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ゲームがお仕事  作者: ぶぶさん
『迷いの森』
15/36

新人狂化

初めての戦闘が十四話は遅すぎましたねぇ。

「そろそろヘビが出てきたあたりや。オニさんきぃつけてな」

「おうよ。はぁ、毒は怖いからな出来れば避けて通りたいなぁ。なあ蛍、毒を吹きかけてくるとかはなかったか?」


 林道というよりちょっと開けた場所に着いた、高い草は無いが落ち葉は積もっている。目を皿のようにして辺りを警戒するが、今のところ何処にもヘビは見当たらない。


「何匹か叩きたおしたけど、噛みついてくるだけやったわ。でも安心して毒になってええよ。『解毒(アンチポイズン)使(つこ)えるからなー、覚えたてのホヤホヤやー。あたしこれでも聖職者ランク二やで」

「……『解毒(アンチポイズン)』って本当に効くのか? ヘビによって毒の種類が違うぞ?」

「そうなん? 知らんかったわ」


 全くもって安心出来る要素がなかった。こりゃ、絶対に噛みつかれる訳にはいかないな。


「タスク少年、モウカちゃんはヘビ革が欲しいですぞ。見つけたらドンドン狩るですよ!」

「……お前は気楽そうでいいな」


 足どり軽くスカートをひらひらと揺らし歩くモウカ。ヘビの革なんて一体何に使うつもりなんだろうか。


「何より敵を倒せばランクが上がるですよ、ランクが上がれば出来る事も増えるのです。モウカちゃんに任せるです、ヘビが出てきたら補助魔法をかけてあげるですぞ」

「モウカちゃんは魔法が使えるんだな。主と副じゃやっぱり差があるのか」

「わからないですが、ランクが上がれば魔法が使えるようになるかもですぞ。れっつ、すねーくはんと」

「……それは魅力的な話だが。今はアロマを探すのが最優先だからな」


「──かの者に猛々しく燃ゆる火の(ごと)き戦士の魂を与えん、『狂騒火(バーサーカー)』」


 胸が焼けるように熱い。何だ何だ何だ? 落ち着かない自分が自分じゃないようだ今にも駆け出してこのナタを振り回したい、一体何に? 決まってる敵だ!


「敵ぃはどこだぁどこにいるぅう⁉︎」

「うわ、オニさんどしたん?」

「戦士タスクよ! 前方に敵影有りですぞ。さーちあんどですとろーい!」


「おぉおお!」


 黒い皮膚に赤い斑点! あれが敵だ。心に浮かんだ言葉は歓喜。たまらず駆け寄るとヘビは頭を上げて飛びつく体勢をとる。いつでも来いや!

 こちらに飛んでくるヘビに向かって斜めにナタを叩きつける、鈍い感触。叩きつけられたヘビが足元に這いずり寄ってきたが、甘い。

 頭をブーツで押さえ込んで、ナタを二回叩きつける。あっさりとヘビが光の粒に変わってしまった。もろすぎる。こんなんじゃ、物足りない。次だ、次の敵は? 居たぁ。笑みで顔が歪むのがわかる。次は二匹!


 「シッ」


 同時に飛びかかってきたヘビの一匹を下から上になぎ払い、左手でもう一匹の首をつか、もうとして左腕を咬まれる。クソつかめると思ったんだがな。牙が刺さっているのにその痛みは無い、強めに圧迫されるじんわりとした痛み。右手の人差し指と親指を使ってヘビの口を無理矢理開き、腕から引き離す。視界の端になぎ払ったもう一匹が今にも飛びかかろうとしているのが見えた。二匹同時は無理だな。

 捕まえたヘビを投げ捨て飛びかかってくるヘビを迎え撃つ。一匹ならいけるはずだ。飛びかかってきたヘビの首を左手でつかむ。おっし、リベンジ成功ぉ。ヘビをつかんだまま、投げ捨てたもう一匹にナタを振り下ろす。ナタを受けたヘビは身をよじらせて苦しんでいる。もういっちょ、う? 捕まえたヘビが左腕に絡みついて締め付けてくる。邪魔すんな!

 こちらも負けじと左手に力を込めて首を圧迫仕返すとそのまま無視して、のたうちまわるヘビに一撃、二撃、三撃と追撃を加えて光へと変える。


「あん?」


 立ちくらみのような感覚に襲われる。成る程、これが毒か。大した事ないじゃないか。


「『解毒(アンチポイズン)』オニさん無茶しすぎや。死んでまうよ」


 オレの身体が淡く光り平行感が戻ってきた。よし『解毒(アンチポイズン)』は効く。オレはもっと戦える!


「なあにこの程度の毒、返って耐性がつく!」

「流石、戦士タスクですぞ。──この火は命なり、その揺らめきは癒しの力を持つ、『治癒炎(キャンドルファイア』」


 みなぎってきたー! 身体の底から力が溢れてくる気がする。両手に力を込めると急に左腕の圧迫感が無くなる。


【『ヘビの皮』を手に入れた】


手に握られていたのは肉厚のヘビでは無くペラペラのヘビの皮。


「チッ! 良いところだったのに」


「戦士タスク、出来れば『盗む』をしてから倒して欲しいですぞ。わたしに沢山のヘビ皮を!」


 左手に握りしてめていたヘビ皮をモウカに渡し、その手をギュッと握る。


「コソコソと盗む必要はない! でも、約束しよう。両手から(あふ)れるヘビ皮をモウカ、お前にやると。代わりにオレに敵をよこせ!」

「あれ? ちょっと効きすぎな気が……任せるですよ! あっちに一匹いるですぞ! ちゃーじ!」


 一匹か、オレの敵ではないな。お約束の飛びつき攻撃をかわし、着地したところを滅多打ちにする。


【盗賊ランクが二に上がりました】


 だから何だ! 邪魔なアナウンスは無視して、ヘビを狩る狩る狩る!

 時には咬まれ毒になり、解毒され回復する。ふとオレ何してるんだろうと我に返ったり、我に返ったと思ったら急に戦いたくなったりと紆余曲折(うよきょくせつ)ありながらも、オレ達はヘビ皮の山を築いていった。

タイトルは誤字ではありません。

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