幽霊家出
翌日、梨花子の目は腫れていた。ベッドの脇に置いてあるドレッサーの鏡を見て、ため息を吐く。
「泣いてないのになぁ」
自分でも強がりで、負けず嫌いだなと思わず苦笑いしてしまった。
寝室のドアをそろーっと開ける。リビングにノリの姿はなかった。
「出かけたか」
今日は学校もバイトもなく、久し振りにゆっくりできる。梨花子は何をしようかと考えながら、ソファに座った。
「おはよ」
「ひゃ!」
後からぬっと、ノリが現れた。昨日の今日ではノリの機嫌はまだ完全には直っておらず、それを察した梨花子の顔もしかめっ面になる。
「今日一日ゆっくりしたいから話しかけないで」
梨花子はそう言い放ち、ぷいっとそっぽを向いた。
「ああ、そう」
ノリの不機嫌そうな声を聞き流すと、梨花子は再び寝室に戻った。
「私、悪くないし」
梨花子は自分に言い聞かせるように呟いた。ベッドに再び戻ると、もう一眠りしようと目を閉じた。
次に目が覚めた時には日が暮れていた。梨花子は真っ暗な部屋で飛び起きた。
「あーもったいないことしたなぁ」
せっかくの休日を睡眠で終わらせてしまった。梨花子はベッドから下りると、リビングへ向かった。
ノリの姿は今度こそなかった。梨花子はほっとして、夕飯の支度を始めた。
「適当でいいやー」
ちゃんとしたものを作る気にもならず、簡単に夕飯を作った。
テレビを見ながら夕飯を食べる。ちらりと時計を見た。いつもならノリが戻って来ている時間である。しかし、ノリの姿はまだ見えない。
「勝手に成仏でもしたのかしら」
梨花子はふっと笑った。何だろう。幽霊なんだから勝手にいなくなるのは問題ないし、むしろ精々する。なのに、この気持ちは何だろう。結局夕飯もそんなにのどを通らず、食べ残したものは冷蔵庫で保存することにした。
「10時か…」
シャワーを浴び終え、リビングでくつろいでいるのだが、ノリはまだ戻って来ない。別に幽霊なのだから心配することもない。だが、
「ノリ…」
ノリは死んいるので、携帯電話なんて持っていない。連絡手段もなければ、居場所を確かめる方法もない。
「そのうち、戻って来るわ」
梨花子は自分に言い聞かせて、寝室へと戻った。
次の日、ノリを意外なところで発見することになる。