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グエンの素性

 僕はグエンと名乗ったその男を計りかねていた。

 僕が父親から教わったことは多い。そのほとんどは今まで役に立っていなかったし、この先も役立つのかどうなのかわからない。しかし、また一つ、父親の言葉を思い出した。

『冒険者が自己紹介で冒険者であることを明かすのは、冒険者に対してだけだ。農民や商人からしたら胡散臭いと思われるだけだからな』

 グエンは僕達が何者かを問う前に、自分が冒険者であることを話した。これは、僕達が冒険者であることをわかっていたということになるのだろう。見た目でわかるものなのだろうか。

 僕はぼんやりとあれこれ考えながら、家の台所でお茶をいれていた。居間ではプロイがグエンの相手をしている。

「私が魔術師だって、なんでわかったんですか?」

「その杖さ。その精霊石からすると精霊使いだろうということまではわかる」

「あ、そうか」

「まだ冒険者組合には登録してないのかな」

「はい」

「そうか。冒険者になるのかい?」

「そのつもりです。でも試練を受けられないんです」

「なんで?」

「一人なので」

「あの剣士の少年は?」

「断られました」

「そうか。それじゃ、私のギルドが手助けしよう。ここから東にあるノンペンって町にギルドハウスがあるから、来るといい」

「ありがとうございます。少し前に一人で行ったんですけど、一人じゃ試練は受けさせられないって門前払いだったんです」

「それは難儀だったな」

 僕は、すっかり居間に戻るタイミングを逃していた。お茶を淹れたものの、入りにくい話題が続いていたのでタイミングを見計らっていた。話が切れたのを確認して居間に入る。

「お待たせしました」

 お茶を持って居間に入ると、プロイはグエンの差し出したビジネスカードを見ていた。

「すまないね」

 グエンの表情は決してすまないと思っていない。

「それじゃ、揃ったところで話をしたい。まず自己紹介からしよう」

 グエンは続ける。

「私はグエン、猟師をしている。主には冒険者組合から歴史調査を請け負うギルド『隠者』のギルドマスターをやっていてね、たまに今回のような『脅威』の排除も請け負っている。名前で分かるかもしれないが、ここからずっと東にある海の村の出身だ」

 名前で出身もわかるものなのか、この村から出たことのない僕は知らない。

「それじゃ、私ね」

 プロイが口を開いた。

「私はプロイ。ここより北の山の出身。両親とも冒険者だけど、母さんが精霊使いで魔導師の称号を持っていたので承継してる」

 今更だが、僕はプロイから自己紹介をしてもらっていなかった。いや、聞こうとしていなかったというのが正しいか。

「僕はノイ。父親は勇者で母親は魔術師。剣術しか習っていないので、魔術は全くわからない」

 僕は少しためらったが、一呼吸置いて続けた。

「でも勇者を承継するつもりもないし、今のままでいいと思っている。父親の家系はみんな『脅威』と戦って死んでいった。僕が最後の生き残りだ」

 強い口調にグエンはうなずいた。

「そうか。自己紹介ありがとう」

 少し考えてから、グエンは続けた。

「私はね、五年前の戦争での生き残りだ。ノイ君のご両親も、プロイ君のご両親とも、一緒に仕事したことがある。元気に育っていて嬉しいよ」

「え?」

 僕とプロイは揃って驚いた声を出した。

「すまないね。わかっていたんだが、きっかけがなくてね」

 見透かされている気がしたのは間違いではなかったようだ。

「あの、両親のことを教えてください」

 プロイが先に口を開いた。

「うん、そうだな。君たちには知っておいてもらいたいな」

 グエンはゆっくりと話し始めた。

説明回はもう少し続きます。

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