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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『迷いの森』
26/36

決意

本日3回更新の二話目になります。

 白い砂浜でオレは真っ白に燃えつきていた。旧世代に生まれなくてよかった。あんな乗り物を開発した人間は何を考えて作ったんだろう。


(たすく)様海に入りませんか? 水が冷たくて気持ちが良いですよ」


 裸同然の布面積の少ない水着を着た、キキーモラが波打ち際ではしゃぎ回っている。オレもキキーモラのデータ改変という裏技によって、無理やりハーフパンツの水着に着替えさせられていた。


「冷たいって、お前アンドロイドだろ?」

「冷たいという感覚情報を読み取っているんですよ」


 ですよ、か。キキーモラから出た言葉にモウカの顔が浮かぶ。


「ダイダルウェーブ」

「どぅああーー‼︎」


 突然、大量の海水が降ってきた。鼻に入ってツーンと痛む。やった犯人は一体しかいない。


「キキーモラ! 何しやがる!」

「祐様ゲームの世界で、何があったかキキーモラにお聞かせ願います」


 しゃがみこんでオレの手を握る。海に入ってたというのに暖かい、そして現実ではなかった柔らかさも感じられた。


「お前に話してどうなる?」

「わかりません。話せば楽になると言います。今、話せる相手はキキーモラだけです。残念ですが、キキーモラは人形です、壁に向かって喋ってるつもりで

も良いですからお願いします」


 人の目をしたキキーモラはオレの顔をジッと見ている。オレは観念して全てをキキーモラに打ち明けた。



「……そうでしたか、大変でしたね」

「おぅ……」


 アホみたいに泣いた。自分でもまだ涙声なのわかる。


「それでは、祐様。そんな仕事辞めましょう」

「え?」


「仕事しなくても生きていけます。贅沢は出来ませんが生きるだけなら何も問題ありません。気が向いたら違う仕事すれば良いんです。それまでキキーモラと一緒にゲームをしましょう」

「でも、それじゃあ仕送りが……」

「祐様、をここに売った家族の事は忘れましょう。どちらにしろもう会えないんです。気にする必要はありません」


 オレを売っただと?


「ふざけるな! オレは自分の意思でここに来たんだ」

「それでは、仕事しましょう。家族の為に頑張りましょう」


 血が上った頭が急に冷え込む。


「……また、同じ事になったらと思うと怖いんだ」

「その女も無駄死にでしたね。折角、死んでまで祐様を先に進めようとした人は哀れですね」

「モウカを悪く言うな……」

「それでは、どうしましょう? ログインすればまた同じ事があるかも知れませんよ?」


「同じ事は起こさない……オレが強くなる」

「どうやって?」

「なぁ、キキーモラ。この世界を改変出来るんだよな?」

「出来ますよ、個人用ですからね。どう改変しますか?」

「オレを自動車と同じ早さに動けるようにしてくれ」

「正気ですか? それでは、接触判定も消しておきますね」

「それはそのままにしてくれ」

「……わかりました。でも、条件があります」

「出来る事ならな」

「お小遣いをください」

「アンドロイドがお金を持ってどうする?」

「欲しいものがあるんです」


 物欲のあるアンドロイドって、不思議だな。まあ、背に腹は変えられないか。


「良いぞ。どれくらい欲しいんだ?」

「お給料から少しずつ割合で頂いていきます。仕送りや健康管理に影響は絶対に出しません」

「わかった、でもアンドロイドって口座持てるのか?」

「持てません、そこで相談です。祐様の口座権限をキキーモラに譲って頂けませんか? 毎月の仕送りも必要物品の購入も全てキキーモラが管理しますので、祐様の手間も省けて一石二鳥です。どうでしょうか?」


 まだ一度もやった事がないからピンと来ないな。


「うーん、仕送りってそんなに面倒なのか?」

「はい、面倒でございますよ。毎日どれだけの負荷が得られるかわかりません。その上、物価も毎日変動しますので、栄養バランスや向こうの状況を加味しながら物を送る必要があります。それこそ仕事なんてしてるヒマはないくらいに色々考えなくてはならなくなります」

「げー、それは面倒だな。親父もそうやって送ってきてたのか? そんな風には感じられなかったのは、もしかして親父も管理用アンドロイドに任せてたのかなぁ」

「データーによりますとここに来る方の八割以上の方は一部権限を管理用アンドロイドに任せているようですね」

「そっか、それじゃあ任せるよ」

「それではこちらの方にサインをいただけますか?」


 キキーモラの手に何枚もの書類が出てくる。砂が一部盛り上がったと思うとイスと机が現れた。データー改変って凄いな。イスに座って書類を見ると細かい字でたくさんの文字が書かれていた、面倒だなぁ。サッと読んでサインするだけで良いか。

 何枚も何枚も読んでサインしてをし続ける。似たような事が何度も何度も出てくる。最後の方はサインをするだけの作業になってしまった。


「これで……ですね」


 キキーモラのつぶやきは波の音にかき消された。

8/26モウカの仕事。ボスを倒した後のアナウンスを変更しました。


サインする時は気を付けましょう。キキーモラの欲しい物とは……

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