表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『始原の原』
4/36

お友達になろう

もっとキャラの設定を深めたらこうなりました。

 一人の男が立っていた。オレは声をかけてきた相手に失礼になるといけないと思い、立ち上がった。


「ああ、座ったままでも結構でしたのに。スタミナ回復中でしたよね」


 目の前の男は百八十センチメートルを超える身長に、清潔感のある髪、少し童顔に見えるがバランスのとれた顔立ちをしている。オレと同じ服を着てるのに何故か雰囲気が違う。つまり、神様のお気に入りってヤツだった。


「いや、良いんだ。走ってすぐ座ると『ぢ』になるって言うしな」

「嫌な状態異常があるんですね」


 男は笑顔を引きつらせて答える。オレもそんな状態異常は嫌だ。『ぢ』を引き起こす魔法とかスキルを想像するだけで寒気がする。


「冗談だよ。現実(リアル)の話だ」

「そのお言葉を聞いて安心しました。心休まる時間がないと言うのはとても辛いですものね」


 手を胸に置き、息を吐く。余程の事だったんだろう。そういえば、シオンはどうしてるだ?


 振り返ると未だ顔を伏せてうずくまっていた。彼の対応はオレがするかと男の方に向き直す。


「オレはタスクだ。後ろで座っているの、ふが」


 男の手で口をふさがれた。手はすぐに外され、男は一歩下がる。


「失礼致しました」


 流れるような動作で頭を下げ、そして顔を上げる。先程の笑顔は消え、真剣な表情だ。

「タスクさん。ご本人様以外から名前聞かされるのは御遠慮させて頂きます。本人様からのお口から聞いた名前というのは、私に名前を伝えても良いということは、私と関係を築きたいという意思表示! その価値を汚す事は何人たりにも許す事は出来ないのです!」


 男は両手を上げて悦に入ってる。ヤベェ、こいつも変なヤツだった。


「お嬢様、その笑顔とても素敵ですよ。私は『キミヒト』と申します。よろしければお名前をうかがってもよろしいでしょうか?」

 キミヒトと名乗った男は膝をついて背筋を伸ばし、オレの左側を見つめている。その視線の先を見ると、顔に笑顔の表情を貼り付けたシオンがいた。


「あら、御上手ですのね。お世辞でも嬉しいわ。始めまして、わたくし『

シン=アロマ』と申しますの」


 先ほどまでとは違う抑揚のある声で喋る。口に手を当てて、お上品にオホホと笑ってるこいつは、誰なんだ?


「シン=アロマ様、お世辞だなんてとんでもない。こうして出会えたのも何かの縁。 ぜひ、私とお友達になって頂けませんか?」

 右手を斜め前に差し出す。彼女は少し嬉しそうな表情を貼り付けた後に、申し訳なさそうな表情に変える。


「様付けなんてやめて下さい。申し訳ございません、本当は嬉しいのですが、わたくしのカレが嫉妬深くて。わたくし、怒られてしまいますの」


 膝に手をやり、頭を下げる。表情は残念そうに変わった。


「いえ、無作法お許し下さい。誠に申し訳ございませんでした。しかし、貴女の様な素敵な方とお付き合いされてるとは、何とも羨ましい限りです」


 立ち上がると、頭に手をやる。こいつはちゃんとした残念な表情をしている。


「お友達にはなれませんが、これからもお付き合い頂けたら、嬉しい限りですわ。ちょっと所用が御座いますので、失礼させて頂きます」


 そう言うと、笑顔の表情を貼り付けた、シオンだかアロマだかシロンだか分からないヤツはオレ達から離れていった。もう何が何だかわからん。


「タスクさん、どうでしょうか。私とお友達になりませんか?」


 オレにも右手を差し出してくる。まぁ、変だけど友達ぐらいなら良いだろう。キミヒトと握手を交わす。外見からは想像出来ないが、かなりしっかりとした手をしていた。


「あの、申し上げにくいのですが、お間違えですよ」


 なんだ? 友達の握手なら横から強くなく弱くなくしっかりと握って上下に揺らすんだろ。もしかしたらこっちか? 今度は上から下に握手をして下に押す。相手を立てるヤツだから自分を下げてるのか? そんなの友達じゃない気がするんだが相手に合わすオレってば大人。


「あの、もしかして男色の趣味がおありで?」

「ねーよ!」


 ノータイムで叫ぶ。キミヒトが恐怖に顔を引きつらせながら、腕を胸で畳んで後ずさる。


「握手して友達だろ?」


 まったく、失礼なヤツだ。


「もしかして、タスクさんはダイブするのは初めてでいらっしゃいますか?」


 怯えながら言ってくる。


「ああ、そうだぞ。何でわかった?」


 キミヒトの怯え顔が安堵に変化する。大きく息を吐いて、背筋を伸ばしお辞儀をする。


「大変失礼致しました。これはですね握手を求めてる訳ではなく。フレンドカードを頂くための行動なのです。それをご存知ないとの事でしたので、ダイブ初心者だと判断させて頂いた次第でございます」


 右手を差し出すポーズにそんな意味があったのか。


「それではですね。僭越ながら私がフレンドカードを受け取る動作についてご説明させて頂きます」


 まずはですねと前置きをして。


「相手の方に友達になりたいと申し出でて右手を差し出します。相手の方が了承して頂けた場合。フレンドカードを出し、カードの手前を端で持ち、胸からこちらに差し出してきます」


 言葉通りの動作をして説明してくれる。変だけど親切なヤツだ。


「それをですね。相手のお名前が隠れないように、端を右手、左手と掴みます。次にそれを胸まで運びます。そして、受取パネルを左側に出し、そこにフレンドカードを置きます。これで完了です。あ、相手と話してる間はパネルは出しておきましょう」


 説明だけじゃ分からない上に、激しくめんどい。取り敢えず実践しますかという提案にオレは素直に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ