仲間のため 前編
短いですが、ここで投稿します。
「──『狂騒火!」
【スキル『狂化耐性』の獲得条件を満たしました】
「さあさあ、戦士タスク行くですよ! ごーたすくごーごー!」
モウカの指差す先には、毒ヘビの群。
「あれ? 戦士タスクどうしたですか?」
「……モウカ、お前オレに何をした」
「あ、耐性手に入れちゃった感じですか?」
「バッチリ手に入れたぞ。狂化って何だよ……」
「補助魔法ですぞ」
「仲間を狂化させんな! そんな物騒な補助魔法封印しろ封印!」
「えー、嫌ですよー。次は蛍ちゃんにかけるですぞ」
「やめんか! か弱いクレリックに何をさせつもりだよ⁉︎」
「……もう、か弱くないですよ」
「あん?」
「戦士タスクのおかげでランク二桁超えてるですぞ」
「『粉砕』ぅ」
間延びした声とは裏腹に重量のある物が落ちたような音がする。音がした方を見れば蛍の周りにホタルが飛んでいた。ああ、ヘビを倒したのか。
上半身ぐらいの長い棒──じゃない、蛍が得物を持ち上げると地面にめり込んだ先端が現れた。現れたのは凶悪なトゲが付いた拳大の金属球。かなり重そうなその得物を蛍は片手で軽々と持っている。
蛍は屈んで何かをつかみ、こちらへと歩いてきた。屈む時に太ももを隠す辺りモウカからの精神操作(補助魔法)は受けていないようだ。相変わらずの眠そうな顔で近づいてくる。
「オニさんどないしたん? 元気ないやん、スタミナでものうなったんかー?」
「ヘビが弱くて飽きたらしいですぞ」
「ちげーよ! 悪い魔女の呪いから解放されたんだ」
「ほーん、オニさんもお姫様みたいやねぇ。はい、モウカちゃんヘビ皮」
「ありがたき幸せですぞー。蛍ちゃん、タスク少年の防具を修理するですので、その間だけ収集お願いしても良いですか?」
「ええでー。オニさん、あたしに任せて少し休んどきなぁ」
「おいコラ、勝手に決めるな」
「タスク少年動いちゃダメですぞ。耐久値ギリギリなんですからパージしちゃうですよ。そしたら犯罪ですぞ。」
「……さっき狂化魔法かけて突撃させようとしてなかったか?」
「男は細かい事を気にしちゃダメですぞ、ささっと脱ぐです」
「脱いでも犯罪になるわ!」
「むしろ自分で脱いだ方が罪が重そうですぞ。ふぅ、しょうがないのです、ズボンははいたまま縫うので動いちゃダメですぞ。皮膚と一体化したいなら別ですが」
そう言うと、針を片手にモウカはにじり寄ってきた。
「いや、ちょっと待て、いくらモウカといっても女性だ。まとわりつかれるのはなんというか……居心地が悪いというか落ち着かないというか」
「ふん!」
「あぶねぇ目を狙うな目を!」
モウカはゆらりと立ち上がり針をオレに向けてにらみつけてくる。
「少しランクが上がったからって、調子に乗るんじゃないのです。言って良い事と悪い事ぐらい区別しなさい『親しき仲にも礼儀あり』って言うですぞ。次にぐだぐだ言ったら物理的に日の目を見れないように縫い合わせてやるですよ! そんなに居心地が悪いと思うならログでも読んでれば良いのです、スキルを数えてる間に終わるですぞ」
『親しき仲にも礼儀あり』ってあるんじゃないか、キミヒトのヤツ嘘ついたな。今発言すると色々危険が危ないので、モウカには後でちゃんと謝るとしよう。
明日も二話投稿する予定です。