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マッチ箱殺人事件  作者: 松永 幸治
一章 侵食
6/16

別離

「田辺、みなを集めてくれ。状況を整理したい。」


僕らは大食堂に集まり、女将のつくった昼食と紅茶を飲みながら状況を整理した。

僕はさっき船橋と田辺から得た情報を涸沢に話し、涸沢がそれをまとめた。


「時系列として計算すると、こうなるわけだね。」


涸沢は書斎にあった大学ノートに、年表を書き出した。


2011年(3年前)浅香家母・死去。このあたりから浅香ー香奈が連絡を取り合う


2012 浅香旅館建設をはじめる。女将村上・執事船橋はこの頃から浅香旅館に従事。

ただし客はおらず、基本的業務は準備と大工との調整。


2014 浅香旅館完成。第1の客として、読書倶楽部の面々を選ぶが、浅香殺害。

そして第二の被害者とし、香奈殺害。車を失う。


浅香遺体ー 死因はおそらく、毒殺ではないかと推測される。口に大量のマッチを咥え、床にも箱とマッチが散乱していた


香奈遺体ー 死因は不明。爆破された車の中で眠っていたところを発見される。

車のあった場所にはマッチが散乱。おそらくこれが火元である。


「これらの点を踏まえると、外部半とは思えないね。

月並みなセリフだが…ふむ。この中に犯人はいるだろう。」


冷静に発言する涸沢に対し、西島が食ってかかる。


「ちょっとまて!俺たちが来る前から浅香は死んでたんだろ?俺たちは容疑者から除外されてるよな!?」


「相変わらずだな西島氏。説明してやってもいいがめんどうだ。桜井部長、君が連れてきたんだ。

君が手綱をとりたまえ」


どうやら徐々に涸沢の機嫌が悪くなっている。

西島の事はあまり好かないようだ。

桜井が補足する。


「聞けばこの旅館は、注意して歩けば丸一日とかからず下山することができるそうだ。

浅香が死んだのは少なくとも我々の来る3日以上まえ。

浅香を殺害し、東京にもどり、何食わぬ顔で私たちと合流し、初めて来た風に装うこともできるはずだ。」


「横から失礼ですが。」


船橋がそこへ割って入った。


「あなた方は、旅館の場所を知らなかったのでは?」


「そうだ!俺たちは場所すら知らねえ!そう考えれば怪しいのは女将とヒツジだぜ!」


「そんな…!私どもは浅香様にとてもよくきていただきました。

それに、殺害するならもっとはやくやっておりますわ。」


「俺たちに罪をなすりつけようとしたんだ!!」


西島は吠えるが、それを当然かのごとく涸沢が遮った。


「恥ずかしいからそのくらいにしたまえ、西島氏。

まず、旅館の場所だが、別に浅香は隠しちゃいない。

事前に詳細な場所を聞いていたかもしれんだろう?」


「でも遺書がー!」


「あのなあ…」


とそこで、それまで打ちひしがれていた田辺が口を開いた


「遺書は…犯人が書かせたものだ……。

あの紙切れに書いてあることは……浅香からの隠されたメッセージと…犯人の要求だ…。」

「そのとおりだ。わかったかね西島氏?

旅館の場所を隠そうとしたのは、浅香氏ではない。他ならぬ、犯人なのだよ。」


「…っ!」


僕はたまらず田辺のもとへより、耳打ちした。


「田辺、大丈夫か?部屋にもどらないか?」


「いや…犯人は…絶対捕まえなくちゃいけない……っ。

みんな!聞いてくれ。」


突然の呼びかけに、全員が田辺を振り向いた。


「犯人はこの中にいる。これは俺も間違いないと思う。だが誰が怪しいなんて言い出したらキリがねえ。

俺が金目当てで浅香を殺し、怪しまれないように香奈を殺してもいいわけだ。

もちろん執事も女将も怪しいし、涸沢と梶だって例外じゃない。

お前らミステリーコンビにかかればアリバイ作りも得意だろうからな。

桜井、進藤、西島はさっきの通りだ。つまり…浅香は金をもってる。動機はみんなにあるんだ。

まず、警察に伝えなくちゃならないと思う。

但し、下山する班と残る班で別れるんだ。

そうでないと、どこに犯人が潜んでいるかわからない。」


「では私と村上は残って旅館に従事した方がよろしいですね」


船橋が言ったが、涸沢が遮った。


「いや、道案内が必要だ。それに、女将村上氏と執事船橋氏は、浅香殺しに限って言えば1番怪しいのだ。

2人がグループ犯の可能性もあるから、別れるべきだろう。」


「その通りだ…。そして、涸沢副部長と梶も別グループだ。桜井と進藤もな。」


「おい、田辺、それはどういう意味だ?僕と涸沢副部長まで別グループだって?」


「いつもコンビの2人は分けた方がいい…ということだね?田辺氏。」


僕もここで納得がいった。全員、容疑者なのだ。僕は僕しか、信じてはいけないのだ。

グループ犯に囲まれては1番危険だ。


話し合いの結果、次のようにグループ分けが決まった。


残留組(調査を伴う) 村上・涸沢・桜井・西島


下山組 田辺・船橋・進藤・梶



田辺は調査をしたそうだったが、自分では香奈の焼死体を検める事などできない、というので残留組から除外された。


僕は幾分心細かったが、進藤ほどではないだろう…。

ガタガタ震え、1度など手洗いに駆け込み吐いていた。


だがああ見えて進藤は元テニスプレーヤーなのだ。足腰はしっかりしている。

西島は用心棒として残留。まあまあのフォーメーションであった。


いったい、誰が犯人なのか、僕には今のところ検討もついていない…。


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