仲間のため 後編
本日1回目投稿。
ええと──うわぁ、ログが長い。どんな激闘があったんだろう。最初に『小剣術』かナタが小剣なのか不明だが、ここでは小剣に分類されるんだろう。『回避』『迎撃』『攻撃妨害』ときて『毒耐性』か。『解毒』が必要なくなって、蛍も蛍で狩りを始めたのかな?
ふむふむ、『投擲』──おお! 『小剣術』が『小剣術二』になってる。スキルも成長するんだな。
「終わったですぞ」
「ありがとうって、ああ! 魔法を覚えてる。いつの間に……感動もへったくれも無かったな。『風魔法:敏捷強化』か、やっぱり素早くなるのかな?」
「わたしは『火魔法:筋力強化』をオススメしたんですが。オレはもっと早く動けるんだ、どうにかしたい。と言うのでそちらを取ったんですぞ。加速がかかってからのタスク戦士は奇声をあげながら気持ち悪い動きしてたのです。素の状態でコントロール出来るですか?」
「マジか? 全く覚えてない」
「……シャツを渡すですぞ。タスク少年、君はここに来る前に何か口にしたですか?」
「よろしく、うーん。あ、そういえば草原で草を少し食ったな。すんげぇ苦かった」
思い出すだけで、口の中が苦い気がする。口をゆすぎたくなってきた、水筒とか欲しいなー。
「あの草を、食った? タスク少年、君は馬か鹿ですか?」
「馬鹿じゃねぇよ! 見た目がリアルだったから確かめたかっただけだ」
「そうですか……あの、補助魔法で暴走させてゴメンなさいです」
「おう、オレもさっきは酷い事言ってゴメンな」
「それ、だけですか?」
「えーと、犯罪的な行為に巻き込んだり、呪われたと勘違いして服を脱がそうとしたり、女性扱いしなくてゴメンな。後、無視したり、プッツンとか思ってゴメン」
「誰がプッツンですか⁉︎」
「今誤ったんだから許してくれ!」
「違いますよ! わたしを責めないんですか、って事ですよ」
「何か責められるような事をしたのか?」
「だから暴走させたじゃないですか」
「そういえば何で狂化させたんだ? ヘビ皮の為って言うならちょっと怒るかもだな」
「……奥に行けば行くほど強い敵が出るはずなので、先にランクを上げた方が良いと思ったからです」
「成る程、そりゃ必要だな。じゃあ、何でそれを先に言わなかった?」
「タスクが急いでたので、聞く耳を持ってもらえないと思ったのです……」
「わかった、次はちゃんと言ってくれ。はいおしまい。オレ常識がないから色々聞いてゴメン」
「へ? おしまいですか?」
「おう、おしまいだぞ。ランクはもう少し上げた方が良いか?」
「上げた方が確実だと思うですよ、じゃなくてですね。それで良いんですか?」
「良い、というかむしろありがたいと思ってるぐらいだ。ヘビの多さから言うと戦闘は避けられなかったんじゃないかな。素のままだったら毒を食らわないように立ち回ってただろうから、ここまではランクも上がらなかっただろうし。結果的に大幅な時間短縮だ。はい、これ以上はグチグチ言わないぞ、日の目の見れない身体にされたらたまらないからな」
「……シャツ終わったですぞ。次は上着を縫うですからそのままで居てくださいです」
「脱ぐんじゃないのか?」
「服が伸びてた方が縫いやすいのですよ」
「そっか、じゃあ頼むよ……あー、何だ、探すの手伝ってくれてありがとうな。一人じゃここすら抜けられたかわからないや」
「感謝するですぞ。タスクだけなら下着姿でここで倒れてたですよ」
「それは勘弁して欲しいな」
そう言うとお互いに無言になってしまった。モウカに上着の背中部分を縫われてるのだろうツンツンと引かれてる感覚がする。えーと、ログの続きでも見るかね。
──『回避二』『両利き』両利きかー。左右の手を動かして見るが特にリアルと何かが違うという感覚はない。どう違うんだろうか。それで、次が『狂化耐性』っと、読み終わってしまった。まだ、上着は縫い終わってないようだ。スキルを数えてる間に終わらなかったな。それはズボンだけだったか……
【盗賊ランクが十八に上がりました】
一八……十八⁉︎ いつの間にこんなに上がってたのか。盗賊って事は魔術師はどうなったんだ?
【主職業:盗賊ランク一八/副職業:魔術師ランク十三】
十三か。魔法ってどうやって覚えたんだろう。
「なあ、モウカ。魔法ってどうやって覚えるんだ?」
「SJPを消費して覚えるんですよ」
成る程、今あるポイントは五。多いいのか少ないのかわからん。試しに『火属性:筋力強化』に振ってみよう、残りは四。『筋力強化』にまだ振れるな。『筋力強化二』にすると残りが二。魔法を強化すると消費も上がるんだな。決定を押さずにポイントを戻す。
「タスク、マズイですよ。蛍のローブの耐久値がそろそろ危ないですぞ」
「あん?」
見れば蛍は毒ヘビに囲まれていた。おいおい、助けに行かなくちゃ。
「タスク! 動いちゃダメです! 今動くとタスクも全パージしちゃいます! それどころか一生防具が着れない呪いにかかるです、歩く猥褻物陳列罪ですぞ! 淫獣タスクの汚名挽回ですぞ!」
「それは困る! でも、そんな事言ったって蛍が危ないじゃないか!」
「急ぐです! それまでは持つはずですので大人しくしてくださいです!」
なんてこった。蛍は飛びついてくるヘビに向かって武器を振っているが振りが早すぎて当たっていない。ああ、また咬まれてる!
「蛍! それ以上攻撃を食らうな!」
「せやかてオニさん、上手く身体が動かへんねん」
もしかして、蛍は上がった能力に振り回されてるのか?
「ああ、ヒゲが曲がったですぞ!」
どうしたら良いんだ……このままだと蛍に重大なトラウマが。──そうか! 相手が遅いなら早くすれば良いんだ。
「『敏捷強化』」
飛びかかるヘビに向かって、魔法をかける。まだ振りの方が早い!
こうなったら『敏捷強化二』に魔法を強化だ。残りポイント三。
「『敏捷強化』」
ああ、惜しい。あと少し遅ければ当たったのに。まだ振れるか? よし振れた『敏捷強化三』これで残りはゼロだ。これで決まってくれ!
「『敏捷強化』──いょっし!」
鉄球がヘビに当たり光の粒に変化する。それから後は簡単だった。飛びかかるヘビにオレが魔法をかけて、蛍が落とす。蛍は一度も咬まれる事なく。無事にトラウマを回避する事が出来た。勿体無くはないぞ、うん。
もちろん、SJPの事ですよ?