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珊瑚/Ria『雨中』
雨、と聞くとそれだけで憂鬱になる人もいるだろう。
どこへ行くにも傘がいる。歩けばどこかしら濡れるし、靴が水たまりに浸かった日にはちょっと、いやかなりブルーな気分になる。カバンの中の大事な書類がびしょびしょになってしまっていて、泣きたくなるような思いをしたことがある人も少なくないはずだ。
でもこの作品を読むと、「ああ、雨もまあ、悪くはないな」と思ってしまうからすごい。それどころか、「雨って、いいな」と感じてしまうのだ。
この作品はバレンタインを題材に、雨の中出会った二人の不思議な関係を描く恋愛短編小説だ。登場人物どうしの会話や主人公の思考には哲学めいたやりとりなどもいたるところに見えて、読後の満足度を上げている。
思い切ってチョコレートを渡す瞬間の彼女が、なんとも可愛らしくていじらしい。
タイトルの「雨中」の読みを「宇宙」とリンクさせて読んでしまうのは、作者の意図だろうか、それとも、私の勝手な深読みだろうか。
『雨中』
作者名:Ria
作品URL:http://ncode.syosetu.com/n4615cn/




