プロポーズから始まる青春恋物語とは
途中視点が変わります。
アホな男とツンドラな女の絡み合いが書きたかった。反省はしてるが後悔はしていない。
※主人公関西弁ですが、喋り以外はほとんど標準語です。
あなたは、運命を信じますか?
幼い頃、祖母に聞かされた『運命の赤い糸』というお話。
運命の相手とは赤い糸で繋がっていて、出会ったら恋に落ちてしまうんだと。
でも、世界中の総人口は目が眩むような多さで。そんな中で、運命の相手を見つけられるなんて事、不可能に近いのだと。
だけど、祖母は見つけられたんだって。それが祖父なのだと。
それを聞いて、俺はひどく感動した。
―――ああ、自分も。
自分も、運命の相手を見つけたい。
「―――と、いうわけなんです! お嬢、結婚して!」
「無理」
「ぐぁああああああああああああ!! テラちゃん! どうしよう!! わし、これで通算48回目の失恋です!!」
「そうか。とりあえず、お前は早く職員室に来い。そして反省文を書け」
「いや話を聞いてお嬢。絶対幸せにするから。自信あるから」
「お前も話聞け、空蝉」
高校生活2年目。青春真っ盛りな17歳。それが、わし―――空蝉である。
キラキラ輝いてるだの、珍しいだの、むしろ恥ずかしいだの酷い言われような名前を持っている至って普通の男子高生である。
一人称が可笑しいって? 気にしてるから言わんでくれ。小学校3年まで関西在住で、未だに父は関西弁で毎日仕事頑張ってるから。父超頑張ってる。
そんな立派な一家の大黒柱(※ただし、母にすぐ折られる大黒柱)のお蔭かせいか知らないが、方言が未だ健在である。父も一人称が昔「わし」だった。今、「俺」を使ってるけど。裏切られたけど。
まぁ自分の話はいいか。問題は目の前に居る美少女―――もとい、天使、否、“お嬢”である。
出会いは高校1年生。初々しく金髪で一発で問題生徒名簿に入った強者だった時代―――掃除サボって買い食いして、テラちゃん(担任)にばれて説教されている時に見つけた。一方的に。
説教されてる中、食べてたアイスを地面に食わせてしまう程に魅入ってしまった。
青みがかった黒髪。少しつり目の凜とした大きな目。きめ細やかな白い肌。華奢でありながらも出るところは出てる見事なプロポーション。モデルのようである。むしろ、ホンマに人間かいィ! と関西人の血が騒いでしまった。
あんなに完璧だと言える造形を持った少女がこの世に居るだろうか。いや、居るまい。
そう、彼女は凛々しく気高く、正に『高嶺の花』と呼ぶに相応しい姿見だった……が。
何処か、寂しそうにも見えた。
わしの気のせいかもしれん。だけど、気になった。ただ気になった。そんだけ。
「テラちゃん、あの子見てみ。アカン、エライ別嬪や。関東ヤバいな」
「いや今お前に説教してるんだけど、お前何聞いてたの?ねえ何聞いてたの?」
「ああああ、彼氏居るかな。居らんかな。中学生かな。ちょっとテラちゃん待って。わし、ちょっと声かけて来る」
「馬鹿なの?お前馬鹿なの?」
善は急げ。急がば回れ(※使い方違います)と言うじゃないか。
早速声をかけてあわよくば嫁にしたいと思う。
地面に落ちたバニラアイスに蟻が群がる中、すぐに駈け出した。あの美少女に話しかけたい。嫁にしたい。そんな真っ直ぐで素直な思いから―――のはずだった。
「あ―――」
話しかけようとした瞬間、その少女の寄り掛かっていた柱の物陰から背の高い少年が現れた。
見たところ、イケメンである。人類の敵である。駆逐してやる!
「……」
「……」
テラちゃん無言。ほら、説教進めろよ。進めてくれ。
「ウェ―――――――――――――――――――イ!!ウェ―――――――――――――――――――――――――――――――――――イ!!!!!」
「とりあえず、後で反省文な」
「アアアアアアアアアアアア」
何て鬼だ。悪魔だ。テラちゃんは人間じゃない。
そんな初恋は1分も経たぬ内に終わった。
そのはずだった。
高校2年生に上がった時、再度彼女と出会ったのだ。これは運命である。宿命である。
出会いはそう、廊下でぶつかった。
わしは赤点を取った。補習だった。イライラして激おこし過ぎて、周囲を見なかった。
『ドチクショウが……! ロイヤルストレートフラッシュ(10点、11点、12点、13点、1点)取っただけやないかい……!』
『……』
『テラちゃんめ……名前の由来が“寺崎”って名前からじゃなくて、頭がテラテラ輝いてるからだって言ったろkッグッフォォ!!』
『っあ』
まさか、突然腹に突撃、或いは頭から突っ込んでくる奴が居ると思うか。わしは少なくとも思わんかった。
鳩尾喰らって、フラフラしながらもわしは突撃した張本人を見やる。この時の目つきはどこぞのヤーさんよりも凄まじかったと思う。
『……悪い。周りを見ていなかったんだ。怪我は?』
とても澄んだソプラノボイスが耳に通った。
爛々とした大きな目には、目を見開いて驚く顔をしたわしが映っていた。
青みがかった長い黒髪。
あ、これヤバい。
そう思ったが、昔から自分の行動は止められない。
『結婚して下さい!!!!!!』
~
「そんな昔の話でもないけどな」
「ええやん。誰かに語りたかっただけや」
輝かしいお嬢との出会い話を、クラスメートにこれでもかと語ると、何だか項垂れるように机に突っ伏したまま適当な相槌を打っている。解せぬ。
あ、ちなみに“お嬢”という呼び名は、お嬢自身「気安く呼ぶな」と言って来たからです。何という拒絶反応。だが諦めぬ。
教室内は相変わらず騒がしく、こんな他愛もない会話は誰かに聞かれることはなく、安心した。
「そんで? その愛しのおじょーさまとはどうしたの?」
「テラちゃんに捕まったから、泣く泣く別れた。後でメールしとく」
「……メアド知ってるんだ」
「教えてもろてん。明日の映画何時何処で待ち合わせにしよかって話し合ったし」
「…………映画見に行くんだ」
「それがホンマおもろい映画あんねん!! お嬢に勧めたら興味持ってくれてん!!」
「……うん、お前がそれでいいならいいよ」
何故か呆れたような目で見られる。そんな見つめちゃイヤン。
さて、お嬢に愛溢れたメールを添えなければならぬ。
「運命の赤い糸は赤外線なんかな……」
「可笑しいだろ、それ……」
まぁ同じ「赤」入ってるし似たようなもんやろ。
~
最近僕の幼馴染は可笑しい。
無論、その可笑しい原因に関して僕は理解している。
「……また例の先輩?」
「ああ」
ぶっきら棒に且つ男らしく答えたのは紛れもない幼馴染(♀)である。
光に当たると青く輝く黒髪を一つに緩く結って、色白で長身巨乳、手足は細く華奢でモデル体型と言える完璧なプロポーション。客観的に見れば美少女と称されても可笑しくはない容姿だ。
ややつり上がった目も冷たい目つきというより、凛々しさや気高さの方を意識させる。
もっと言うなれば、実家はそれなりに大きい。
これだけのオプションが付いた子が居れば、言い寄って来る男もそりゃ多いし、たまに女も居る。凄い面白……ゲフン、とてもカオスだ。思わず口元が緩んでしまう。
だが、そう簡単にそんな完璧な子は居ないわけで。
彼女、大分性格に難がある。
「ツンデレ」という言葉をご存じだろうか。「普段はツンツンしてるけど、たまにデレる」とか、そんなニュアンスである。
良い例として「べ、別にアンタの為に作ったわけじゃないんだからね!」と言って、弁当やらお菓子やら渡すシーン。これは、某芸人の「押すなよ!絶対押すなよ!」レベルの天邪鬼だ。
で、ツンデレだったらマシだった。まだ。
彼女は―――ツンドラ、である。
「ツンツンドライ」。救いなんてなかった。
兎に角冷たい。絶対零度のように冷たい。それこそ、どんなに可愛い女子高生だろうが、どんなにイケメンな男子高生だろうが、問答無用に冷やす。
人を見下すというよりも、昔自分が優秀な成績を修めた時に妬みの視線ややっかみなどがあったせいで、単に人間不信に陥っているだけだ。
金持ちだという理由でカツアゲされ(※返り討ちにしています)、成績優秀だと妬まれ苛められ(※証拠を持って警察に突き出してます)、好きな男を取ったと大多数に責められ(※相手が勝手に告白して来ただけなので、言い返したら泣かれたらしいです)。
まぁ完全にあちらが悪いんだけど、そのせいで彼女は普段黒いオーラを持つようになってしまい、無表情鉄仮面になってしまわれた。
勿論、周囲に人なんて居つかず、皆遠巻きに様子を窺うしかない。本当に仲良くなりたい人でも拒絶反応がヤバい。ああ恐ろしい。
「んで? 未来の旦那様は何てメールを?」
「……『明日、何時何処集合がいい?』」
「何しに行くの?」
「映画」
幼馴染年数10年以上。家族同然に過ごしてきた僕には、結構普通に接してくれる。
異性だが、僕には姉か妹程度にしか見れない現状。空しきかな。
だが、いつの間にこんな進展したのだろうか。
空蝉先輩が彼女のメアドをゲット出来たのも、遊びに誘って承諾するのも、他ならぬ彼女自身が心を開きつつあるのだ。
メアド登録数は虚しい一桁台だった彼女が、友人……いや未来の旦那様の名を登録した。
それだけで大きな進展とも言える。凄い、凄いぞ空蝉先輩。
まぁあの人……こういうのも何だけど、基本“馬鹿”だからなぁ。
何と言うか前向きで明るい。ウザいほどに元気で周囲を明るくさせるムードメーカー。
初めて会った時は計算かと思ったものだが、接していく内にこれが素でマジでアホという事が分かった。
そのせいか、凄く素直で愚直だ。お人好しな性格であり、お人好し伝説と言えばカツアゲになっている生徒を助ける為に不良3人に対して無傷で喧嘩に勝ったほどである。ある種武勇伝。
金髪でピアスまでしており、高身長な為か、見た目まんま不良である。だが、眼鏡をかけてるせいか何処かチャラ男風味。
アホっぽい犬歯が何ともいえない無邪気さを漂わせる。
僕はこんなにもキラキラ輝いている人は初めて見た。良く言えば無垢、悪く言えばアホ。
そんなキラキラした輝きに彼女でさえも毒されたのだろう。
こんなにも和やかな表情でメールの文面を見る彼女は初めて見た。
とても幸せそうな表情。僕は今の彼女はとても好ましい。
「……それにしても、君はまだ彼の告白を受けないんだね。そろそろ根負けしてあげたら?」
最早周りはお祝いムードなのだ。「いつ付き合うんだよ!」と嘆く男の先輩を廊下で見かけた事がある。全く以って同感だ。
そろそろ「二人をくっつけ隊」辺り出没するかもしれない。早く付き合え。
呆れ気味に言い放った言葉に、彼女はポカンと口を開いて唖然としていた。
「……どうしたの?」
「え? だってまだ『付き合って』なんて言われてないが?」
「…………は?」
「プロポーズしかされてない」
何言ってんだと言わんばかりの発言に、今度は僕が呆気に取られる番だった。
「……ええと、プロポーズだけ?」
「好きだの愛してるだのは言われるし、プロポーズは1日3回は言われるけど『付き合って』なんぞ言われた事ない」
……何て言うのが正しいのだろうか。『結婚しろ』って言えばいいのだろうか。
だって恐らくこの二人は両想い。そして映画を見に行ったり、二人で遊びに行くような間柄。
これをカップルと言わず何と言うのか。アベック(死語)か。
僕が微妙な顔をしているのが分かったのか、彼女は携帯電話を置き、呆れ気味に僕に言い放つ。
「あのな、結婚も無理なんだ」
「へ、え?」
「だって、考えてみろ」
彼女は僕を諭すように言った言葉は、耳に木霊する。
「彼奴、まだ18歳超えてないだろ」
サラリと衝撃的な発言。
彼女は「早く18にならんかな」と言いながら、再度携帯電話を弄り出す。
……空蝉先輩、アンタ馬鹿だよ。
こうして今日も、二人を中心に学校は騒ぎ出すのだった。
ポジティブアホ書くのは何か楽しいですね。
ちなみに作者関東人なので関西弁よく分からんとです。申し訳御座いません。似非関西弁です。