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003

「いい勉強になりました。直ぐには人を信用しないようにします。ジェシーさんが盗賊ではなくて冒険者で助かりました。弓で狙われていると知ったときは肝を冷やしましたよ」


ユウトがそう答えるとスキンヘッドの男が反応した。


「お前が盗賊の仲間とかだったら矢が頭ぶち抜いていたさ。俺も自己紹介をしておこう。レッド・フォックスの副団長でダンテスだ。よろしくな」


「よろしくお願いします。ダンテスさん」


ユウトはそう言いダンテスと握手を交わす。すると筋肉ムキムキでダンテスと一緒に出てきた男が口を開いた。


「おれはジェシーと同じパーティーメンバーで斥候をしているトーマスだ。俺もよろしく頼むぜ」


「はい、ユウトです。よろしくお願いします」


トーマスとユウトとも握手をする。三人で自己紹介をしていると馬車から降りてきたぽっちゃりした男の人が震えながらジェシーに話しかけてきた。


「ジェシーさん。もう大丈夫なんですか? その少年は盗賊の類じゃなかったんですか? 握手をしているということはもう平気みたいですね」


するとジェシーがぽっちゃり男の前に進み出た。


「ベルモントさん。もうへいきだよ。こいつは例の商会でもないし盗賊でもないよ。


ジェシーはそう言うと、ユウトの事を説明してくれる。 親切な事に、全部でっち上げた内容だ。


「街と街の移動の合間に単に森に分け入って、薬草とかキノコの類を採取してたんだとさ。そんで出ようにも道が分からなくなって、彷徨った挙句に出てきたのが偶然ココだったって事らしい。魔の森を彷徨うってんだから、本当に馬鹿な奴だよ!」


 そう言いながらジェシーは、ユウトにウインクして見せるのでユウトはそれに乗っからせて貰う。


「驚かせてすいません。実は珍しい薬草がないかと探してたんです。そしたら迷ってしまったんですよ」


そしてユウトは異世界ネットスーパーでHPの回復薬に使われている癒し草を購入して手に取りベルモントに見せる。


「これは癒し草だね。しかし、いつたいどこからその癒し草を出したんだ」


「スキルアイテム収納を持っているんです。他にもありますがみますか?」


「そうだな。薬草を売りたいなら購入したいとは思う。どうだい売ってくれるかい」


ユウトは現金を得ることができることに喜んだ。街に着くまでに現金はどうしても必要だった。例えば入場税とかあったら現金がないと街に入ることはできない。宿泊施設に泊まるのにもお金はいる。ユウトは10本一束の癒し草を1,000束異世界ネットスーパーで購入してベルモントに差し出す。


「これは結構あるね。質もよさそうだ。一束500ルビー計算させてもらうよ。金貨5枚で購入しよう」


「はい、それで構いません」


この世界では

鉄 貨・・・・・・・・・・・・・1ルビー

大鉄貨・・・・・・・・・・・・10ルビー

銅 貨・・・・・・・・・・・100ルビー

大銅貨・・・・・・・・・1,000ルビー

銀 貨・・・・・・・・10,000ルビー

金 貨・・・・・・・100,000ルビー

というような貨幣になっている。


ユウトは現金を得てホッとする。ジェシーはいいタイミングで薬草を出したユウトに感心する。本当に薬草を集めていたなんて思っていなかったからだ。異世界からきて肝動転しているはずなのに薬草を探す時間はあったんだなと思った。そしてユウトに耳打ちする。


「本当に薬草採取をしていたのか?」


「まあ、スキル鑑定があるのでお金になりそうなものを物色していたんだよ」


ユウトもジェシーだけに聞こえるように話をする。ジェシーはユウトが鑑定を持っていることに驚いた。スキル鑑定なんてジェシーは27年冒険者を続けているが聞いたことがなかった。ユウトの一言に頭を抱えた。


「ユウト。鑑定のスキルの話は他ではするな。私とユウトの二人だけの秘密だ。鑑定なんてスキルは聞いたことがないんでな」


ユウトは唖然とした。また余計なことを話しに出したらしい。この世界の常識を身に着けるまでは自分のスキルや種族の事を黙っていようとユウとは心に決めた。


「ごめんなさい。また非常識なことを言ってしまったみたいですね。これからは気を付けます。でも、そうしたら鑑定はどうやって行うのですか?」


「鑑定の魔道具がダンジョンで発見されるんだよ。スクロールだったりルーペだったりする。それらを使って鑑定するんだぞ。覚えておいても損はないだろうよ」


「分かりました。以後気を付けます」


ジェシーとユウトが話している間にベルモントは馬車に戻ってしまった。そしてベルモントが乗った馬車から大きな声が聞こえてきた。


「おい!! リリアナ!! どうしたんだ!! 大丈夫か!!」


「何かあったんでしょうか?」


ユウトの質問にジェシーは困った顔をする。


「だから今回の商いにリリカ嬢ちゃんをつれてくるのは嫌だったんだよ」


「リリカとは?」


「ああ、ベルモントの子供だ。今年12歳になる。子どもを連れての旅は大変だといったんだがね。ベルモントはリリカ嬢ちゃんが行きたいと言っているとの一点張りでね・・・」


「俺は神聖魔法が使えます。様子を見てきても大丈夫ですか?」


「ユウトは神聖魔法も使えるのか・・・。異世界人っていうのは何でもありなんだね。いいよ、一緒に行ってやるよ」


ユウトはジェシーに連れられてベルモントの乗っている馬車に急ぐ。馬車には使用人も駆けつけてしていた。リリカは汗をいっぱい書いていた。鑑定で調べると熱中症と出ていた。ユウトは異世界ネットスーパーでスポーツ飲料を購入する。


「ベルモントさん。彼女は熱中症です。直ぐに日陰で寝かしてください。そのままでは命にかかわるものです」


「おおユウト君は病気にも詳しいのか」


「はい」


「分かった。リリカを日陰に運びなさい」


ベルモントはリリカを使用人に命じてリリカを森の木陰に移す。しかし、その行動は魔物の森に入ることになる。危険な行動だった。ジェシーは素早くレッド・フォックスのメンバーに合図を送り周りを警戒させる。ユウトはリリカのそばに座り「アンチアブノーマススタレーション」と唱える。するとリリカの体が淡い光を放つ。


「一応、魔法で状態異常の治療は行いました。跡は水分補給にこれを飲ませてください」


ユウトはそう言いスポーツドリンクをベルモントに差し出す。ベルモントはそれを受け取る。


「これはどうやって開けるんだ?」


この世界にペットボトルなんてあるはずがない。ベルモントがふたを開けられないのは当然だ。ユウトはベルモントからスポーツドリンクを受け取りふたを外して再度渡す。


「ありがとう。見たこと見たことのない容器だね。さっそくリリカに飲ませるよ」


ベルモントはリリカの頭を持ち上げてスポーツドリンクをリリカに飲ませる。魔法で様態がよくなっていたリリカはおいしそうにスポーツドリンクを飲む。


「お父さん。これおいしいよ。もう気持ち悪くない」


「本当かい?」


「うん。もう大丈夫だよ。心配かけてごめんなさい」


「いいんだよ。気にするな。こちらにいるユウト君がリリカに魔法をかけてくれたんだよ。お礼を言いなさい」


リリカはユウトを見てほほを赤らめる。ユウトはまだ自分の顔を見ていないから気が付いていないがかなりあまいマスクをしている。吸血鬼なので容姿は人を魅了するくらいかっこいい。リリカはユウトに一目ぼれしてしまった・


「ユウトさん。ありがとうございます。もう体は大丈夫になりました。ユウトさんのおかげです」


そう言ってユウトに近づく。ユウトは初めての魔法がうまくいったことに気をよくしてリリカに微笑み返す。


「元気になってよかったね。これで旅を続けられるね」


「はい。もうみんなに迷惑をかけないようにします、みなさんもありがとうございます」


リリカがそう言うと使用人のみんなが笑顔になる。ジェシーはリリカの状態がいいなら早く移動したかった。ここの森は魔の森と言われていて魔物が多く出没するのだ。


「ベルモントさん。早くここを出たほうがよさそうだよ。魔物がいつ出てくるともわからないからね」


ベルモントはここが魔の森の外延部にできた道だということを再認識する。


「ああ、そうですね。早く出発しましょう。ユウト君も一緒にくるかい?迷子なんだろ」


「はい、よろしくお願いします」


「ユウトさんは私と同じ馬車でいいよね、お父さん」


リリカはユウトと一緒の馬車に乗りたがる。ベルモントはユウトがいい男と認識しているためにリリカが積極的に優斗と同じ馬車に乗りたがるのが気に入らない。


「優斗君はジェシーたちと同じ馬車に乗りなさい」


「分かりました。ジェシーさん。よろしくお願いします」


「ああ、此方こそよろしく頼むよ。さあ、みんな馬車にのりな。出発するよ」


ジェシーがそう言うとみんなが出発の準備を始める。10分くらいして馬車は進みだした。


読んでくれてありがとうございます。

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