのもあり学割がきくのも魅力の1つで、学苑生の懐にも優しく出来ていて放課後は学苑の生徒で賑わっている。

 かく言う俺も学苑生だった時に足繁く通っていた。

 他に朝だとモーニングセットがあったり、学苑の生徒を積極的にバイト雇用していたりするので目の保養目的に来る客も多い。

 

 そんな青春時代の思い出が詰まった喫茶店の中に入った俺は、以前と変わり映えのない店内に懐かしさと実家のような安心感を感じた。

 

 「おや?誰かと思えば総ちゃんじゃないか!」

 「マスターご無沙汰」

 

 俺の顔を見たマスターは、新聞をたたみ立ち上があがると俺に近寄り出迎えてくれる。

 学苑を卒業して約3年ほど経過しているが、良い歳の取り方をしているのかナイスミドルと呼べるくらいのイケメンを維持している。

 これで40半ばとか言うのだから驚きである。

 リバーサイドが人気なのは、可愛いアルバイトとこの気さくなマスターがいるからなのかもしれない。


「今日は1人かい?」

「いや、待ち合わせ。この後1人来るよ」


マスターは、穏やかな表情で俺を見るその姿は父親そのものだ。

 実際学苑の生徒だった頃、俺の父親代わりをしてくれたのもあったから、何かくすぐったさを感じる。

 当時は悪さする度に怒られたりもしたけど、本気で怒ってくれるのはマスターと恩師あとは今日会う元上司くらいだ。

今でもこの3人には感謝している。


 「あ、そうそう。新しいバイトが入ったんだけど総ちゃん好みの子が来たよ」


 マスターは何か思い出したように口にしたことは、新しく入ったアルバイトのことで俺好みの女の子らしい。俺は年甲斐にもなくマスターの発言に思わず食いついて辺りを見回す。

 マスターはそんな俺の姿を見てニヤつくもんだから、何かハメられた感があって悔しくなってしまう。でも、ここで興味ないような顔をしたら、負けだと思うので件の新人さんを探す。

 奥のテーブル席にいたのか、ひょっこりと小さな身体でシルバーにカップなどを乗せてやってくる。

 俺の視線に気付くと軽く会釈しカウンターの中へと入る。


 「店長、片付け終わりました」

 「ありがとう。じゃあ、お客さん来るまでゆっくりしようか」


 ん?俺が客の扱いされてないんだが?俺を客扱いせず、談笑をしているマスターを見て1つ咳払いをする。マスターは分かってるとばかりに頷くとバイトの子に促す。


 「では、お好きな席にどうぞ」

 「じゃあ、奥の死角になってる席に」

 「あの席を使うのは先輩だけですよ」

 「マスターから聞いたのか?」


 マスターくらいしか知らないことに、お喋りめと毒づきながらも、席へと向かい歩き出す。先輩と言っているのも、マスターが教えたからだろう。

 本当に人の個人情報をペラペラ喋ったりするのはどうかと思う。

 よく使用していた奥の席に会話をしながら辿り着くと俺は椅子に腰を下ろす。


 「ご注文は何にしましょう?」

 「とりあえず、コーヒーとモーニングはバタートーストで」

 「はい、コーヒーとバタートーストモーニングですね?了解しましたー」


 元気の良い声でオーダーを取ると俺の後輩にあたる子は、豊満な胸を揺らし駆け出す。こらこら、良い胸部装甲をアピールするのはいいが、店員が走ったらダメでしょ。基本がなってないのは良くないと思うぞ?

 ジジ臭いことを思う俺は、そんな初々しい姿を見せる彼女に少し癒された気がした。

 注文をしてから5分ほど、スポーツ新聞に目を通す。自分の贔屓球団中日ドラゴンズは、オープン戦の成績が好調みたいで、今年は10年ぶりの優勝が期待できそうな事が書いてあった。


 「ポジ要素満載なのはええことやね」


 10年間Bクラスというファンにとっては辛いおもいをしてきたが、今年はまともに戦えそうな感じで嬉しい限りだ。サッカーの方は黄金期を迎えて連覇とかしてるから今年はダブル優勝なんてのを拝めるかもしれんね。


 「お待たせしました。オリジナルブレンドとバタートーストモーニングです」

 「ありがとう。そういや、どこの科の生徒さん?」


 運ばれてきたコーヒーとモーニングを受け取り、早速コーヒーに口をつけて喉を潤す。そして、やっぱ後輩となると気になるのが所属している学科だ。


 「はい、戦闘科です!」

 「そっか、戦闘科か…」


 期待した俺がバカでした。後輩って聞いた時、わずかな希望を持っていたのだが地獄の戦闘科の確率が高いことは解っていた筈なのに期待をしてしまう。俺が悪い。

 改めて顔をあげて、彼女を観察する。頭の先から足の先まで流れるように見ると戦闘科女子らしい程よくついた筋肉が腕や足に見える。

 立派な胸部装甲に目を奪われがちだが、顔も幼さが残るが整っていて可愛い。


 「あの、先輩あんまりジロジロみられると何か恥ずかしいです」

 「ああ、すまん。戦闘科と聞いてつい体つきを見てしまった」


 頬を朱に染め恥ずかしがる彼女に、俺は素直に謝る。戦闘科の人間になると相手の強さを確認すべく身体の特徴などの観察力が養う授業があって、その癖が抜けてない俺はついジロジロとみてしまった。


 「大丈夫です。それで先輩から見て私って見込みありますか?」

 「ん。そうだな、キミはフットワークに長けてるみたいだね?ふくらはぎから腿にかけて上手く鍛えられてるみたいだけど」


 よく締まったふくらはぎとキュッと持ち上がったヒップラインを見て彼女が、どれだけ努力をしているのか伺える。この下半身から生み出される瞬発力は一朝一夕では作り出せるものでもないので、そこに注目したら彼女は嬉しそうに笑顔を浮かべて頷く。


 「はい!私スピードに乗った戦闘が得意なんですけど少し行き詰まってまして。先輩から何かアドバイスでも頂けたら嬉しいのですが」

 「なるほどね。そうだな」


 俺に助言を求めてくる可愛い後輩の戦闘スタイルについて考える。高速戦闘がウリだと思われる彼女のことだからスピードにものを言わせて戦うだけではないと思う。緩急を付けた動きくらいは普通に取り入れていると思う。基本学苑内ならそれだけで通用する筈だが、それすら通じないとなると俺が現役の時よりレベルが上がってることになる。そうなればもう少しランクを上げることになる訳だが、正直これより先を教えるべきなのか悩むところである。


 「とりあえず、基本スキルを高めてみるのはどうかな?まだ身体が完成してない状態で学生の領域を出たスキルを教えるわけにもいかないし」


 俺の口から出た言葉は無難な一言だった。新しいことを教えるのは簡単だけど、身体が完成されてない若者に学生の領域を出たスキルを教えるのは怖いし、戦闘科の教諭でもない俺がやってはいけない。というか、まだ俺を知る教諭がいるから怖くて教えられない。

 俺の教えを聞いてガッカリするだろうなと思ってたが、彼女は意外な反応をしめした。


 「そうですね!確かに小手先に頼るよりも基本スキルを磨き上げて自分の本当の武器にする方が大事ですよね?先輩ありがとうございました!失礼します!」


 濃く深い霧が晴れたのか、彼女は満面の笑顔を浮かべ俺の手を握ると礼を述べて去っていく。こらこら、立派な胸部装甲を揺らして走るのはダメだぞ?


 「ふぅ、とりあえず悪い方向に向かなくて良かった。嫌われてしまったら此処にも来れなくなるからな」


 俺は、肩の力を抜きバタートーストを齧り再度新聞を手に取って情報を取り込む。それにしても、上司はまだ来ない。いくらなんでも遅すぎる。あの爺さん約束を反故する気じゃないだろうな?

 そんな疑いをかけていると俺の耳元に気持ち悪いくらいの生暖かい風が直撃する。全身が総毛立つだけでなく変な汗が背中を伝う。


 「待たせたのう」

 「待たせたじゃねえよ!気色悪いことやるんじゃねえ!」


 この爺さん柴田清正は、普段は威厳のあるような面をしているが、プライベートとなると一変、人をからかう事に喜びを感じる畜生になるのだ。

 この一見お茶目な爺さんの被害にあった人間は数え切れぬほどだ。俺の元職場の同僚、男女問わず被害を受けていたのを目にしてるだけで20は越えていたと思う。


 「で、いつから居たんだよ」

 「そうさのう。お前好みの巨乳の後輩に優しくアドバイスをしてたあたりかのう」

 「クソジジイ、隠れ潜まず声かけろや」

 「いやいや、あれだけ尖っていた総司も角がとれて丸くなったもんじゃな」


 くっそ、何で1番見られたくないとこで現れるんだよ。もう少し空気読めや。俺は椅子に腰を降ろす爺さんを恨めしいそうに睨んでやりながら、恥ずかしさのあまり味が分からなくなったコーヒーで喉を潤していると、楽しそうにメニューを眺めて注文するもんを考えてやがる。


 「そうそう、話のことなんじゃが」

 「おう、早く話せや」


 俺と爺さんの会話は、いつも唐突でこんな風にのんびりした形で始まる。どうせ今回も下らないことでも話すのだろうと思ったが、何故かこの日だけは俺が驚くような内容だった。


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