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異世界勇者が来て100年後の物語  作者: アワプレ団
0章 彼らの日常
2/3

0-1カルネの休日

2週間ずつ投稿するよー


私はカルネ。

何処にでもいる赤い髪の女の子です。

今日はポニーテール!

そして、白いワンピースを着ています!


来週から夏休みなので私はうきうきします!

やったー!


「カルネー? ご飯よー?」

「はーい!」


私はご飯を食べに居間に向かった。




町だ! 屋敷だ! 魔法だ! お兄さん達だ!


「なんか最後のは違うような気がするぞ?」

「そうですか?」


ここは知っての通り、勝手知ったるトリスタさんの家です。

トリスタさんの家はとにかく広いので、たくさんの人が入っても大丈夫です。

今、鋼さんが十手を持ってお庭でバトってます!


「ハガネー! 5連勝目だぞー! がんばれよー」

「あー、はいはい」


相手は犬の獣人のタロメさんでした。

タロメさんは大人の獣人ですが、鋼さんの方が背が高いためちょっと、威厳がないように見えます。

しかし、獣人を相手に勝つことなど出来るのでしょうか?

ほとんどの獣人は、人間の2倍の身体能力を誇ると言います。

それだけに強く、速い。

鋼さんがそれを知らないはずがありません。

だとするならば、鋼さんはそれでも勝つ力があるということ。

一体、どれほど鋼さんは強いのでしょうか?


「じゃ、やるか」

「では、頼む」


お互い言葉少なめに勝負を始めました。


「……」

「……」


しかし、お互い構えたまま微動だにしません。

何をしているのでしょうか?


「ほう……静かな立ち上がりだな…」


隣でトリスタさんがそんな呟きを漏らしました。

トリスタさんはトリスタさんでこの勝負に何かしらの思いがあるようです。

私は戦闘が苦手なので、この辺りは分かりません。

しかし、何となくですがピリピリした緊張感が場に漂っているのは分かります。

この緊張感の中だと私も落ち着きませんでした。


開始から2分くらいが経った頃でしょうか?

鋼さんの姿が突然ぶれたかと思うと、鉄と鉄が激しくぶつかったような甲高い音が鳴り響きました。

タロメさんがいたところを見ると、既に鋼さんがタロメさんの懐に入り、背負い投げのモーションに入っていました。


ーー速い。

そう思うより速く、鋼さんはタロメさんを地面に叩き付けて十手を喉元に向けていました。


「勝負あり、だな」

「凄い……」


鋼さんは本当に強い。そして、速い。

流石に、戦闘学校の生徒だけのことはある。


「あいつはやっぱり接近戦は強いな」


そんなトリスタさんは悪戯好きの好奇心にまみれた眼で鋼さんを見て、楽しそうな笑い声を上げていました。

そして、その笑みのままトリスタさんは鋼さんの近くまで行き、こんなことを突然宣言しました。


「ハガネっ! 俺と久々にバトろーぜ!」


トリスタさんは物凄く愉快そうに、意地の悪い笑みを浮かべていました。

それはもう楽しそうに。そして、面白そうに。

突然の挑発を受けた鋼さんはというと、ちょっと意外そうな眼をしてから、少し間を置いて「いいぜ」と了承していました。


というか、トリスタさん?

あんなに強い人と戦おうなんて流石に頭がおかしいんじゃないですか?

あの獣人ですら、圧倒した鋼さんですよ?

勝てるわけないじゃないですか!?


しかし、私の心など知らない二人は既に戦闘モードに入っていました。


「手加減はしないからな」

「するだけ無駄だぜ!」


楽しそうにファインティングポーズを取るトリスタさんと落ち着いた感じで構えを取る鋼さんはお互い向き合いました。

そして、トリスタさんが笑みを深めた…


ドォン!


始まりは一瞬の轟音からでした。

気付けば、トリスタさんが槍のように突き刺すような蹴りを放ち、それを鋼さんが十手で受け止めていました。


「ありゃ……あっさり止められちまったか」

「随分速いが……てめぇの奇策めいた動きは最初から警戒してるんでな」

「そいつは残念だ、な!」


トリスタさんはその場で回転し、回し蹴りを放つ。

それを鋼さんはしゃがんで避けて、顎を狙って十手の柄でアッパーのように跳ねあげた。


「おっと!」


トリスタさんはバク転して避け、距離を取った。

鋼さんは追撃せず、ただ構えた。


「やっぱ、接近戦は不利か」

「当たり前だ…。少なくともこのくらいで負けはしない」


しかし、そう言ってるトリスタさんは、ニヤニヤと笑っていました。何が楽しいかは分かりませんが、まだ負けを認める様子は無さそうです。

もしかすると、トリスタさんは何か策があるのかもしれません。


「んじゃま、こっからエンジン駆けますかねぇ!」


エンジン? たまにトリスタさんは訳の分からないことを言うので困ります。

ただ、さっきの宣言をしたトリスタさんの瞳には、強い意思を感じました。

強く射抜くような鋭い瞳。

それは、私の心も揺れ動かしました。


「行くぜ?」


トリスタさんは右の手の平を鋼さんに向け、左手を後方に置き、腰を思いっきり落として、まるでカンフーのような構えを取りました。


「……『鳳凰の構え』か」

「ああ、知ってんのか」

「そりゃな…」

「なら、遠慮なく行かせてもらおうか?」

「勝手にしろ」


トリスタさんは構えを崩さず、前ににじりよるように鋼さんへと迫り出しました。

あの構えから何かしらの技が出るようです。

鋼さんはトリスタさんが近付いてくるのをじっと待っていました。

隙を窺うようにじろりとトリスタさんを見ているようでした。


やがて、トリスタさんの動きが止まりました。

十手の間合いから30センチくらい遠い間合い。

十手のカウンターを警戒しているような距離です。

そこから、どうす…。


ドォゴォードォン!


え、ええっ!?

一体何が!?


立て続けに色々起きたせいなのか何が起きたのか全く見えませんでした。そう、気付けばトリスタさんと鋼さんが砂煙の中で少しだけ戦いを繰り広げ、不利を悟ったトリスタさんが後ろに下がっていたのです。


トリスタさんに後で教えてもらいましたが、トリスタさんは最初地面に向けて魔法を放って、爆煙を巻き上げたそうです。

そして、相手の視界から攻撃の手を隠し、爆煙を利用してギリギリ鋼さんが視界で自らの姿を捉えられない(・・・・・・・)距離まで近付き接近戦に持ち込んだ。


鋼さんはその場からすぐには動けない構えだったために、近距離でやられ、この奇策にまんまと引っ掛かってしまった。


この時トリスタさんは眼にも止まらぬ右ストレート、飛び蹴り、蹴り落としの三連攻撃を放っていたようです。

これは後で鋼さんから教えて貰ったけれど、トリスタさんはどうやら小石によるフェイントまで掛けていたらしい。

全く抜け目のない人です。


ですが、トリスタさんがここまでの奇策を放ってなお鋼さんはそれを全て対処しきっていました。

鋼さんがやったのは小石の牽制攻撃を十手で弾き、右ストレートを十手の柄から離した右手で受け、飛び蹴りを十手で横に逸らし、最後の蹴り落としを流れるように十手で弾き飛ばした。

まるで、その動きを読んでいるかのようでした。


鋼さんの戦い方は、基本的に壁役(タンク)だそうです。

その中でも鋼さんは回避盾と呼ばれる壁役で、敵を引き付けながら敵の攻撃を避けたり防御するそうです。

防御専門なのに盾を持たないとはどうなのかと私は思います。


しかし、鋼さんは強い。

獣人すら越える戦闘能力を持っているだけのことはあります。


「やっぱつえーなハガネ」


トリスタさんは笑みを浮かべながら、そう声を漏らしました。

その声は未だに何処か楽しげで、面白そうな声色をしていました。

まだ何か奇策があるのでしょうか?


「流石に、俺らの壁役(タンク)を買って出るだけのことはあるわ」

「…そいつはどーも」


鋼さんはさっき以上にトリスタさんを警戒している模様です。

それはつまり、さっきの奇策がそれほどまで鋼さんの警戒心を煽ったという事実になります。


強いのはどうやら鋼さんだけではなく、トリスタさんもそうみたいです。


「さてと…お次はっと」

「…………」


トリスタさんは悪戯好きな眼をして、徐々に鋼さんに近付いてきます。

警戒心を高める鋼さん。

果たして、どちらが勝つのでしょうか?


しゃ!




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