初心者狩りの正体
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やっとここまで書けました。
軽食後に今回の騒動に関しての説明があった。初心者狩りだと言われたあの集団は、このオペテリス最大のウォーカーギルド『プフェルトゥ』が派遣した、走竜というテイムモンスターに乗ったダイバー達だったらしい。新人送迎用に加え、新人に負荷を与え給料を増やす目的で行われた行為を、ヨークス達に上手く使われ『迷いの森』に新人が誘導されたという訳だ。
プフェルトゥの経営陣はこの件についての全責任を認め、新人全てにオペテリスにおいて、何不自由なく次の就職を迎えられるだけのお金、つまり半年間分の見舞い金を支払う事を世界に発表した。
それがこれだ。百八十万Mーーメニのメは発音し辛い。マとメの間といった感じだーーこれが多いのか少ないのか不明だが、少年が売っていた軽食なら一万八千食食べられる。せっかく貰えるのだから頂いておこう。手続きを終えたオレたちは田中に質問があるか聞かれた。なんかあるかな?
「これって新人やって、嘘つく人が出たらどないすんですか?」
いい質問だ。蛍ナイス。
「それはだな、お前ら新人の中に大金持ちがいたからだ。お前たちの給料明細に肖像件に関する損害賠償でSP入ってたと思うんだが、確認はしてないのか?」
「恥ずかしながら、その時は余裕が無くて……」
全部、キキーモラに任しちゃって訓練してたから見ようともしなかったな。まあ、機械に任せてるんだ、安心だろう。
「そいつがな新人全員分のSSを撮っていたと公言したんだ。このエスエスはこの件に使用したら消去しますって書類に書いてあったろう? 読まなかったのか?」
「あははー……」
「……先が思いやられる。坊主に嬢ちゃん、書類にサインする時は確認を忘れるなよ? 他にはあるか?」
「他は特にはないです。ありがとうございました」「あたしもないです」
「うむ。グニー、客人に飲み物を用意」
「しておりますよ」
「そうか。感謝する」
上の考えに合わせて動く。良いコンビだなぁー。
「皆様、お疲れ様でした。どうぞ『コーヒー』をお持ちしました。これは焦がした豆茶になります。『砂糖』『ミルク』などを入れてお召し上がり下さい」
『コーヒー』って何だ、向こうでも見た事も聞いた事もない。豆ならそのまま炒って食べた方が美味いに決まってる。わざわざ焦がした上にお茶にする? 訳がわからないよ。それにしても砂糖を入れるなんてとても贅沢な飲み物だ。
「……ダニー、やっぱり嫌がらせか?」
「なんの事でしょう? 新人の方があちらでは飲んだ事の無い、オペテリスだけの飲み物をご賞味頂きたいと思っただけでございます」
「そうか……」
田中さんは苦々しい顔をしている。え? 『コーヒー』ってそんなに不味いのか?
「そうでございますよ。コマンディール、コーヒーにお砂糖は何杯入れられますか?」
「……四杯頼む」
「コマンディール、コーヒーにお砂糖は何杯入れられますか?」
「六」
シャスチ? 山盛りの盛られた白色の粉が、黒い液体に入って消える。その回数は六回。
「オニさん、コーヒーにお砂糖は入れられますか?」
「なんでダニーさんまでオニさん呼びなんだよ!」
「あれ? 違うんですか? 名は体を表す良い名前だと思ったのですが」
全く、どいつもこいつも鬼扱いしやがって。
「オニさんオニさん、自分名前言うてないで」
「あ……そう言えば。えーと、ワタシはタスクと言います。よろしくお願いします」
「ブー、タスクが、タスクがワタシ、ワタ、シなんて言ってるですよぉほーぅ、ぶふー。しかも、蛍とダニーに騙されてるですぅー。さっき書類に書いてたですぞぉぉお!」
モウカが腹を抱えて笑っている。クッソ、ここいる全ての人間がオレの給料を上げてきやがる! あれ悪くない?
「タスクか、なあ、坊主。アロマという女を知っているか?」
「え、はい?」
「グニー! シオンにコールだ。タスクが来たと伝えろ、まさか本当に来るとは思わなかったな。広場の掲示板も取り下げておけ」
「へ?」
「はい! シオンはっと」
ダニーさんはスカートのポケットから、この部屋にあるのと同じ片方の耳当てを取り出し帽子の横に当てる。
「もしもし、シオン? 今どこにいるの? ……そう、タスクさんがギルドに来たわ。すぐにいらっしゃ……切れちゃった」
ダニーさんが突然独り言を言い始める。人が何も無い空間に話しかけてるのは、怖いもんだ。
お読みいただきありがとうございます。
書く予定表にはかっこいい田中さんって書いてあったんだけどなぁ。