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マッチ箱殺人事件  作者: 松永 幸治
三章 鬼の宴
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妙鬼

旅行数週間前ー


僕は田辺から連絡を受けた。


「ああ、そうなんだ。旅行。行きたいだろ?

しばらく喧騒から離れて、優雅な休息を楽しもうぜ!」


「ああ、だったら桜井部長に連絡を…」


「あ、それなんだがな、少し提案があるんだよ。先にお前だけで来て欲しいんだ。駅まで迎えが来てくれるそうだから、心配いらない。

隠れておいて、脅かしてやろうぜ」



まったくもって、意味のわからない提案だった。

僕はかつてから田辺は好きではなかった。睨むような目つきを、時々することに気づいていたからだ。

こいつは危険だ。そういう認識しかしていなかった。




旅行当日ー

迎えは田辺自身が来ていた。


指定された時間はもう夜中で、浅香や執事達は寝てるらしかった。

彼は執拗に私を彼の寝室に招いた。酒でも飲んで積もる話をしようというのだ。


荷物を自室においた際、自室にはカメラモードの携帯をしかけておいたので、なんとかこちらの寝室に酒盛りの会場を変更させた。


乾杯の直後、腹が痛くなったと言ってさりげなく携帯をとり、手洗いにたった。


コマ送りで再生してみるとやはり、死角からなにやら粉剤を取り出している。

睡眠剤かはたまた殺人の薬か…。


とにかく僕は酒を一口のんだふりをすると、味が好みでないと言ってそれ以上飲まなかった。


しばらく経つと田辺がやけに汗をかきはじめ、もっと飲まないかと言ってきた。

僕はタイミングを見計らい、唸り、苦しみ悶えながら気絶したふりをした。


驚くべきことに次の瞬間、田辺は僕の脈をとったのだ。

僕は即座に奥歯を噛み、医者の友人に事情を話して手に入れておいた仮死薬を服用した。



次に目が覚めた時は体に火が付きはじめていた。

まさか燃やすとは思っていなかったから、これは僕としたことが大いに狼狽した。


だがなんとか逃れ、火を消すと旅館の裏手に回った。


一部の荷物ー

つまり僕の仕事道具は、部屋の窓からこちらに投げておいたのだ。

田辺が気づいていないようで一安心だ。


僕は中からバラバラにしたマネキンを取り出すと、組み立てて腐らせておいた肉をところどころに巻きつけ、あらゆる香草をこれでもかというくらいふりかけ、先ほどまで僕のいた場所へいき燃やした。


プラスチックの香りは漂うが、もっと臭い香りがたくさんあるのでまあ素人ならこれで騙せるだろう。


火が消えたころにまた田辺が現れたなにやらある程度燃やした女物の服を、擬似死体に着せていた。


身代わり殺人らしい。田辺め、人選ミスだ。



僕がなに喰わぬ顔で桜井たちともう一度目の前に現れた時の彼の表情は実に笑えた。


あとはもう簡単だった。

あらかじめ危惧して仕事道具を持ってきておいたから、死んだふりくらいいくらでもできる。


調べたところ、割に大きな獲物が金庫に入っているようだった。

仕事道具をもってきておいて、ほんとうによかったー


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