コーンポタージュのような声
「さ、寒い………」
完全に雨に濡れてしまった………
無我夢中で走っていたから気付かなかったけど
あたし……、全然知らない世界に迷い込んでたんだった……。
「帰りたい………のかな」
震える身体を抱き締めて、とぼとぼと歩いていると、ひまわりは巨大な木と遭遇する。
木の 木幹の部分が空洞となっており、一時的にそこで雨宿りをする事にした。
「はあ……、なんだか温かいかも……。にしても、凄い大きな木だなあ……。」
「──そりゃあ、この世界を支える大樹だからね」
「へぇ……そうなんだぁ~」
…………
「って、なんで居るの!?」
隣にいつの間にか座っていたソウに、ひまわりは吃驚して後退る。
当の本人はポカンとした表情で頭に?を浮かべていた。
「え、なんでって……───だってこの大樹は、僕らの店から徒歩5分圏内にあるからさ~」
「近っ!!てゆーか、そんな遠くに行ってなかったのか自分!!」
自分にツッコミを入れるそぶりをすると、ソウはクスクスと笑い、自分が羽織っていたジャケットをひまわりの肩に掛けた。
ジャケットからはハーブの香りとセロリ…の香りなのか…。見た目からして野菜とハーブ系が好きなのはなんとなく伝わる。
(この人はどんな料理を作るんだろう…)
「僕は、ハーブや野菜を使った料理が得意なんだ~」
「ひええ!?こ、心を読んだ!?」
「え?」
「い、いや……なんでもないです……」
「あの店では店長をしてるんだけど、副店長のスイには頭が上がらなくてねぇ~笑」
「えぇーー!?、店長さんなの!?」
「逆だって思ったでしょ?」
「う……い、いや…そんな事は……」
「ぷっ……───君って、素直で正直者だね。とっても素敵だと思うよ」
そんな純新無垢な笑顔で言われたら……
心臓が煩い……、どうしてこんなにドキドキするのだろうか。
(頬が熱い…………)
それに何だか…………頭がクラクラする…
「?……ひまわり、どうしたの……って、凄い熱じゃないか!」
ソウの声が脳内に響く。
何だろう……、この人の声って…
温かくて、優しくて、まるで…………
「コーンポタージュみたいな……声」
そこであたしの意識は途切れた────
。
。
。
温かいぬくもり…………
それに、この香りは……─────
「ソウ……?」
『……』
「夢か……」
『……君は、僕達を止められるのかい?』
「止める?……」
宙に浮く感覚がハッキリとした時、ソウと声音がそっくりな、黒いローブを纏った人物に抱きかかえられていたのだ。
ひまわりはその人物の顔に優しく触れた。
「泣いているの?」
『…………僕達は何人もの犠牲者を出してしまったんだ。』
「犠牲者?」
『……もう時間が無い。』
「貴方、ソウなの?」
『……君が、《《僕等》》を止めてくれ。でないと、世界が……』
世界が……何?──────




