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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『迷いの森』
18/36

成長と未成長

いいタイトルが思いつかなかったです。

 オレ達は蛍の装備を修理する為、一度小屋に戻る事にした。わざわざ小屋に戻ったのには他にも理由がある。上がった能力に振り回されないように慣れる為だ。


「モウカちゃんが裁縫してる間は絶対に中を(のぞ)いてはいけないですよ」


 そんな事を言う昔話があった気がする。前は一緒だった蛍も今回は外に出されていた。


「ほい」

「あわわわ……うっぷ」


 ナイスキャッチ。今は初期装備になった蛍と布で出来たボール投げでキャッチボール中だ。蛍は顔面キャッチの天才らしい。百発百中、顔で受け止める。


「なあ、取る前に目をつむるの止めたらどうだ? 痛くないだろ?」

「オニさんが早う投げすぎなんよ。オニさんのいけずぅ」


「山なりのボールが早いとか言うなよ、物理法則を無視しないとこれ以上は遅く出来ないぞ」

「うぅ……コレはアレやな。翻訳装置と一緒や、運動機能を通信する装置の調子がおかしいんや」

「そうか、大変だな。よし続きをするぞ蛍、今度は全力で投げてくれ」

「任せとき、投げるのは得意やでー」


 ほほう、言うだけあって見事なフォームだ。大きく振りかぶって。投げる、早っ! っと、すげぇ。オレは攻撃妨害(インターセプト)持ちだぞ? それがギリギリって、どんだけだよ。


「運動機能は故障してないように思うけどな。ホイ」


 投擲(スローイング)で蛍の胸にターゲットを合わせて投げる。


「き、急に投げんといてふ」

「……ナイスキャッチ」


 なぜ顔面に当たる。そのまま手を置いとけば取れるように投げてるのになぁ。


「オニちくや。職場内いぢめやー」

「いじめてないって、ホラもう一度全力で投げろ」


 蛍は地面に落ちたボールを拾ってこちらに投げようとしてるが、変だ。さっき物凄く綺麗だったはずのフォームは嘘のように崩れ。がたがただ。肘は開きぎこちなく投げる。投げる時に自分も飛び上がる。ボールは明後日の方向に飛んで森へと消えた。


「あれ? おかしいなぁ」

「本当におかしいな……やっぱり故障してるんじゃないか? メンテに出さないとヤバそうだぞ」

「ボールものうなったし。キャッチボールというのはおしまいやな、ほんま残念やわー」


 まさか、ワザと無くすように投げたとかしてないよな。うーん、モウカちゃんは忙しそうだし新しいボールは無理そうだな。


「じゃあ、メイスでも素振りしとけ千回もすれば慣れるだろう」

「やっぱ鬼や」


 さてとオレは当面の問題を解決するか。普通に走ったり動いたりする分にはまだ問題はない。普通じゃない、そう魔法をかけた時がヤバい。


「『敏捷強化(アクセル)』」


 軽く走ってみると全速に近い速さが出る。見る見るうちに木々が後ろに流れていく。そして、本気で走ると……。


「でぷっ!」

「鬼さん、難儀やなぁ」


 森の木に激突した。こんな狭い場所じゃあ練習しようにも難しい。困ったなぁ。速度を上げすぎて逆にゆっくり動かなきゃいけないって何かおかしい気がする。しょうがない、どこまでコントロール出来るか練習あるのみか。


 ──ダメだ。全力とは程遠い……。モウカちゃんが『筋力強化(ストレングス)』を勧めたのがよくわかった。しかし、モウカちゃん、今回は随分長いな。暗時間まで後四時間ぐらいか、そしたら強制ログアウトだ。


「鬼さん、心配やろね」

「ん? そうだな給料は大事だからな」

「なんでやん!」

「あだ!」


 頭をメイスで叩かれる。恐ろしく鋭い攻撃で避けられなかった。


「あにすんだ!」

「ツッコミのエモーションや」


 ああ、これエモーションなのか、行動だけのエモーションもあるんだな。しかし、高速状態のオレを(とら)えるとは、恐るべしツッコミのエモーション。


「お姫様の事に決もうてるやろが」

「アロマか、心配……まあ心配ではあるがよくよく考えれば死ぬ事は無いだろうからな。慌てず確実に行く事にしたよ」


「ほーん、アロマっちゅうんか。あの子かわいいで必ず『捕獲(テイム)』したるんよ」

「人間を『捕獲(テイム)』すんな。モウカちゃんに、誘拐は犯罪ですぞ、って言われるぞ」


「昔は『虎穴に入らずんば虎子を得ず』って言葉があったらしいで」

「そんな闇色の穴は今すぐふさげ! 一か八かどころじゃ無くて百パー(ゲームマスター)に捕まるわ」

「へー鬼さん、古い言葉に詳しいんね。やっぱ三百年ぐらい生きとんの?」


 エモーション、ツッコミ。


「ヒトはそないに長ごう生きられへぶっ!」


 オレの顔にトゲ付き鉄球飛んでくる。『迎撃(カウンターアタック)』だと……視界がぐるんと回り背中を強打する。


「けったいな物見てしもたわ。呪われてへんやろうか。あ、もう一発ぐらい叩いとこ」

「ひでぃっ!」


 顔面にトゲ付き鉄球が振り下ろされる。行動のエモーションもダメなのか……。蛍と同じでオレはエモーションツールが壊れてるのかも知れない。


「やっぱもう一発『殴打(スマッシュ)』ぅ」

「やめぶぇ!」

「あ、スキルはえたわ、試してみよぉ」


 メンテにいくらかかるだろう。そんな事を考えていると、蛍の「『頭部粉砕(ヘッドクラッシュ)』ぅ」という間延びした掛け声ともに、トゲ付き鉄球が再び落ちてくた。

アロマの希望が叶いました。

タスクのエモーションツールはある理由で壊れてます。

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