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紅い髪

 大変な事が起きてしまった。ここ最近、私の周りでは不思議な事ばっかり起きる。

 昨日だって、迷子の子供の親探しをした。普通なら、お、いいことしたじゃんと終わるはず、でも、……十人。たった一日で、十人もの子供の親探しをしたのだ。

 異常でしょ? あ、ちゃんと探して感動の再会を十回も見ました。お腹いっぱいだよ。

 他にだって財布が落ちてたりしたな、十回。これも一日で。もちろん交番に届ける。自分で言うのも何だけど、こういった事には正義感がある私だ。

 他にもいろいろあったな。あ、話が脱線したね、大変な事がおきた。何故かと言うと、道の真ん中に人が倒れている。

「……死んでる?」

 落ちていた木の棒を拾い突いた。チョンチョンとつつくとピクリと動く。

 しまった、私は何をしているんだ、こんな事をしている場合じゃない。助けないと。

「大丈夫ですか!」

「う~ん~……は!」

 その人は気付き、起き上がって私の顔をじーっと見つめている。私は大丈夫ですかと、尋ねた。

「あなたが、助けてくれたのですか?」

「え? 私は何も……」

「ありがとうございます! いゃあ~嬉しいです!」

 彼はサッと起き上がる。紅く長い髪、紅い瞳に黒いスーツ姿。何処をどう見ても、ホストにしか見えないんだけど?

 睨む様に見つめていると、ニコリと笑ってきやがる。

「まさか、キミ見たいな美人に助けてもらえるなんて、夢を見てる様ですよ! どうですか? これから二人でお食事でも?」

 目茶苦茶怪しい。どう見ても、さっきまで倒れていた人の反応じゃないと思う。これってもしかして……ナンパ?

「結構です、さようなら」

 そう言ってその場を離れようとした。すると彼は急にしゃがみ込んで、痛いと苦しみ出したのだ。

「え! だ、大丈夫?」

「じ、持病が……痛い~」

「大変! き、救急車!」

「あ、少し休めば大丈夫です……あそこの公園のベンチに」

 彼はその場所へと指をさしている。急いで肩を貸し、ベンチへと移動させてゆっくりと座らせる。すると、座った途端に元気になった。

「あ~、よくなりました。ありがとうございます!」

 なんなのこの人? さっきの絶対に嘘だよ。まったく、人を馬鹿にして、もうこんな人知らない。

 私はすぐにここを立ち去る決意を固める。

「じゃあ私、おつかいの途中なんで、さようなら!」

「待って下さい~! かまって下さい~!」

 私の服を掴んで離さなかった。ああ、もう駄目だ、優しく接して来たけど、もう駄目。

「一体何なんですか! いたずらか何かですか?」

「お話ししましょうよ。……皆川 真さん」

 私はびっくりした。なんで私の名前を知っているんだこの人?

 怪しい、本当に怪しい。記憶に無い、この人にあった事なんか無論ない。これだけ目立つ髪なら忘れるはずないんだけど。彼は一体何者なんだろうか? 頭の中で渦巻く謎。

「名前、なんで知ってるんですか?」

「実は私、あなたのストーカーさん何です!」

 身の危険を感じ、あとづさる私、ストーカーって私に? まさか、そんな馬鹿な。も、もしかして私、そんなに魅力的な女なのかな? あはは、参ったなこりゃあ。

「嘘ですよ、冗談ですよ!」

「い、いい加減にして下さい! 怒りますよ!」

 魅力的な女? あんな事を考えた私が馬鹿だった。すごく恥ずかしくなって来たよ。

 もう、からかわれて、疲れちゃう。そう思っていると、彼は予想しない事を話し出す。

「本当は、友達なんです、彼、佐波 峻の」

「え! 峻くんの友達?」

「はい、あなたの事は、彼から聞いていましたから知っていた訳です」

 峻くんの友達? 本当だろうか? 怪しいのは変わりない。まぁ、どうあれ、油断しないようにしなくちゃならないな。

 取りあえず信じるとして、何で倒れていたかそれを尋ねる。

「それはですね、面白いからです!」

「……はい?」

「だって、倒れているイケメンを助ける美少女、ほら面白いでしょ?」

「いえ、ぜんぜん……」

 何こいつ、自分で自分の事をイケメンって言ってるよ。馬鹿みたい。でも、美少女はよし!

「そうだ、名前を教えますね! 私の名前はルベスって言います!」

 ルベス? それ本名? その問い掛けに彼は本名だと主張。話の内容では、ハーフだと答えている。ハーフか、じゃあ、その紅い髪は地毛かな? まぁいいか、そんな事。

 さて、そろそろ気になって来たな、私に接触して来た理由。何故かと私は問う。

「私はこの一週間、あなたを試させてもらいました」

 え? 試すって、何の話よ? 落ち着け私、まだ理由を全部述べた訳じゃないじゃない。続きを聞いてみるか。

「ん~、いろいろやりましたからね、例えば……迷子の子供を助けましたよね?」

「ち、ちょっと待ってよ! どうして迷子の事を知っているのよ!」

「あはは、あれは、私が仕組んだ事ですから。いや~すごいですね、文句も言わずにみんな助けるなんて」

「こ、この馬鹿!」

 私の手の平がバシっと彼の頬にビンタする音を奏でた。彼の頬は赤く腫れ、ビンタをした手はまだ痺れている。

「あんたね、何様か知らないけど、まだ小さい子供から親を離れさせて……その子がどんな気持ちで泣いていたか分かってるの!」

 許せなかった。私は知っているから。小さい頃、商店街で迷子になった事がある。寂しくて、怖くて、もうママに会えないような気がして震えていた。

 あれを小さい子供に体験させた彼が許せない。

「あなた、考えた事ないの? その子の気持ちを! 母親の気持ちを! 答えて!」

 気持ちをぶつける。これでもかってほどに。さぁ、なにか言いなさいよ、相手になってやるわ。私は強くルベスを睨んだ。

 でも、彼の反応は予想とは違った、私の顔を見るなり、ニコリと笑うのだ。

「なるほど、峻が気にいる訳ですね……ごめんなさい、あの子供達は、人ならざる存在です。つまり私が創りあげた人形ですよ、無論母親もね」

「え? 何を言ってるの? 人形?」

「つまり、私は人間じゃないって事です」

 人間じゃない? この人は何を言っているの? 本当に何者なんだろう。私の中で疑問が渦巻いていた。

 彼がどうやら疑問の答えを言葉にする様だ。

「私は向こう側の存在です。こっちの言葉で地獄ですね」

「地獄? あ、じゃあ」

「勘がいいですね、そう、私が佐波 峻にあそこを守るように言った者です。峻に力を与えた存在ですよ、もともとあの能力は私の一部なんです」

 この人が峻くんに力を授けた人物。でも、なんで私を試す様な事をするんだろうか? その疑問だけが残っている。

「あなたは何者なの?」

「向こう側のヘルズゲートを守護する存在、向こう側の名はケルベロス」

「ケルベロス? ん~、何かの本で読んだような気がする、えっと……地獄の番犬だったかな?」

「よく知っていましたね! そうです。三つの頭をもつ地獄の番犬、それが私の真の姿です」

「でも、人間の姿をしているけど?」

「姿を変えてるんですよ、だって三つの頭の犬なんて嫌でしょ?」

 確かに嫌だね。そんなのが出て来たら私、パニックになっちゃうよ。

「私は知りたかった。キミという存在を、どんな人間なのか」

 私の事を? 一体、ルベスの目にはどう見えたの? 私はそう質問する、するとこんな返答が返って来た。

「惚れました!」

「はい?」

「ふふふ、混乱しないで下さい。あなたに興味が出たって事ですよ?」

 な、なんだ、びっくりしたな。惚れた何て言われたら誰だって混乱しちゃうよ。まったく、人騒がせな人。あ、人じゃないんだっけ。

「最初はどうしようか考えてました。あなたは危険な場所に自ら進んで飛び込んだ。正直びっくりです……なぜこんな事を続けるんですか?」

 言葉に詰まる。なぜって、それは……峻くんに会うためだ。私はありのままの事を語った。自分勝手な理由だけど、それでも私は……。

 彼はどんな事を言って来るのだろうか? 不安が纏わりつく中、予想外に彼は笑っていたのだ。

「ふふ、なるほど……なら、余計に死なせたくなくなった」

 そう言うと、彼の右手は白い光を放ち始め、その光は私を優しく包んでいく。あたたかくて、優しい感覚が広がる。

 私の中に光が染み込んで行く。何これ!? 混乱の中、徐々に光がおさまって行く。身体をあちこち触って異常がないかを調べた。一応、大丈夫そうだけど、一体何だったの?

「私の一部を貸してあげます。その名も『拒絶の白』! 身を守るだけですけど、取りあえずこれで死にはしないでしょう」

「……何で私に?」

「言ったでしょう? 興味を持ったと。あ、峻には内緒ですよ? あなたには、内緒で会いに来ていますので、知ったら殴られそうです」

 ありがとうと私は感謝の言葉叫んでいた。これで峻くんに迷惑かけなくても良くなったと思ったからだ。今まで私は邪魔をしているんじゃないかって思っていたから、嬉しかった。

「彼は、迷惑なんて思ってませんけど……まぁいいでしょう」

 それよりも、力をどうやって使うのかを尋ねて見たのだが、なんとも適当な答えが返ってくる。

そのうちに分かりますよ、それまでのお楽しみ、だって。何それ……。

「それでは、また来ます。もちろん彼にないしょでね!」

「また来るんですか?」

 明らかに、嫌な顔をしてやる。でも、彼には通じて無いみたいだ。

「もちろんですよ~、じゃあまた会いましょう!」

 彼はそう言い残し、一瞬ですぅっと消えて行った。

 嵐が過ぎ去った見たいに静かだった。今の夢じゃないよね? でも、嬉しかった。いつも彼の迷惑じゃないかなって、いつも思ってた。だから自分の身を守る術をもらったから。

 幸福な感情を感じている時、異様な視線を感じた。殺意に満ちた視線の先、そこに居たのは……。

「あらあら、まことさん、お買い物はどうしたのかしら? もしかして、おサボりですか?」

 そこに立っていたのはママです! この後は、お約束の展開です! ヤバイよ、どうしよう、何とか言い訳を言わなければ。

「待ってよママ! 違うの……って何でここにいるの?」

「問答無用です!」

 ニコリと笑ったかと思ったが、ママがこの世のものとは思えない顔をして近付いて来る。例えるなら鬼。

「や、やめて! グーはやめて、ごめ……」

 ただ今、とてもグロテスクな事になっております、しばらくお待ち下さい。何てナレーションが流れてもおかしくない状況におかれている。

 すべてが終わる頃、元に戻ったママは手を振りながら。

「じゃあ、行ってらっしゃい!」

 ブンブンとママは手を振る、満面の笑顔で。さっきまでの事が嘘だったかの様に。

「行って、きます……」

 私は倒れそうだった。このあとの買い物がきつかった事は言うまでも無い。

 

 

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