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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『始原の原』
6/36

営業スマイル 前編

設定が甘くて苦戦しました。

「ちょっと、ごめんね」


 シオンはオレの左隣に来ると座り込む。こちらを見る表情は微笑。しれっとしやがって。


「おい、どうしてここにいる、所用じゃなかったのか?」

「タスクガードの練習」


 前面に両手のひらを並べて、真剣な表情に変える。


「タスクガードって何だよ⁉︎ ったく。お前、シオン=ローじゃなかったのか?」

「……シオン=ローは偽名。夢よ、忘れて」


 鼻で短く息を吐き、遠くを見るような表情、ってコラ。


「オレの真似すんな。じゃあ、シン=アロマで良いんだな」

「いやん、アロマって呼んで」


 両手の拳をアゴの下において、嬉しそうな照れたようなあいまいな表情にして、身体をくねらせる。

 ころころを表情と性格が変わって、処理が追いつかない。


「頭痛い。じゃあ、アロマが名前なんだな」

「さぁ? さっき思いついたばかりなので」

「そっちも偽名かよ! あーも、わっかんねぇ! とりあえず、そのトボけ顔の表情に変えるのはやめろ! 気味が悪い!」


 頭をガシガシと掻きむしる。

 あーもう、ダメだ。誰かオレの頭を洗い流してくれ。綺麗さっぱり忘れ去って、この平原に吹く一陣の風となりたい!

 そもそも、なんでオレがこんな事で頭を痛めなきゃいけなんだ? でも、このままだと気になって寝られないし。

 くっそ、次は何だ? 何を言ってくるんだ?


 ……あれ? おかしい、何も反応がないぞ?


 見れば名称不明の女は無表情になっていた。いや、目と口がわずかに開いている。もしかして、コイツ驚いてるのか?


「『顔の表情に変える』って言い方、おかしいと思う」

「た、単なる言い間違えだろ?」


 意外な反応に驚いて、とっさに誤魔化してしまった。しかも、言い訳としてはかなり苦しい。


「そうですか。言い間違いでしたか」


 やっぱり、バレバレだった。

 ハイ、次は何て言いますか? と、こちらに手のひらを見せて、発言を促してくる。


 何故か、その手はわずかに震えていた。

 

「おい、お前。それ」


 オレに指摘された事で、自分の手が震えてる事に気付いたのだろう。女は反対の手で震える手を引き寄せ、腹で抱え込むように隠す。


「何でもない。大丈夫」


 視線は地面に固定されたままだ。表情ばかりに気を取られていたが、顔をよく見れば、血色が悪く、わずかに汗ばんでいる。呼吸の浅く速い。

 大丈夫と言うが、まるで説得力がなさすぎる。明らかに何かしらの異常をきたしているとしか思えない。


 女は必死に自分を落ち着かせようと、目をつむり、身体を縮こませる。とても辛そうだ。

 何か言わなきゃ、でも、どうすれば良いんだろうか。相手がどうして欲しいかなんて、オレには分かるはずもない。だからーーーー


「オレに出来る事はあるか?」


 腹に力を入れてハッキリと伝える。自分が情けないけど、相手に聞く事にした。苦しんでる友達(シオン)をそのままにするよりはマシだ。


 少し苦しそうな顔を上げたシオンは何度か目を泳がせると、自分の右肩に顔を隠す。


「……私の側にいて欲しい」

 小さく言った。


「お願い!」


顔を上げこちらを見る。辛そうな、そして今にも泣き出しそうな表情に変えて……。


「そんな顔、しなくて良いって。わかった。ここにいてやるから安心しろ。何なら、手でも貸してやろうか?」


 そんな軽口を言ったのは、大きな間違いだった。オレの言葉を聞いた、シオンはあっという間に、左腕に組み付き絶対離れるものかと、力の限り締め付けてくる。柔らかくて痛い、ジンジンと鈍い痛みがあるが、シオンを離す訳にもいかない。そのままあさっての方向を見て、色々誤魔化す事にしよう。ああ、今とても見られてる。そりゃ、オレだって同じ状態なら見るわ。

 他のダイバー達がいくつかの集団を作って、会話しているのが分かる。良い見世物だな、精々話のタネにして仲良くなってくれや。


 コラ! キミヒトさん。偽物の笑顔なんてするんじゃありません! イケメンの感情の入ってない笑顔はちょっと、怖いぞ。

後書きで次回のネタバレしてました。

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