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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『迷いの森』
19/36

侘び

説明を含みます。

「申し訳ございません、私が悪かったです」

「わかればよろし」


 叩かれまくった上に正座でお説教されるとか、オレはどれだけ酷い事をしたんだろうか。


「人は三百年も生きないですよ」

「鬼さんは人じゃないやろ? ツノ生やした真っ赤な体で虎パンツはいた変人や」


「蛍さんの言ってた、オニさんってもしかして、鬼の事でした?」

「せやで。気付いてなかったんか、堪忍な」


「えっと、何で謝られるんでしょうか?」

「その言葉使いやめいな、もう一度張り倒すで。そりゃ『親しい仲では軽口を言おう』やろ。毒吐いてるのを理解されないのを申し訳無く思わんで、どないするんや」


「え? 『親しき仲にも礼儀あり』じゃ?」

「へぇ、やっぱ鬼さんは古い言葉に詳しいんやな。それは無くのうてしまった言葉や。礼儀気にしてたら相手が損するだけやで」


「どういう事だ?」

「負荷かけんと相手のお給料少のうなるやん。なんや忘れたんか、鬼さんはあたしと同じやな。古い事を調べてるうちに忘れてしまうんよねぇ。心太(ところてん)方式ってヤツや。なかーまやね」


 急に手を取られ握手される。女性の手って何でこんなに柔らかいんだろう。


「そや、さっきの顔は相当な負荷になったで今日のお給料が楽しみや、まいどおおきに。でも、金輪際(こんりんざい)やったらあかんで、負荷のかけ過ぎはペナルティになるで。それより何より、あたしはPK(プレイヤーキラー)にはなりとうないで、ほんま頼むな」


「あ、ああ。ありがとう気をつけるよ」


 負荷って金になるのか。やっべぇオレ、エモーションで相当な負荷はアロマと蛍の二回かけちゃってる。これは故障なので、どうかペナルティは勘弁して下さい。どこに居るのか知らないけど、GM(ゲームマスター)にお願いする。


「お、終わったですよ」


 小屋からモウカが出てくる。顔は青くフラついている。


「おいおい、大丈夫なのか?」

「大丈夫ですぞ。ちょっとランクの高い裁縫したので、スタミナをがっつり持ってかれただけですよ」


 この世界では裁縫も大変なんだなぁ。こんなわずかな間でモウカは少し痩せたような気がする。


「おおきになぁ。裾の丈直してくれた?」

「ローブの布はすでに消えてしまったのでこれで勘弁して欲しいですぞ」

「ちょっと着てくるわ」


 蛍はモウカから元白いローブを受け取り小屋に入って行く。


「お疲れさん、少し休んだらどうだ。ゆっくりで良いから気にするなよ?」

「そんな事はどうでも良いのです。早く着て下さいです。モウカちゃんすぺしゃるジャケットですぞ」


 差し出されたジャケットは黒色に変化していた。襟の辺りに薄茶色のファーが付いているようだ。ヘビ皮からファーを作るとは、かなり難易度が高そうな裁縫だな。オレはジャケットを受け取り装備する。


「おお! 何だろう力が湧いてくるような感覚がするぞ。袖と裾の返しにヘビ革を使ってるのか。ありがとう、モウカ気に入ったよ!」

「『火魔法:筋力強化(ストレングス)』の魔法付与(マジックエンチャント)を施してあるですよ。大事に使ってくれると嬉しいですぞ」

「凄いな。ありがとう、大切に使うよ」


 凄い、初日に魔法装備(マジックアイテム)を手に入れられるなんて夢にも思わなかった!


「後、これも改造したです。火属性の付与をしておいたのです」


 差し出されたのは大ナタ。持ち手の部分にヘビの革が使われているようだ。武器は鍛冶屋(ブラックスミス)の領域じゃないかとは思ったが、言うだけ野暮(やぼ)ってもんだ。


「裁縫って凄いな」

「んっふっふー。そうですぞ、ジャケットには隠し効果も付与してあるです。いずれ必要な時に使うと良いですよ」


「モウカちゃん、大切な事を忘れてるぞ。隠されたら使えないだろー」

「大丈夫です、縁があれば使えるですよ。わたしが刻んだ友達の証ですぞ」


 なんだ、気になる言い回しだなぁ。職人のこだわりってヤツを感じる。


「ええやん、ええやん。鬼さんとお揃いのケツネの刺繍付きや」


 蛍が小屋から出てくる。元白いローブのフード、袖、裾にオレと同じファーが付いている。胸にはワンポイントでキツネの刺繍が付け加えられていた。ん、お揃い?


「鬼さんのケツネはおヒゲが一本特徴的でかわええなぁ」

「蛍ちゃん、可愛いですが職人としては痛恨のミスですぞ。縫い直したいですが、流石に無理なのです」


 ジャケットを脱いで、背中部分を確認すると、そこにはリアルなキツネの刺繍がしてあった。確かにヒゲが一本変な方向に向いている。愛嬌があって良いじゃないか。


「蛍がピンチの時に縫ってたのはこれか? 道理で時間がかかってたはずだ」

「あの……お気に召さないですか?」

「んなわけないだろ。ありがとうな、モウカちゃん!」


「んっふっふー」


 尻尾があればぶんぶんと振り回しそうなほど、ご機嫌な様子のモウカだった。

ストックが切れました。

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