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第14話 夢


 ここはどこ?


 何も分からない。


 私は夢を見ている。


 知っているような風景。


 胸が痛くなる。


 キミは誰?


 目の前に誰かいる。


 世界は赤く染まる。


 嫌だ! 私は、私は……。




「わあ!」


 私の声が爆ぜて飛び交う。周りを見渡すと、もう夜だ。真っ暗でとても不安にさせる色。


「はぁ、はぁ、ゆ、夢か」


 傍らの時計を一瞥すると夜中の四時を回っていた。

 変な夢だったな、一体なんだったの?

 考えても仕方ない、もう寝よう。

 明るくなったら、峻くんのとこに行くんだから。


 嫌な夢だったな、夢に出て来た人物、誰かな? 知っているような気がする。

 ダメだ、記憶を探るけど、思い出せない。

 赤く染まる世界は、私を拒絶するみたいだった。

 もう寝よう。

 深く、深く、眠る。

 あの夢を見ない事を願う。






「え、変な夢?」


「うん」


 翌日、私は峻くんの部屋に来ていた。

 日曜日、今日は昼間来てもいいって言われて、遊びに来ている。

 スミスちゃんは、どこかに遊びに行っているらしく、二人っきりだ。

 私は彼に夢の事を相談をしていたところだった。


「夢の中で、どこかの建物のにいるんだよ、ん~このマンションみたいなとこかな? ここなのかな?」


「どうしてそんな夢を見るんだろうね?」


「分からないよ、夢には誰か出て来るの。顔が分からなかったな」


「そっか……きっと疲れているんだよ、ほら、異常な事が続くもんだからさ」


 なるほど、うん、そう言われるとそうかも知れない。


「わかった、気にしない事にするよ」


「それがいいよ、それが……」


 ん?

 峻くん? さっきから様子がおかしい様な気がする。私、何か悪い事を言ってしまったのかな?

 私が考え込んでいると、峻くんがそれに気付いた。


「何でもないから気にしないで」


 何だったんだろう、気になるな。


「あ、そう言えば、二人っきりって久し振りだね?」


「そ、そうだね、久し振りだね」


 あれ? 峻くんの顔、赤くない? 何だか妙に恥ずかしい感情が襲って来る。それを紛らわせるために話題を変えよう。


「お腹、へってない?」


「そ、そうだね、へってるよ」


 何だか気まずい感じだ。私は逃げる様に台所へと向かう。


「な、何か食べたいものない?」


「なんでもいいよ!」


 どうしてだろう、峻くんを直視できない。

 胸が痛い、何で? 分からないまま、好評だったカレーライスを作り、峻くんの前に差し出した。するとこの部屋の第三者が話だす。


「お、カレーライスか?」


「まぁね、簡単に……って、スミスちゃん! あの、えっと、遊びに行ったんじゃ?」


「腹が減ったから戻った」


 そっか、残念だな。

 あれ? 何、残念がってるんだろう?

 峻くんと二人っきりになりたかったの? 私の顔は、みるみると赤くなる。


「どうした皆川、顔が赤いぞ」


「へ? にゃんでも(なんでも)ないよ!」


 カレーライスを三人で食べる事になった。


「うまい! やはり皆川の料理が一番だ!」


 スミスちゃんが絶賛してくれる。


「ありがとう、スミスちゃん」


「うん、やっぱり、まこちゃんは、いいお嫁さんになるよ」


「ひゃ! お、お嫁さん!」


 想像しちゃった。いや、してしまった! その想像とは、私と峻くんの結婚式、私は純白のウエディングドレスで、峻くんと……。


「まこちゃん、顔赤いよ?」


「ひゃ! にゃんでも(なんでも)ない!」


 ヤバイ、ヤバイ、私妄想に捕らわれてた。


「お嫁さん? なんだそれは?」


 とスミスちゃんが訊いて来る。

 そっか、彼女は死神、お嫁さんを知らないんだ。


「えっとね、大好きな者どうしが、ずっと一緒にいる事で、それをした女の人の事を、お嫁さんって言うの」


「へぇ、じゃあ、俺は皆川のお嫁さんになる!」


「「え!」」


 私と峻くんが、声をそろえた。私とスミスちゃんが?


「あ、あのね、スミスちゃん、お嫁さんはね、男の人と一緒になるものだよ」


 まぁ、外国では同性も結婚出来る様だけど、話がややこしくなるから黙ってよ。


「そうか、皆川の事、好きなんだがな」


 嬉しいよスミスちゃん、その気持ち。

 彼女は何かを考えている様だ。そして、峻くんの方を向き、次の一言を話す。


「じゃあ、お嫁さんは佐波とでいいぞ?」


「じゃあってなんだ! 仕方ないみたいに言うな!」


「お嫁さんいらないのか? オレは……」


「ダメーー!」


 気が付くと私は叫んでいた。はっと気付いた時にはもう遅かった。スミスちゃんと峻くんは驚いてこっちを見つめていた。

 顔を真っ赤に染まっていた。どうしよう、何でこんな事を。


「えっと、まこちゃん? どうしたの?」


 その一言で、何も分かってない、そんな感じを彼から感じてしまった。


「……鈍感!」


「へ?」


 私は部屋から走りさってしまう。何してんだろう? 自分の気持ちも伝えないで、何が鈍感だ! 私に言う資格はないよ!









 時間が過ぎ、もうマンションは夜だった。俺は戦っている最中だ、地獄の住人の断末魔がマンションに響く。


「よし、佐波そっちは? ……佐波?」


 俺は考えていた、昼間のまこちゃんの事を。


 鈍感と言われてしまったな。


 よし、決めたぞ、ある決意を固めた。

 俺の気持ちを伝えなくては。


「何をボーッとしているんだ! あと二日で門は閉じるって時に」


『モミーン!』


「佐波、上だ!」


 碧い結晶は、ミミズの様な地獄の住人を固めていた。あと何匹だ、戦いはもうすぐ終わる。

 長い、長い時間が終わろうとしていた。










 ◇


 私は自分の家の部屋で落ち込んでいた。


 はぁ、嫌われたかな? 後悔していた。スミスちゃんは意味を知らなかったんだから。ため息しか出ない。

 そんな時、携帯が鳴る。


『あ、まこちゃん、俺だけど』


「峻くん! あ、あの昼間は……その、ごめんなさい!」


『別に怒ってないよ。それよりさ、明日、学校サボって俺とデートしようよ!』


「あのね、学校サボってデートって私は……デートぉ!」


 急にそんな、峻くんと私がデートだなんて。


 頭の中がぐるぐると渦を巻く、葛藤の中、私は決心した。


 明日、学校サボる!





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