歓迎
予約投稿中
ここまでです。章の配置を変えようと思ってます。予約投稿中に終わると祈りたい。
「タスクくん、多分後二十分ぐらいしたら、シオンが来ると思うわ。『コーヒー』でも飲んでゆっくり待ちましょう?」
「あのグニーさん、その耳当てって何ですか?」
「耳当て? あっははー、これはね『携帯電話』っていうアイテムでね。登録した人と通信が出来る魔法具よ」
通信が出来る魔法具か。でも、ダイバーなら必要ないんじゃないかな?
「フレンド通信とは違うんか?」
「違うわよ。フレンドカードと違ってログイン状態はわからないし、設定すれば通信の拒否も自由自在、戦闘途中に鳴るって事もないし便利よー。後、自分で情報を入れるから登録名は自由だしね。フレンドカードを渡すにはちょっと……友達以上恋人未満には必需品よ」
「通信が出来ないって事はあるのか? 『迷いの森』ではフレンド通信が出来なかったんだ」
「さあ? あるかもしれないし、ないかもしれないかな。製作者じゃないからそこまではちょっと……」
「でも、お高いんでしょ?」
モウカの口癖が消えてる。何で今だけ……
「何と! 今なら六十九万八千M! やすーい。ぱちぱちー」「ぱちぱちー」
「たけーよ! 蛍も乗るんじゃない!」
「でも、見舞い金で買えますよ。どうします? 今回は新人がごっそりと入ってきたので、この値段で買えるのは今だけ!」
「え? うーん、でもなー」
「シオンが来るまでに購入を決めた方には何ともう一台プレゼント!」
「よし! 買ったぁ!」
「まいどぉ〜」
やったぞ。あんなに高い物が半額で買えるなんて、超ラッキー。色は一目でわかるように、ディープブルーとエメラルドグリーンの二色を選んだ。仕様の説明を受けて、グニーさんとの取引を終える。
「ハッ⁉︎」
……二台なんて要らないじゃん。自分で自分にかけるのか? そんなの寂しすぎるだろ。
「坊主。お前は面白いヤツだな……なぁ、ウチのギルドに入らないか?」
「何か裏がありませんか?」
「ハッ、疑心暗鬼になるな。実はな、既に数人の新人がここに属す事になっている。シオンもその一人だな。ここはプレイヤーギルド。好きな時に抜けてもらっても構わない、どうだ? 特に目的が無ければ体験だけでも構わんぞ」
「あたしも入っておこうかなー。モウカちゃんがどんなんなるか調べんといかんし」
「うおー、まむ! モウカちゃんの為にそこまでやってくれるとは感激ですぞー!」
目的はある、家への仕送りだ。周りを見渡せば、オレに負荷を与えてくる存在たちがいる。シオンを思い出す、頭が痛い。全く何を言ってるのか理解出来ない行動が思い出され、再び給料が増える感覚がする。あれ? 悪くなさそうな気がしてきたぞ。いやダメだ、負荷ばかりの職場なんて健康的に良くありませんって、キキーモラに言われるはずだ。
「一日一食は必ず付くぞ」
「田中さん、お世話になります!」
「よし決まりだな。グニー、契約書を持ってこい!」
あ、しまった。反射的に返事をしてしまった。ああ、でも軽食だけであんなに美味いんだ。普通の食事を食べたらどうなってしまうんだろう。
「坊主に嬢ちゃん。今度はしっかりと目を通して、それからサインしろ! これはギルドの決まりだ。無理だと思うなら加入は無かった事にしてくれ」
渡された一枚の紙には、九つの約束事が書かれていた。
一つ、仲間を死なせない事
一つ、オペテリスのNPCを死なせない事
一つ、自分が死なない事
一つ、仲間の為に働く事
一つ、オペテリスのNPCの為に働く事
一つ、自分の為に働く事
一つ、仲間を楽しませる事
一つ、オペテリスのNPCを楽しませる事
一つ、自分が楽しむ事
「これは?」
「俺たちはこのオペテリスでNPCを大事にする事を目的としたプレイヤー集団。要はNPCの人間らしさに絆されたPCの集まりって事だ。どうだ? 俺は坊主なら絶対に入るって確信があるぞ」
モウカをちらりと見る。そうだな、それも良いかもな。オレは契約書にサインをして、田中さんに渡す。
「Добро пожаловать! (ダブロー パジャーラヴァチ )歓迎する」
お読みいただきありがとうございます。
やっと次回にシオンが出るよ(予定)