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典型的にラブコメに  作者: 穴開き靴下
3/3

1-2

前回のあらすじ

教育実習生となった僕は、母校に戻っていた。

校内を散歩していると、女性の悲鳴が!

以上。


悲鳴の先は2階建ての部室。

生徒の身に何か危険が迫っているに違いない。

迷わず声のする方へ走った。

「大丈夫ですか!」

勢いのまま、部室の扉を開ける。部室は独特の湿気と甘い香りが漂っていた。

ロッカーや棚、地面には運動器具、ハンガーに制服。

そして、部室の奥にいたのは女子生徒。涙目で部室の隅に追いやられていた。ライトブラウンで、ショートの髪はゆるりとウェーブがかけられている。小顔でぱっちりとした瞳。同年代と比べて、肉付きのいい体は運動部であることを思わせる。そして、下着姿であった。

女子のそんな姿を見る機会のない僕にとって、それはあまりにも刺激的でまじまじと見つめてしまう。上下ピンクで揃えられたそれは、女子生徒が体をくねらせたりすることでくしくも隠されてしまっていた。少し残念だ。なんて教師が思ってはいけないのだろう。

「た、助けてぇ……」

女子生徒の視線の先にあるのは、黒光りするアイツ。まあ、ゴキブリだ。カサカサと女子生徒に近づく。

はっ! 当初の目的を忘れていた。生徒を助けなくちゃ!

辺りを見回し、武器になりそうなものを探す。定番ともいえるティッシュ箱。こいつに決めた!

俺は武器を片手にゴキブリに立ち向かう。

「ふんっ!」

パアンッといい音を立てて、ゴキブリを真上から潰す。豪快な一撃だ。確実に仕留めただろう。

確認するのも嫌なんで、ティッシュを10枚ほど取り出し、ゴキブリの残骸を処理する。

「だ、大丈夫ですか?」

女子生徒に向き直り、声をかける。

「あ、ありがとうございました!」

お礼をして、頭を下げる。多大なる感謝をもらったが、そこまでのことをしたのかなと疑問に思う。とりあえずはこの優越感に浸ろう。

「どういたしまして。困っている生徒を助けられて僕もよかったですよ」

「……あ、そういえばあなた誰です?」

女子生徒は混乱していたが、ようやく落ち着きを取り戻す。そして、現状を理解する。

部室に下着の女子生徒と見ず知らずの男性。

あれ? それって色々まずくないか?

どうやら僕も理解できていなかったようだ。

「へ、変態。きゃあああああ!!!!!」

女子生徒は再び混乱し、叫んだ。今、それをされるとかなりまずいんだが。下手したら逮捕じゃないか。僕の人生、ここで終了? 

「麻耶!」

部室にかけつけた女子生徒。麻耶というのは、この下着姿の女子生徒のことだろう。はたから見たら僕は犯罪者だろう。

「これは、その、違うんです。ねえ、君からも説明してくれな――――」

「いやあああ!!!」

「ごふっ!?」

説明してもらおうと近づくと、昇竜拳が飛んできた。僕の顎にカウンターヒット。視界がぼやけてクラクラする。このまま気を失ってしまいそうだ。

麻耶と呼ばれた彼女に説明してもらわないといけないのに。

このままじゃ犯罪者扱いされてしまう。グッバイ、教育実習生活。グッバイ、マイライフ。

お母さんお父さん、僕は大きな罪を犯してしまったようです。今まで育ててくれてありがとう。こんな息子でごめんね。

懺悔はどこにも届かず、僕は意識を失っていく。

かすれゆく視界の中で、麻耶が僕の心配をしている様子だけが伺えた。

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