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なろうレビュー祭り2015  作者: レビュー祭り運営委員会
間章1
10/43

【コラム】ジョシュア『汝ら、美書家であれ』

 このコラム、ひいてはレビュー祭りを楽しんでいる方の多くは「文章を嗜む者」であるだろう。何を当たり前なことを、と思われる方がほとんどだと思うが、時折このことを忘れてしまうことはないだろうか。

 たとえばである。食事に無頓着になることはないだろうか。コンビニの、あるいはファミレスの食事で良いと思うことはないだろうか。何もそれが悪いことだということではないが、食事が単にカロリーを摂取する行為としか認識しなくなるときはないだろうか。

 食事と読書では、確かに重要度が違うだろう。食事は生命を維持する行為であり、こだわっている場合ではないこともあるかもしれない。しかし、作家生命、読書家生命という言葉があったとして、読書とはその食事にあたる行為ではないか。長生きしろとは言わないが、質の良い生き方とはすなわち日々の最低限の要素である衣食住を充実させることだと私は考えているから、読書という行為の重要性について今一度述べたいと思う。

 食事にはどのようなこだわりがあるだろうか。味だろうか。材料の産地だろうか。あるいは食べる場の雰囲気であろうか。もしかすると、共に食べる相手かもしれない。そのどれも重要だ。しかしどれを重視するかは人それぞれである。

 一つ一つを吟味すると切りがないが、読書にも同じように味、産地、雰囲気、同士を重要視することは紛れもない事実だろう。この要素のうちのどれかを重視して読書生活をしている者は多いと思う。あるいは、一つを重視して他をおろそかにするかもしれない。それもいいだろう。すべて揃えるのは至難の業である。

 しかし、このどれもをおろそかにしてしまえばどうだろう。読書が苦痛になることもあるのではないだろうか。誰かに押し付けられて、望まぬ環境、決められた解釈の中で読書をすれば、たちまちその生命を縮め無意味なものにしてしまうだろう。選択することの自由がないことは、たちまち離れてしまうことを意味する。「好き嫌いはよくない」と言うが、そうして強制して自分に含んだところで、如何ほどの喜びがあるのだろうか。

 読書とは自由でなければならない。自由な中でこだわりがなくてはならない。でなければ読書の道というのは開かれないように思う。

 しかし、読書を食事に喩えたように、読書する中でも偏食であってもならない。偏食とは、その文字の通り偏った読書をすることである。これが意外なことに、自分ではわからないのである。私自身、勉強不足の身であり、また偏食的な読書をしていると思うが、そんな私でさえ他人の偏食的な読書が気になることがある。

 不思議なことに、この偏食的読書は直らないのである。肌に合う合わないも含め、思い込みや先入観、もっと言えば決めつけなどによって突き放してしまうこともある。古典がさっぱりわからない者もいれば、ライトノベルとはなんぞやと思う人もいる。日本作家、海外作家というくくりもあるだろう。ミステリー嫌い、恋愛小説嫌いだってある。こだわりの裏には、そうした排斥的な思考が潜んでいるのは、否定できない。

 では、世の美食家たちはどうやって新たな店を開拓しているのか……と聞かれれば、一番は美食家たちの語り合いであるだろう。どこそこの何がうまかったか、存分に語り合うのである。または彼彼女は信頼できるから、食してみようかと考えるのである。読書経験の多い者を信じ、舌の合う者を信じるのである。

 しかし、こと読書においてそれは難しい。特にこのネット界隈では難しいのである。あまりに数があふれているし、あまりにもフェチズムがあふれているからだ。その中で自分に合うものを探すのは、本当に難しいのだ。

 そこで私は願うのである。

 汝ら、美書家であれ。

 その読書にこだわりを持って生き、楽しんで読書家生命、作家生命を生きてほしいのである。語ってほしいのだ。何も、細かい文言はいらない。美味いワインの前で、どこそこのどういう土でどういう栽培方法が行われたのかだとか、どこかの王族が好んでいただとか、そんなものはまったくもっていらないのである。ただ「美味かった」とさえ言ってくれれば、その感動を思う存分に伝えてくれさえすれば、美書家なのである。

 何よりも私のために、語ってほしいのである。

 お気づきだろう、レビュー祭りとはそういう趣旨の企画でもある。作品への愛を語り、その愛に心を動かされようとする人間の集まりなのである。

 こだわりを持ち、語る口を持ち、聞く耳を持つ。そんな美書家であってほしいと、私は切に願うのである。


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