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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『始原の原』
5/36

経験者は語る

説明会。微グロかも知れませんので、苦手な方はご注意下さい。

 渡す時は片手ではダメですとか、渡されたフレンドカードをキチンと見てくださいとか、色々言われながらも何とか互いにカードを渡し合いが済んだ。


 これがあればフレンド通信とやらが出来るようになるようだ。


「友達になるって、意外と面倒なもんなんだな」


 肩をすくませる。だいぶ日も高くなり、草原にはプレイヤーが増えており、みんなバラバラと距離をとって思い思いの事をしているようだ。


「おーい」


 もう一度声をかけるが、やはりそそくさと逃げていってしまう。


「またプレイヤーに逃げられた。やっぱり、オレの顔が悪いのかな?」


 ここまで、避けられると落ち込むんだが。


「残念ながら、それは違います。まだ、この世界がプレイヤー寄りなのか、ウォーカー寄りか不明なので発言を控えてるんですよ。ウォーカー寄りの発言をして、プレイヤー寄りの世界だったら恥をかいちゃいますからね」

「おい、お前。今、残念ながらとか言わなかったか?」


 こいつも毒を吐くのか。


「私達は友達になりましたので、そういった軽口を言い合える仲になったという事ですよ」


「オレは『親しき仲にも礼儀あり』って教わったぞ?」

「なんですかそれ?」

「知らないのか。まあ、良いや。それよりウォーカーって何だ? ゲームなんだからプレイヤーだろ?」


「プレイヤーは世界によっては差称にもなるので、お気をつけた方が良いかと。全体を表すなら、ダイバーと呼んだ方が良いでしょう。ウォーカーはこの世界の攻略を目指す方々です。プレイヤーはクリアなどは目指さず、この世界で日々の暮らしを楽しんでる方々の事です。どちらが良いと思うかは個人の自由だと私は思いますが、ウォーカーの方から見れば、プレイヤーは見下す相手の様です」


 嘆かわしい事ですと、額に手をやる。


「はぁ、本当に知らない事ばっかりだ。この先やっていけるか心配になってきたよ」

「最初はそんなものですよ。『機械は不親切』と申しますし。初めてなら知らない事はどんどん聞いていきましょう。『聞くは一瞬の恥、知らぬは一生の恥』と言いますから」


 なんて良いヤツなんだろう。変だなんて思ってゴメンなさい。心の中で手を合わせ謝罪する。


「何でキミヒトは他のダイバーと違うんだ? 普通は話しかけたりしないんだろ」

「お、名前を呼んで頂けましたね。これで一歩仲良くなれましたね。実は私は覚醒者ですので」


「覚醒者?」

「そうです。私は気づいてしまったのです、真の芸術とは何かを。人と人、感情のせめぎあいによって生まれる愛の結晶。私の望みは人と出会い、交流し関係を深める事。ウォーカーかプレイヤーかの違いなんて、そんな些細な事、私には関係ないのです。そう、私は愛の覚醒者なのです!」


 両手を広げ、天を仰いでうっとりとしてる。ダメだ、やっぱり変態さんだった。


「そ、そうか、頑張れよ。そうだ、ここだと出会うのも交流を深めるのも難しいだろ? 街とかに行って、先輩達と交流してくれば良いじゃないか」


 うんうん、それが良い。我ながら名案だ。出来ればそのまま行ったっきり帰ってこないでくれるとありがたい。


「そうですね。先輩方との交流も楽しみではありますが、今はここから出られませんので、もう少し我慢するしかありません」


「出られない? どういう事だ」

「今、スポーン地点は外部から隔離された空間になってます。実はこれには理由がありまして」


 人差し指を口の前に当て、静かにするようにジェスチャーをしてくる。なんだなんだ?

「初期の頃の話です。その頃は先輩達が新人をスポーン地点で歓迎会をやるのが一般的でした。とある世界でどこにもない盛大なパーティーを開こうと計画を立てました」


 小さな声で話し始める。


「発案者はその世界でトップを走るカリスマ的存在。ある人はカリスマに認められるため、ある人はカリスマに取り入るため。そしてライバル達はこちらも負けじと、世界を巻き込んだ大イベントとなりました」


 ゆっくりゆっくりと語ってゆく。


「それはそれは大きな歓迎会となりました。平原の一画に建てられた格式の高い建物、会場ではドラゴンのステーキや神鳥の卵で作られたふわふわのオムレツ。その世界の住人でも食べた事の無いレアな食材を惜しげもなく使った料理の数々が白いテーブルクロスの上に所狭しと並べられました。外にはサーカスや劇場、コンサート会場。集まった観客目当ての沢山の出店。アリも入り込む隙間も無いほど人や物であふれました。前夜祭もあり、新人のログイン時にイベントは最高潮を迎え、そして、悲劇が起きます」


 オレはゴクリと唾を飲み込んだ。


「突然、悲鳴があがりました。悲鳴をあげさせた物の正体は二人の人間が一体化した物。不自然にのたうち回り、その二つの口からは地獄の底から聞こえるような叫びが発せられ、やがて消える。地獄のような光景が会場のあちらこちらで起こりました。原因は新人の新人の出現位置と先輩の位置が重なってしまった事。隙間なく人で埋め尽くされるという予想外の出来事によって発生しました。合わさった人達にその時の話を聞くと、彼らは言いました……自分の中で何かが蠢く感触がしたと」


 キミヒトが身を抱いて震える。嫌だ、嫌すぎる。


「それ以来、スポーン地点には前からいるダイバーの方は強制排除。新人をまとめて歓迎したいとの声を聞いて、新人もここからは出られない。あ、今はプログラムが変わったようで新人同士が重なる事はないので、ご心配なく」


 良かったですねとにこやかに笑う。


「あー、ありがとう。なんかちょっと気分が悪くなってきたわ。少し休ませてもらうよ」


 その場に座り込んで休む事にした。


「では、私は他の方々とお近づきになってまいりますね。それではシンさんも後ほど」


 颯爽と去って行く。去り際もなんだかサマになっている。ん、シンさんも?

 振り向くとオレの後ろには、笑顔を貼り付けた女が立っていた。

7/31改稿。キミヒトのセリフと描写を増やしたら、文章が倍に。出来たらすぐに投稿するのは止めます。

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