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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『始原の原』
7/36

営業スマイル 後編

前回の後書きでネタバレ。暑さで頭がヤられてました。

 キミヒト以外のダイバー達がオレたちから興味をなくし、お互いに輪になって談笑し始める頃、左腕の権利がオレに戻された。ただし、左手はまだ返却の予定はないらしい。


「ありがとう。落ち着いた」

「おう、大変だったな」


 ここでシオンから、ごめんなさい、という言葉が出たなら、ありがとうだろ? と、返せただろうが、仮想現実は甘くない。シオンの何が大変だったのかよくわからないけど、労ってやろうじゃないか。


「まだ大変」

「そうか。……そんなに、大変なら表情作るの止めたら良いじゃないか」


 凄くワザとらしい言い方だとは自分でも思った。でも、オレが掴まれてる間に考えた精一杯の言葉(ウソ)だ。

 

「そう、聞かないのね」


 風が吹くだけで聞き取るのが困難になる程の小さな声。


「さっきは感情表現補助(エモーション)ツールを使ったの。簡単に言えば、嘘の感情表現が出来るツール。これはダイバーなら誰でも使える」


「おいおい、何でそんな物が必要なんだ。人間、楽しかったら笑って、ムカついたら怒って、悲しかったら泣けば良いじゃないか。そっちの方が簡単だろ?」


「そうね。それが一番正しい。でも、そうもいかないの。私には特に必要」

「何だ、気にしてたのか。最初の時は使ってなかった、じゃないか。えぇと、エモーション、エモーション。お、あったあった。何だこれ、選べる表現が多すぎる。げ、愛の告白エモーションとかおかしいのがあるぞ」


 愛の覚醒者辺りが、怒りそうなエモーションだな。よし、ここは爽やかな好青年エモーションを選択してっと。


「気にしなくて良いさ、そんな物を使わなくても十分可愛よ」

「気持ち悪い」


 オレの左手を振り払って、ノータイム拒絶。


「ホ、ホラ。気持ち悪いだろ? オレと話す時は止めてくれよ、どーせバレるんだし無駄だろ? ま、他で必要な時は使えば良いさ。でもな、エモーションばかりに頼ってると、そのうち本当の表情を忘れるぞ」

「本当の表情……」


 そんな物あったかなとか、考えてるんだろうな。


「さっきのは不快そうだったぞー、こうやって眉間にぎゅーってシワを寄せてたからな」


「そう、なの? そうね、確かにアレは不快だった、思い出すだけでも吐き気がする、許されるならそれを原型が無くなるまで叩き潰して川に流したい。鈍器、そう鈍器持ってない?」

「持ってても絶対渡すかよ!」


 もう絶対にエモーションなんて使わない。絶対だ!


「冗談」

「そりゃ、何より」


 冗談を言えるほど回復したんだ、そう思おう。さて、もうそろそろ時間だろう。パネルを宙に出し、時間を確認する。


【明 三時五十五分】


 相変わらず、慣れない表示だな。後、五分か。さっき出てきた一人が最後の同僚だろう。最低でも半年間、この世界の仲間になるヤツらか。不安はあるけど、何とかなりそうかな?


「本当に良いの? 聞かなくて」


 ハッキリとした声だ。こっちは見てるが、今度の表情は読めない。真剣な眼差しって、ところかな。


「うーん、最初は根掘り葉掘り聞いてやろうと思ったんだけどな。なあ、質問に対して質問するのは悪いんだけどさ。オレが何とか出来る事はあるのか?」


 落ち着いたところで、もう一度同じ事を聞く。


「う、もう少し。側に、いて欲しい」


 膝を抱えてうずくまった。多分、さっきの事を思い出して照れてるな。オレもだ、安心しろ。


「他には無いんだろう? じゃあ、聞くの止めとく。オレが手伝える事があったら言ってくれ」

「そう、ありがとう」

「気にすんな。友達だろ?」


 シオンの顔が戻ってきた。特に赤いとかは無いんだな。羨ましい限りだ。

 側にいなくちゃいけないが、少しで顔を離したい。オレは立ち上がり、尻を叩く。


「まだ、友達じゃない。カード貰ってない」

「何だ、友達じゃ無かったのか。あんなカードのどこが良いのかねぇ。カード如きに友達の区別を付けられるのは正直、納得いかねーな。友達ってのは心の問題だろ? でも、まあ、何だ。欲しいならやるから、ホラ」

「さっき習ったマナーがなってない」


 そっぽを向きながら片手で渡したのがお気に召さないようだ。


「良いんだよ。前から友達だからな。ところで、オレにはないのか?」


「あんなカード一枚で友達と区別されたくないんでしょう? だからあげない」

「おい」

 本当に微かだけど、シオンは笑っていた。


「よくぞ参った。神の子よ」


 突然、隣で誰かが話かけてくる。すこし鼻にかかった高い女性の声だ。振り向けば、隣には誰もいない。

 声したの方角の先には、一人の人間立っていた。突然現れた人物にダイバー達の視線が釘付けになる。その人物はダイバーとは違う、何らかの儀式を行うような服装をしていた。


 この草原には似合わない、ゆったりとした白いローブに身を包み、鎖で繋いだ青い表紙の分厚い本を首から下げ、その本を白く細い腕で大事そうに抱えている。スネまではありそうな長い金髪。頭には日よけの意味など全く意味をなさないであろう、小さな帽子が乗っている。


 一言で表すなら、シーツに包まって幽霊ごっこをする幼女。


 ダイバー達が何だ何だと幼女を包囲し始めた。誘拐の犯行現場に居合わせいるような気分だな。


 ゲームマスター‼︎ こいつらです。

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