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こぼればなし  作者: やまやま
弐 最悪の黒
148/172

最悪の黒-140_ご安全に!

 翌朝。

 本とは言え積み重ねればそこそこの重量になるためストレッチで体をほぐした後、ハクロはリリィとティルダ、ザラを屋敷の前に一列に並べ、その前に立った。


「えー、3月29日、地の日。朝礼を開始する。おはようございます!」

「「「おはようございます!」」」

「それでは本日の作業内容、安全注意事項、人員、搬入出の確認!」

「ほ、本日の作業内容は魔術書の書斎からの搬出及び仕分け作業になります!」

「あ……安全注意、事項は……搬出する魔術書の順番の厳守と、不明魔導具等の確認で、す……! 作業時は魔力絶縁手袋を着用のこと……!」

「人員は4名、王都時刻3時30分より搬出した魔術書をエントランスホールにて仕分け、箱詰めし、湖畔のギルド宿まで馬車で搬出しマス。搬入の予定はありマセん。作業終了は王都時刻12時を予定しておりマス。本日はよろしくお願いしマス」

「よろしく。それでは搬入出の確認から行う! 王都時刻3時30分より搬出した魔術書をエントランスホールにて仕分け、箱詰めし、湖畔のギルド宿まで馬車で搬出! 搬入の予定はなし! 作業終了は王都時刻12時! 以上、追加のある者はいるか!」

「「「追加ありません!」」」

「行事としては昼休憩後、王都時刻9時より進捗確認の打ち合わせを行う! 何かあったらそれまでに報告するように! 本日の作業内容は魔術書の書斎からの搬出及び仕分け作業になる! また安全注意事項として、搬出する魔術書の順番の厳守と、不明魔導具の確認を行うこと! 作業に際しては魔力絶縁手袋を着用すること! 作業が終わったら片付けも忘れずに行うように! 続いて、30秒の危険予知に移る! 本日の作業内容でどのような事故が起こりうるかを考え、1名に発表してもらう! それでは30秒開始!」

「…………」

「…………」

「…………」

「それでは職人ギルド(レオン=ファクトリ)所属、傭兵ギルド(ロベルト=ファミリー)『太陽の翼』専属魔導具技師ティルダ! 前に出て発表!」

「は、ははは、はい……! 『太陽の翼』ティルダ・バーンズです……!」

「本日の作業内容を!」

「ほ、本日は魔術書の搬出になります……!」

「魔術書の搬出の際、どのような事故が発生しうるか!」

「はは、搬出時、て、手を滑らせて魔術書を落としてしまう可能性があります……!」

「魔術書の落下を防止するため、どのような対策を行うか!」

「ちゃ、着用する魔力絶縁手袋には滑り止めのある物を使用、し……横着せず、一冊ずつ搬出を行います……!」

「滑り止めのある魔力絶縁手袋を着用して作業し、一冊一冊搬出するように! ありがとうございます! ご安全にお願いします!」

「……ふう……」

「それでは安全コールを行う! リリィはザラと、ティルダは俺と一組になれ!」

「「「はい!」」」

「それではいくぞ! 魔力絶縁手袋よいか!」

「「「魔力絶縁手袋よし!」」」

「服装よいか!」

「「「服装よし!」」」

「足元よいか!」

「「「足元よし!」」」

「顔色よいか!」

「「「顔色よし!」」」

「獣人は尻尾がしまえているか!」

「「尻尾よし!」」

「本日も安全作業で頑張るように!」

「「「はい!」」」

「ご安全に!」

「「「ご安全に!」」」


 一通りの指さし確認が終わった後、慣れない作業用のツナギ服に着られていたリリィは深い安堵の溜息と共に大きく肩を落とした。

「あの……何ですかコレ?」

「……職人ギルド(レオン=ファクトリ)の土建系と鉱山系の現場の朝礼……ウチが苦手なやつ……」

「不思議と気合が入りマスねエ」

 下手をしたらリリィ以上に気の重そうなティルダと、それとは対照的にどこか楽しそうに笑っているザラ。ハクロもまたその様子に軽薄に笑いながら肩を竦めた。

「……というか、なんでハクロさん、こんなの知ってるの……? あっちにもあった?」

「これに関しては俺も普通に困惑している」

 ザラに聞かれないようティルダと耳打ちし合う。

 坑道調査で早めの時間に現場に到着した際、鉱夫たちの朝礼を目撃したハクロの何とも言えない気分と言ったらなかった。なんで賢者はこんなモン持ち込んだのか。いや安全管理は重要ではあるのだが。

「まあまあ、何だかんだこれが安全管理で一番確実だったりするんだぜ? その日の作業内容、安全上の注意点の復唱、互いの服装と装備のチェックにより連帯感も深まる」

「大声は?」

「聞こえなかったら意味がないだろ」

「…………これ、毎朝やるの?」

「作業内容の復唱は省略してやってもいいが、指さし確認は必須だ」

「……それなら、まあ……」

「ワタクシはやってもいいと思いマスよ」

「じゃあ3日に一回くらいやるか。見知った顔ぶれだけの作業でも、慣れてきた時が一番事故りやすい」

「「ひぇ……」」

「ハーイ」

 リリィとティルダは引き気味だが、何故かザラは乗り気な様子。良い心がけだと口の端を持ち上げながら、ハクロは魔石で覆われた廊下を踏みしめながら書斎へと向かった。

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