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なろうレビュー祭り2015  作者: レビュー祭り運営委員会
短編部門PartⅠ(3作品分)
13/43

珊瑚/松井修平『潮の町』

 その変化を人は成長と呼ぶのか、それとも狂気への墜落と取るのか──


 潮風吹き付ける港町の片隅で、少年は運命的な友と出会い、考え、自分を見つめ直していく。

 彼が失ったものと引き換えに手に入れたのは何だろう。この世界で生きていくことへの覚悟か、それとも色を失った場所で生きてはいけないという絶望か。


 病的ともとれる鬱々とした雰囲気の緻密な描写。古めかしい扉のような質感のその文章は、短編の文量としてはさほど多いというわけでもないが、読後感はかなりずっしりしていて満腹になる。


 普通であることと異常であることは実は紙一重で、そこに大差なんてものは存在しないのではないか。私たちは普段からいわゆる「狂気と普通」の狭間に住んでいて、何かのスイッチを押した瞬間、押された瞬間にどちらかへ転がり落ちるのではないか。そもそもその線引きは誰がしているもなのか。一般論とはどのようにして決まっていくのか。


 読んでいる時にふとそのような考えが過ぎった。


 純文学好きや哲学的思考回路の持ち主にオススメしたい。自分の中の「全て」が無に帰した時、あなたはどんな選択をするだろうか。


『潮の町』

作者名:松井修平

作品URL:http://ncode.syosetu.com/n7236cc/

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