殺人鬼
「はあ…っ!はあっ!桜井、、水を、水をくれないか…!」
脇腹から流れる血を抑え、手を真っ赤に染めた田辺にまず水をやった。
彼は生還したのだ。あの恐ろしい連続殺人鬼・梶から救われたのだ。
這いつくばる田辺の肩に手をおき、私は感傷に浸った。
「随分な怪我だな、田辺氏」
「ああ、涸沢副部長…。だけど犯人がわかったぜ……ぐっ!はあ…。
梶だ!あのやろう、猫かぶってやがったんだ!
みんな殺された!目の前で!」
「そうか。」
涸沢の態度は明らかにおかしい。こいつ、事件が解決してがっかりしているのか…?
「おい、涸沢副部長、労いのひとつくらい…。」
「新しい傷だな、田辺」
…?
今、「田辺」と言ったのか?「田辺氏」じゃなくてか?
「そこまで来てるんだ、やつが…梶が!
あぁっ!!!」
私はこの旅行で何度も驚いたが、今ほど驚愕した事はない。
涸沢が怪我人の田辺を蹴飛ばし、髪をつかみあげたのだ。田辺は絶叫した。
「ふむ。傷は本物か。よくまあ白々しく自分を刺してまで現れたな。
そんなに金庫の中身がほしいか?ん?どうなんだ、殺人鬼田辺よ。」
「お、おい!殺人鬼は梶なんじゃ…!」
「彼は哀れな被害者だよ…。なあ?田辺?」
梶原はまた田辺を殴った。田辺はぐうといって、動かなくなった。
気絶はしていなかったが、どうも動ける体力を無くしたらしい。