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月花咲  作者: ディーゼル
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だいじななまえ

「では、この島について復習しましょう。」


梅は三人と一体の顔を見る。三人はもう真剣な顔つきになっており、梅の言葉を待っていた。


「ご存じの通りこの島は『人』や『妖精』のようにあらゆる種族が存在しております。そして、彼らは大きく分けて二種類の能力を持っているの。」


三人はうなずく。それを見て梅はよろしい、と続ける。


「まず一つ、それは種族としてもつ能力リースアビィリティ。これは人間なら〈道具の創造〉といったところかしら。私のような「妖」なら〈幻の具現〉。まあ、人間の上位互換かしらね。」


「ほんと、種族で大した差よね。しかも下位種の能力なんて上位種にとっては能力としてですらなく、所持してるしね。人間なんて下の下だから恩恵ないのにさぁ。」


鈴花が文句をたれる。梅は笑いながら


「ふふ、まあそう言いなさいな。上位なんて言っても階級で言えば上から『神』や『伝説』そして『人以上の存在達』、『人』、『人以下の存在達』の四種類しかないじゃない。そして、そこにいるのは人以下の存在にあたる『餓鬼』って訳よ。」


四人が自分を見る。どうやら自分はかなり弱いようだ。梅は続ける。


「そして二つ、個々がそれぞれ持つ能力プライベートアビィリティ。これは、名前の割にはそのほとんどが桜や彰人のように他者から教えてもらった能力を得るのであって、鈴花のように本当に特有の力を持つものは少ないのよね。何より、これに関しては発動しないまま亡くなるものもいるのよね。」


「ほんと、鈴花はレアだよな。」


彰人は鈴花に視線を向けた。鈴花はスルーを決め込む。


「で、そんなもんよね。授業とやらは。」


鈴花は姿勢を崩してこちらを見つめ、


「結局、この子の何がおかしいの?」


「確かにそこに触れられていませんでしたよね。」


桜が合わせると梅は困ったように


「『餓鬼』の《リースアビィリティ》は〈言葉を使える〉なのよ。この子達は主に人間の欲望からつくられる種族だから、そのほとんどが彼のように子供の姿で生まれ、その辺の子供と自由に遊び、一人になると死んでゆく。欲の内容によっては犯罪なんかも起こすらしいけど、それもたかだかしれている。要するにただの子供のいたずら、ガキのいたずらなのよ。そのためにこの種は言葉を覚えたのよ。」


「『餓鬼』でないという線はないのか?」


彰人が不思議そうに問う。


「『餓鬼』以外の人以下の存在で人型をとるものはいないから、その線は薄いと思うわ。となると二つ目の能力の方に答えがありそうなものだけれど。」


「つまりこの子は《プライベートアビィリティ》のせいで《リースアビィリティ》を失ってしまったということですか。」


「でもこいつの《プライベートアビィリティ》は足が速いか体力が多いのどっちかだろ?いくらなんでも子供にしちゃありゃありすぎだろうよ。」


彰人の言葉で他の二人もさっきの鬼ごっこを思い出して苦笑する。それほど頑張った覚えはないのだが。


「そうかもしれないけど、私はこの子の《プライベートアビィリティ》に条件があってそのせいで《リースアビィリティ》も発動しないのではないかと思うのよ。」


「要するに二つ目が鍵ってことよね。そうとわかればさっそくーー」


梅の言葉をまとめた鈴花がそこまで言った時三人と一体のお腹がなった。


「考えるのは明日にして、ご飯にしましょうか。」


梅が少し笑いながら言うと、鈴花と桜は台所へと向かった。




「今日は野菜だらけね。というよりここ最近ずっと。」


鈴花が嫌味を言うと彰人が


「お前鳥の足食ってたろうが!嫌なら食べなくてもいいんだぜ。肉だけ食って太っても知らねからな。」


「天ぷらにしてんだから大差ないでしょ。それにほとんどこの子が食べちゃったし、骨まで。」


売り言葉に買い言葉で二人がいがみあっていると桜が


「そういえば、この子はどう致しますの?ここで面倒見てさしあげます?」


四人とも野菜を頬張る自分を見つめて微笑んだ後、梅が提案した。


「それなら名前をつけてあげないとね。」


その言葉に目を光らせたのは鈴花だった。


「私!私がつけてあげる!異論があるやつは割と本気で張っ倒す!」


三人は少し驚いたが、まあいいかと目配せして鈴花に譲った。自分としても興味があるので内心楽しみに待っている。


「うーん、そうねぇ、せっかくだし...」


悩むこと1分くらいだろうか、鈴花ははっと顔をあげこちらを見つめこう言い渡したーー


「あなたの名前は『月花』にするわ!!」





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