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異世界勇者が来て100年後の物語  作者: アワプレ団
0章 彼らの日常
3/3

0-2トリスタ家の日常

やっぱあいつ、厄介だな。

爆煙の奇襲を見て分かっている通り奴は奇策めいた動きをするのが得意だ。それだけに警戒心が高まる。


あいつがこっちに向かって走ってくる。

俺は緊張を高めて、あいつの動きに注意を向ける。

あいつとの距離は目算で約5メートルはある。あいつがただ走ってくるならばあと6歩で俺の十手の間合いに届く。

が、始まってすぐに仕掛けてきたあいつの得意技<ボンバーキック>を考えるとこんな距離は直ぐにでも埋まる。だから、俺はいつあいつのキックが出てもいいように構えた。次に奴のキックが来たら、キックを受け流してカウンターの肘を当てれば終わらせる。

来るならこい……そう思って十手を握り締めていた。

あと、3歩。


俺は緊張を高め、奴の動きに注視した。魔力を練ってる様子もない。<ボンバーキック>は来ない。


あと、1歩――――

その瞬間あいつは俺の視界から煙のように消えた!

一体何処に行った!? 爆発魔法を使った痕跡もなかったぞ!?

と頭が混乱していたが、不意に右から敵意を感じ、俺は無意識に十手で攻撃を逸らした!


「っ!?」


目の前にはあいつのキックが迫っており、俺は咄嗟に左に首を傾けて避けた。

(なんつー不意打ちだよっ!?)

だが、これはチャンスだ。あいつは俺の顔面に攻撃するために飛び蹴りを放っていて隙だらけなのだ。今なら一撃当てられる。

俺はあいつの横っ腹に十手を叩き付けようと全力で振り上げようとして―――奴の不気味な笑みを見た。

ドォン!!!

瞬間至近距離から衝撃と轟音が来た。

俺は気付けば横に吹っ飛んでいて、地面に着地すると同時に横受け身をとって起き上がった。

立った瞬間右耳がキーンと鳴り、右肩に痛みが走った。

そこで、俺が吹っ飛んだ理由に理解が出来た。

(……あの野郎足から爆発魔法を放ちやがった)

どうやらトリスタは俺がキックを避けることを予想して足から爆発魔法を炸裂させたようだ。それが出来ることは開口一番に使ってきた<ボンバーキック>を見ても分かっていた。だから、あのときは十手で防いでいたのだが、さっきのキックには不意を突かれ、つい最小限の動きで避けてしまった。そのせいでさっきの攻撃に気付くのが遅れてしまった。

だが、問題は<ボンバーキック>ではない。


「俺としたことが……まさか<欺歩(トリックウォーク)>を使ってくるとはな……」

「俺らしい技だろ?」


カルネとほとんど変わらない身長をした少年はこちらをニヤニヤと笑っていた。

<欺歩(トリックウォーク)>。それはトリスタが時々見せる曲芸歩術の一つだ。<欺歩(トリックウォーク)>は一見横に移動しているように見えるのに実は前に移動していたり、前に向かってきているはずなのに後ろに下がっていたりする特殊な移動術のことだ。この技は俺みたいなカウンターを狙う奴や間合いを注視する奴にはよく効き、つい反応させられてしまうのだ。

トリスタはこの技をかなり上手く使いこなしており、隣で戦っている俺でも見破るのが難しい。


「厄介な技だ」

「フッフッフッ」


こういう技があるからこいつは厄介なんだ。普通に戦っていたらまずやられる。全く食えない奴だ。

だが


「二度目はない…」

「まあ、そうだろうな」


1度その技で仕留められなかったのが運のツキだ。確かに奴の<欺歩(トリックウォーク)>は見破るのは難しい。だが、この技には一つ弱点がある。

それは方向がけっこう限られていることだ。

実は<欺歩(トリックウォーク)>は敵を欺くのに適した動き、タイミングというのがあり、それから外れると途端にばれて失敗する。そのため、この技は使うのにけっこう神経を使う。あいつは事も無げに使ってくるがこの技を使うとき一瞬だけ注意が散漫になるので、そこで攻撃されてしまうときもある。だから何度も使えないのだ。

さっきはやられたが、奇策というのは所詮初見殺し。一度分かってしまえば簡単に対処出来てしまう程度のものだ。


「…チッ。仕留めきれなかったか」


さっきの奇策は自信があったのか意外と応えているようだ。それを見て俺は十手を握り締めて、しっかりと構えてから指で挑発した。


「もう終わりか?」


それを聞いたトリスタは少し顔を歪ませてから、手をあげた。


「はぁ、止めだ止め。降参だよ」

「なんだもう終わりか?」

「ああ、終わりだよバーカ」

「バカとはなんだバカとは」

「だってお前攻めてくる気ないじゃん」

「まあ、そうだな」


何を当たり前のことを言ってるんだ?俺はアタッカーじゃないんだぞ?

そんな俺を見て、トリスタは渋い顔をした。


「お前さぁ。接近戦しようとか思わねぇの?」

「俺の戦い方は元より守ることだ。タンクは必要以上に攻めてどうする?」

「そういうと思ったから止めたんだよこの石頭が」

「タンクは堅実な方が安心できるんだよ」

「これは団体戦じゃなくて個人戦だぜ?」

「なに言ってるんだ?今やってるのは修行だぞ?」


そう言ったらトリスタがすっごい呆れた顔をした。


「あー…お前って奴は、本当に頑固だな…」

「頑固で悪かったな」


こうして奴と俺の試合が終わった。




「…あれ?もうおしまいなの?」

二人の試合は呆気なく終わった。というか突然過ぎて少し不満が残った。けっこういい試合をしていただけに。これからって時に止めちゃった。

トリスタさんの奇策、もう少し見たかったな…。

そんな不満気な顔をしているとトリスタさんが近寄ってきた。


「よっ。終わったぜ」

「ぶー」

「なーに、顔膨らませてんだ?おりゃうりゃー♪」

「ちょ!や、やめっ、あははははは!」

脇はダメです!や、止めてください!

「はっはっ。そんな辛気臭い顔はカルネちゃんには似合わんなぁ? ここかぁ?ここがええのかぁ!?」

トリスタさんが邪悪に笑いながらおっさん臭い発言して私の脇をくすぐり続けてました。というか私、脇は本当にダメなんですってば!

「や、止めてぇ!」

「あっはっはっ!」

「あ、ああぁぁあああ!!!」

顔を真っ赤にして笑う私。止めないトリスタさん。

く、くぅ!そろそろ止めないと天罰が下りますよ!


「こらっ!トリスタ!」

スパーン!

「ぁいてぇー!!」

ほら見たことか。止めないからシルフィ姉さんに怒られる。

というか、シルフィ姉さん。なんか生臭いにおいがするんですが一体何で叩いたんですか?こっちを振り向きたいけど、なんか息が苦しくて無理。


「いってぇな。なにすんだよ!」

「なにすんだよじゃないわよ!女の子が止めてって言ってるのに止めないあなたが悪いんでしょうが!」

「だからって羽鰹はねぇよ!」


羽鰹。羽の生えた鰹で、鰹よりも堅く身が引き締まっている魚の魔物。

下手な盾よりも堅いためこの鰹で作られた装備品もあったりする。

個体によっては鉄で殴るより痛いこともある。

今日、鰹が安かったのかな…。


「朝市どうだった?」

「魚が安かったわ。エイもおまけしてくれたし今日は魚料理になりそうかな」


エイ?エイを食べるの?

嘘だよね?いや、本気(マジ)


「そかそか。そいつはよかった」

「ほんとに感謝してる?ちょっと疑問…」

「邪推すんなよ。朝忙しいのによく行ってきてくれるのには本当に助かってるんだから」

「…それもそうね。さて、そろそろ昼になるしご飯にしよっか」

「もう出来てるのか?」

「出来てるわよ。だからここに来たんだけど」

「そうか。じゃ食べに行こうそうしよう」


なんかこれだけ聞いたら夫婦みたいに聞こえるんだよねこの二人…。

というか、シルフィ姉さんが家庭的過ぎるだけなんだけど。


ふぅ、そろそろ歩けるくらいに回復したかな?

私はトリスタさんから離れ、シルフィ姉さんについていった。




私達は昼御飯を食べるため食堂に向かった。

この家の食堂には人が沢山来るので結構密集するので、なるべく速く行った方がいいのだ。

そんなわけで昼食はうどんだった。

どうやら生地が盛大に余っていたらしい。

だが、この家のうどんはただのうどんではない。

トッピングにバリエーションがあり、明らかにこれは食べ物なのか?と言いたくなるようなトッピングが着いているものがあったりもする。

そういうものは大抵ゲテモノなので、私は食べない。

というわけでトッピングにエイの唐揚げ、お揚げ、紫蘇のうどんを選んだ。

エイってなんか癖のある味なんだね。あと骨も食べられるんだね…。私びっくりだよ…。

と、エイの唐揚げの摩訶不思議な食感と味を堪能していると隣に鋼さんが座ってきた。


「隣、座るぞ」

「どうぞ…」


鋼さんは何を選んだのかな。そう思って覗いてみると…。

トッピング:ブルーフェイス(毒植物。食べると顔が青くなるほどに腹を壊す)、イビルファイア(毒植物。食べると魔力が暴走する魔炎病にかかる)、トゲッホネ(魔物。骨も食べられるのだが中途半端に硬いせいで口の中が怪我をする)、ホルルトトマト(美味トマト。グルメなトマト喰らいが褒め称える他とは訳が違うトマトなのだよ)。

……。前三つがおかしいよ!

この人……ご飯食べているときですら修行するんですか?

どこの修行僧ですか!

というかなんですかその真っ赤なうどん(赤いのはトマトのせい)!あと麺が黒いんですけど!?

戦慄する私の前で鋼さんは知らぬ顔してそのままもくもくと食べていった。あ、ありえない…。


「おー!相変わらず料理とは思えん料理食べてんなー!」

ぽけっとしているとトリスタさんの声が後ろからした。

ふう、この口振りからして流石にトリスタさんはまともな料理を…。

「お前の摩訶不思議丼に比べればましだと思うが……」


え、なにその台詞。

「摩訶不思議丼?それは一体なんのことなの?私はこの時、既に分かっていたのかもしれない。それでも振り向けばまともな料理があるのではないかと一縷の期待をしていた。しかし、私が見たものはそれを―――」

「ちょっとトリスタさん!なに地の文を読んでるんですか!」

あと、やっぱりトリスタさんのもまともなうどんじゃなかったよ!

なんかうにょうにょ白い麺が蠢いているし!

しかも、どういう無駄な技術を使ったのか唐揚げが墓から出てくるゾンビの手みたいな形で突き刺さってるし!

何したらそんなろくでもないうどんが出来上がるんですかー!


「はぁ、この前のオムライスといい、豚汁といい、お前は料理に何を求めているんだ……」

オムライスは分かるけど豚汁は何があったの。

「俺か?それは簡単だぜ鋼?」

「そいつはなー」とやたら引き延ばすトリスタさん。

たぶんアホな発言をすると思うので私はうどんを食べて無視することにした。


ズルズル……。

「料理は夢だ!」

「何が夢だ。氷の像作るときにフレアアイスとか使ってやたら存在感の高い第24代魔王像(吸血鬼)作る阿呆が」

「あれは凄かったなぁ。まさかフレアアイスの魔力で動くとはなぁ」

「ど阿呆。後始末とか大変だったんだぞ。ズルズル…」

ハフハフ…。

「で、どうよ?ゴブリンの方は?」

「悪いよ。あいつら悪知恵つけてきたのかやたら巣を作るのが上手くなってやがる」

「えー、やだよ俺。第42代魔王(ゴブリン)の再来とか。あいつらゴキブリ並みにうぜえんだもん」

「なんでお前が魔王のこと詳しいのか甚だ疑問なんだが……。というかまだ歴史の授業にそんなのあったか?」

「独自で調べたに決まってるじゃん」

モグモグ…。

「また魔界に行ってきたのか」

「魔界は儲かる。魔界は面白い。魔界はロマンだ!」

「そうかい。つか、誰が魔界に連れていってんだよ?」

「ロマノ姉ちゃんだけど」

「だから誰だよ…」


なんか平和だ…。

おかしいうどんなのに普通に食ってる。鋼さん、トゲッホネ食べて口の中痛くないんですか?トリスタさん、その寄生虫みたいなうどんは一体なんなんですか?食べて大丈夫なんですか?

この家、突っ込みポイントが多すぎる…。


しかし、うどんおいしいなぁ。やっぱり麺類職人がいるからかなぁ?

このうどん、こしがあって美味しい。出汁もいいし。

でも、あの人達のうどんおかしいのは不思議なんだけども。


「ところでさぁ、俺昨日ピクニックしに地獄谷に行ったんだけどさぁ」

「それでどうしたんだ?」

「洞窟の中に人苛めてたアッシュドラゴンに出会ったんだよ」

「喧嘩吹っ掛けたんじゃないだろうな?」

「大丈夫だ。懲らしめた」

「鬼退治か」


鋼さん突っ込みどころはそこじゃないと思います。絶妙ですが。


「お前は昨日ゴブリン退治行ったんだろー?」

「吸血鬼も適当に退治しといたよ」

「女の子いたか?」

「いない方がましだと思うが…」

「ゴブリンはな。吸血鬼は?」

「食われてたよ」

「そっか」


冒険者の会話すっごいドライ!

あと、なんか暗いよ!


「あと一年だな……」

「そうだなー……」


なにが?


「一人くらい結婚しねぇかなぁ…」

「赤ちゃん見たいのか?」

「まあ、それもあるが、そいつは諦めてる」

「魔物辺りなら出来るんじゃないのか?」

「モン娘か?可能性としちゃなくもないが、幸せに出来っかな…」

「問題はそこか」


なんかいきなり将来語ってるよこの二人…。


「まあ、なるようになるだろ。ごっそうさん 」

「そうだな。美味麗しゅう。そんじゃゴブリンでもやるか」

「いつも通りだな…」


あ、つい、夢中で聞いちゃった。

というか、周りの人食べるの速くない!?

気づけば食堂はかなり人が減っていた。


「もっ!もっ!」

「カルネちゃん、急いで食べなくてもいいのよ?」


シルフィ姉さんが食器を洗いながら私の様子を見ていたらしい。

慌てて食べる私にお茶(麦茶)を私にくれた。

喉が詰まりそうだった私には天の恵みのようであった。


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