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こぼればなし  作者: やまやま
弐 最悪の黒
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最悪の黒-154_搬出作業再開

 翌日。

 ハクロたちは魔術書の搬出準備に追われていた。

 この数日ハクロがダウンしていたため滞っていた搬出作業だったがその遅れを取り戻すため、四人総出で積み込みを行うこととした。屋敷の前に停留させた馬車の荷台にはティルダくらいならすっぽり収まりそうな――というか実際に何度も収まったことのある――サイズの魔術書梱包用の木箱がぎっしりと詰まっている。

「これで一旦区切りましょうか」

「まだ無理すれば積めるだろう」

「……タマが不機嫌そう」

 次々と荷台に押し込められていく木箱を横目で見ていたタマが「正気か?」と言いたげにブフンと大きな鼻息を鳴らす。馬より幾分か速度は劣るが牛よりも力がある竜馬と言えど、積載量には限度がある。むしろ牛馬より賢いため機嫌を損ねると梃子でも動かなくなる。特に最近のタマはリリィやティルダが甘やかすため図に乗る傾向にあった。

「おいタマ。この感じだと三往復かかるが、頑張って詰め込めば二往復で終わるんだぞ」

「竜馬相手に仕事の交渉してどうするんですか」

「ブフゥ! オォォン!」

「痛ってえ! 何しやがるこの野郎!」

「……絶対嫌だって」

 軽く屈んで視線を合わせようとしたら腕に頭突きを食らった。事故防止のため幼獣期には断角しているとは言え、頭骨も丈夫な竜馬の頭突きは普通に痛いのだ。

「こいつ……しばらく手綱握らないうちに随分と態度がでかくなったな」

「ここ数か月は私しか湖都を出入りしてなかったですからねー」

 ジオフェルンの書斎の整理にあたり湖都と外の往来は必須だったが、その許諾が先日ジオフェルンに正式に認可されるまではフェアリーの気紛れに委ねられていた。魔術書の取扱いに心得のある者が下手に湖都の外に出て戻って来れなくなると書斎整理が滞るため、往復は魔術書の取扱いの心得のないリリィ一人に任せるしかなかったのだ。

 そしてその数か月の間に、ハクロをリリィより格下と判断したようだ。竜馬が格下の者を本気で拒絶したら頭突きでは済まないため、流石に自分より下とは思っていないだろうが、多少舐めた態度でも問題ないとは考えていそうだ。

「解せん」

「まあまあ。タマー、今日もお仕事お願いしますねー」

「いい子いい子……」

「ルォオン」

「こいつ……!」

 のほほんと笑みを浮かべながらリリィとティルダがタマのたてがみに沿って首を撫でる。するとハクロをどついた時とは明らかに違う柔らかな動作で角元をぐりぐりと押し当てていた。

 これでは名の通りまるで猫である。

「あのー、準備が出来たなら出発しマセンか?」

 そして猫顔のザラは三人と一頭のやり取りに呆れながら小さく溜息を吐いたのだった。

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