室木 柴/狂枢亭 交吉『アサルト・オン・ヤオヨロズ』
【副題:なろうだからこそ出来る奇天烈な快作】
「なろう」には沢山の素敵な作品がある。ゆえに、レビュー祭りに大変興味があったものの、どれについて書くかとても迷った。
苦渋の決断として、私は三つの作品について語らせて頂くことにした。紹介させていただくものもそうでないものも、いずれも素晴らしい作品ばかりである。
まず今回、恐縮ながらレビューさせていただく作品はこちら。
『アサルト・オン・ヤオヨロズ』(作者:狂枢亭 交吉 さん)
平和に暮らしていた高校生・高砂衛介は異世界から現れた妖怪に襲われてしまう。そこで危うく死にかけた彼を救ったのは「怪異ハンター」を職とする、PIROという名の集団だった。
しかし安堵もつかの間、半ばムリヤリその組織に引き込まれてしまうものだからさあ大変。
ことの次第も解らぬままに“八百万の神々”との戦いに身を投じてゆく衛介と、個性豊かな少女たち────
……という趣のものを、バンカラ男子とジャジャ馬娘がちょっぴり硬派(?)にお送りします!
(本作には実在の地名・歴史上実在した人物などが登場しますが、物語はフィクションであり、特定の個人や団体への中傷を目的とするものではありません)
上記のあらすじは、作品のあらすじをほぼそのまま掲載させた頂いた。狂枢亭さんにはご許可をいただいて、感謝に絶えない。いつもありがとうございます!
さて、この『アサルト・オン・ヤオヨロズ』(以後、『A・O・Y』)について書かせて頂こうと思った理由は、主に三つ。
一つは純粋に面白いからだが、残り二つは数多の作品が流動するなろう界でもそうそうお目にかかれない挑戦作であるためだ。
なんと、この作品は現代日本を舞台にしていながら、本文が味と渋みが何とも癖になる「旧き語り」。決して悪い意味ではない。かつての文豪の作品を見てほしい。言い方こそ古めかしくはあるが、どれも独特の味わいがあって心地よいはずだ。この作品もそうだ。
百聞は一見にしかず。恐縮ながら、第一話より数文拝借させて頂く。
《世は太平にして徒然であり、人の天敵は人をのぞいて他に無い。常識が公を為し、これを牛耳る理屈があって、神々はその有を否まれていた。そして何より、まだ俺が普通の高校生を名乗って何ら偽りはなかったのだ。
そんな、去んぬる日々のことである。》
慣れないうちは少々難解かもしれない。だがニュアンスでも十分に理解できる。これは俗な言い方を借りると、「何気に凄い」ことではなかろうか。
現代をこうした口調で語るというのも面白い。作者はまだ学生の身分らしく、その若さであえてこうした手法をとるのも非常にユニークだ。
しかも、この作品はただ奇をてらった作品ではない。
読み進めるうちに作者の並々でない民俗学や考古学への関心をうかがえる。詳しい内容を語ればネタバレになって、興味を持ってくださった方を興ざめさせてしまいかねないために詳しく申せないのが悔しい。
兎に角、現れ出る妖怪や荒ぶる神。そこに実在の伝説や、伝説とは異なる「作中における事実」を織り交ぜることにより、如何にも「それらしく」なっている。
例えば、ある土地における日ノ出の時刻を、実際のものを調べて作中で描写するなど。それだけで作者がどれだけ熱心に書き、調べているかがわかるだろう。
繰り返すが、現代物をこの文体で行うというのは非常な挑戦だ。はっきりいって、もしプロ作家なら「やりたい」といっても十中八九却下されかねないのでは?
この怪作は、その独創的で思い切った挑戦ができるステージを存分に活かした、実に小説家になろうサイトならではの作品だと思った。だからこそ、こうして紹介させて頂いた次第である。
ストーリー展開もスピーディだ。物語が停滞することはほとんどない。
登場人物たちも、いずれも濃い個性を携えている。一方で、どこかで
「こういう子いそうだなあ」
というリアルさや俗っぽさを振りまいていて、まるで友人のような親近感を覚えるのだ。
海外ネットサイトの野次馬じみた活動や組織内外で渦巻く謎。スリリングな物語は飽きるということがない。
最新話に追いつく頃には、すっかりこの奇妙な味が癖になっていることだろう。
古き良き、外連味の効いた渋みと、新しく切れ味鋭い、パワーがありスリリングなストーリー。
一見矛盾しているようでも、突き通れば立派な芸。
この気持ちのよい怪奇伝を、是非ご照覧あれ。
『アサルト・オン・ヤオヨロズ』
作者名:狂枢亭 交吉
作品URL:http://ncode.syosetu.com/n3029ca/