最悪の黒-110
実験記録 0057
被験体
・氏名:不明
・種族:獣人
・性別:男
・年齢:外見40代
・実験直前の状態:意識不明
・刺傷箇所:胸部左部
・特記事項:
この世界に渡って2例目の「人」に対しての実験。
1例目及び魔獣での実験と同様、【無銘】を生成し「太刀打ち」を行った。
結果、標準世界ガイアの妖魔の類と同様に刃に被験体の魂と魔力が封印される。
その後、「魂抜き」をせずに経過観察したところ、1例目と同様に1時間ほどで柄が弾け飛び、刃が魔力となって霧散した。
今回の実験体は意識不明状態(人格の休眠状態)であったため、自らの意思で太刀の封印を破るのは困難であったはず。それにもかかわらず柄の封が弾け飛んだのを見るに、以下の仮説が立ち上がる。
1:そもそも「太刀打ち」では魂が封の中で暴れるため、そのまま保持することが困難であることから柄を取り外して魂だけ抜き取る「魂抜き」を行うと伝承されているが、魂が暴れる云々に関わらず魂の保持が出来ない術式構築になっている。
→だがそれだと白羽の魂が今なお太刀に封じられているのが説明がつかない。
2:この世界の魂と「太刀打ち」の術式相性が悪く、保持が困難。
→1よりはこちらの方が有力だが、相性が悪いのならば1時間程度であれば保持できるのは何故か。また、こちらの世界の魂の構造に合わせて術式を再構築すれば保持が可能なのか。
なお、これまで幾度か魔獣で実験した時にも感じたことだが、柄が弾け飛んだ際、内側から封が破られたというよりも外側からこじ開けられたような印象があった。この世界の魔獣特有の現象かとも思っていたが、「人」でも同様の現象が発生したことから外的要因も視野に入れ、3例目の「人」を用いた実験の際には改めて様子を記録する。





