モウカは二人いる
本日、最後の更新になります。
時計を確認する、キキーモラとドライブに行ってから二日後の明時間0時。オレはベッドで横になっていた。
「祐様、今回は強制ログオフにならないようにご留意下さい」
「わかった。オレの身体は任せたよ」
「勿論です。ずっと見守っていますのでご安心下さい。それでは行ってらっしゃいませ」
首から下の感覚が抜け落ちる、目の前が暗くなり、気づけば見覚えのある部屋に立っていた。薄暗いその部屋の壁は丸太で出来ておりクローゼットが置いてある。前より薄暗いと思ったのはドアがしっかりと閉まっているせいだった。ここは『迷いの森』の丸太小屋。
強制ログオフ後はセーブポイントに飛ばされるのか……モウカ、ゴメンな。迷いは無くなったと思ったんだけど、またここに来ちゃったよ。
何の気なしにクローゼットを開くと白いローブ、黒いローブ、レザージャケットが揃っていた。
おかしい、ドアもそうだが、この服は誰がかけたんだ?
周りをよく捜索すると、メイス、杖、大ナタや見たことがなかった長剣、弓、革製の鎧。モウカちゃんに渡したブーツまでしっかりと残っている。
オレはモウカ特製のジャケットを着ているし、大ナタも持っている。アイテムボックスを見れば、黒いローブに上位火精霊の毛皮も二つある。どういうことだ?
オレは小屋のカギを開いて外に出ると何度も眺めた光景が広がる。あっちの方角がヘビの出る道。そして、こっちは……モウカと出会った場所に繋がる道。
オレは何かに誘われるようにモウカと出会った道へと向かった。まさかなという思いもあり慎重に慎重に物音を立てないように林道を進む。
その先に見覚えのある、初心者装備に身を包んだ、パッツンヘアーの女性『モウカ』がそこに座っていた。見た瞬間、心臓が止まるかと思った。声をかけようとして戸惑う、気付かれれば、また同じ事になるかも知れない。ゆっくりとゆっくりと後退る。
「あ!」
気づかれたか⁉︎ しかし、モウカは明後日の方向を見ていた。オレが来た道があった場所の方向だ。
「また二人目が来たですぞ。ありゃ、こっちもですか『透明薬』でも使ってるのですかねぇ。前回は五十年前だったけど、今回は三日ですか。今回バレたら確実に死んじゃうです、慎重に行くですぞ!」
今回は確実に死ぬって言ったか? 今、ここで止まるのは得策じゃないな。来た道を引き返す。この二日間、キキーモラの改変世界で、ずっとどうすれば良いか考えていた。また同じ事があったら……いや、あの時どうやったらモウカを救えたか、モウカの言葉を何度も何度も思い出して、考えた。そして一つだけ救える方法を見つけた。
それはもしもの話、初めからモウカの事を知っていたらの話。そして、それは今正にこの状況。でも、今は救えない。一つだけ足りない要素がある。このまま、モウカに見つからないように逃げながら、新しく森に来た人間にかけるか? 可能性は低い、でも0じゃない。
まずはモウカから逃げるために、ヘビの森まで行こう。すると目の前から、一人の人間が歩いてくるのが見えた。なんでここにいるのかわからないけど、オレは飛び上がるほど喜んだ。
これでピースは全て揃った。
次回で迷いの森は終わります。矛盾しないようにはしたつもりですが、即興なので不安です。