表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/21

チョコミントを唇に添えて2

遠い昔、異世界に迷い込んだ事があった。

今思えば、それは夢だったかもしれない



「えぇーーーー!?どこお!?ここぉー!!」


おつかいを頼まれて、いつもの馴染みの商店街に向かって歩いていた筈なのに……

その時は、森の中に迷い込んでいたっけ


「おかあさぁぁぁん!!!まいごになっちゃったよぉぉーーーー!!!」


ぐぎゅるるる~……と、腹の虫も鳴って

恐怖と空腹でわんわんと泣いていると


「どうしたの?君、迷子かな?」


幼いながらも、「この人は軍人」だと理解していた。不思議と怖くはない。

でも、軍服が似合わないくらいの優しい笑みを浮かべて、あたしの頭を優しく撫でてくれた。

温かくて大きくて優しい手。

微かにミントの香りもする。


「お腹すいてるんだね───おいで、あっちに美味しい食事処があるから──……と言っても、僕と仲間で…こっそりと建てた所なんだけどねっ」


その人は人差し指を唇にあてて悪戯っぽい笑みを浮かべていた。

知らない人には着いていかない!───当時のあたしには、その言葉は掻き消されていた。だって……悪い人じゃないって分かっていたから


「ごはん……たべれる!?」


「ふふ、もちろんだよ。君の好きな物は何かな?」


「ハンバーグと!カレーと!お寿司と!……あと……あと……──チョコミントも好き!!」


「チョコ、ミント?」


「チョコとミントがね!がったいしてね、スーッとするけど甘くておいしいんだよ!!」


「へぇ~……チョコレートと相性が良いなんて初めて聞いたよ。君は物知りなんだね」


「えへへっ」


繋がれた手はとても温かくて優しくて、大好きだった。


どうして……"今"この時の記憶を思い出すんだろう。


重ねられた唇から、懐かしくて大好きだった人が溢れてくる。


「っ!!───」


ドンッ!!!と、ソウを突き飛ばし、唇を抑えた。微かにチョコミントの味がして、身体は燃えるように熱くなる。

紛れもない─────あの時の"軍人"はソウだ。


でも、今目の前に居るソウは……


「あなた……だれ、なの?」


ソウなのに、あたしが出逢ったソウは

今目の前にいるソウではない。


同じ人物の筈なのに、まるで別人……


「…分からないんだ……───時折、沢山の"僕"が……問いかけてくるんだよね。()()()()()()()()()って……」


(もし……────ソウの人生がループしているとしたら)


「……でも、チョコミントだけは……記憶と魂の片隅に残っているんだよね…。小さい女の子と……───君だったんだね、ひまわり。」



アモネが言っていた言葉の意味が分かった


"三人の死ぬ姿"をもう見たくないと言っていた……あの意味が。


ソウは、一度死んで、何度も同じ人生をループしているんだ。スイとエンジもきっとそう……


「ばかっ!!!…どうして……どうして───」


「……食べる君が美しくて、愛おしいと思ったのがきっかけ……だった気がするよ……。あはは、あんまり上手く思い出せないけど……」


何度この人は辛い思いをしたのだろう。

戦う事が似合わない彼は、何度戦って散っていったのだろう。


何度……人を犠牲にして、その罪に押し潰されそうになったのだろう?



『……君が、()()を止めてくれ。でないと、世界が……』


「どうして……教えてくれなかったの」


熱で魘されて、夢で出逢ったあの黒いローブの人物は……


「"久しぶり"って……なんで言ってくれなかったの……」


初めて出逢ったソウだったなんて……


「ソウ……ッ!!」


今直ぐに貴方に逢って、あたしはこんなに大きくなったんだよって伝えたい。

貴方の年齢に近付けたよって……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ