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魚が食べれない少年3

ガチャ……──────


閉店したエルピスの店の扉がゆっくりと開き

ピチョン……ピチョン────と、水滴が床に垂れる。


(やってしまったな……)


大人気ないと自分でも思う。

昔の仲間を見ただけで、気が動転してしまうのは、まだ……────


「やっと帰ってきた!」


「!───レディ…」


「全く!!無断欠勤な上に、こんな暗くなるまで何やってたの!?───…心配したじゃないの」


「……貴女は、予想以上にお節介ですね」


「よく言われるよ」


ひまわりはスイにタオルを差し出すフリをして、そのまま本人の頭にタオルを被せた。

ワシャワシャと少々乱暴にタオルを動かすと、悲鳴を上げるスイ。


「えへへ~、こうすると早く乾くんだよ」


「……怒、貴女は…結構ガサツですね……」


「料理も目分量の人ですから」


「正確に量らないと、完璧な味にはなりませんよ」


「それが面白いんじゃん!。目分量でしか出せない味とかバランスとか……、その時にしか作れないのって良くない?。あ、勿論!ちゃんと量って作る事もあるけどね?」


完璧を求められていた私が、1番否定されていた物がこれだ。


「……───私、魚が食べれないんです」


今日は何だか……無性に口から、余計な事が零れてしまうな


「そうなんだ」


幼い頃──私の両親は、三銃士の1人を生んだと国中から祝福され、多額の金品を寄付されたのだ。でもそれは……本来であれば貧しい人々に寄付される物だったと、後から物心がついた時に聞かされた。


『お前のせいで、弟が死んじまったじゃねぇか!!!!』


自分と同い年の少年に悪態をつかれても、腹も立たない───いや、立てられないんだ。

だって、私のせいで……───少年の弟は死んでしまったのだから。

国の為に戦う?命を懸けて?

そんな綺麗事は、腐っている。

命を懸ける前に、何人犠牲にしてきたんだろうか───この国は……


「父に、私はこう言いました──「人を犠牲にしてまで、裕福でいたくもない…料理も食べたくない」と…───その時出されたのが、アクアパッツァでした」


「アクアパッツァ…」


「ふふ…、縁があったのでしょうね……───それとも…呪いだったのか」


ガシャンッ!!!─────


『お前は国に逆らう気か!?──誰の為に、何人…犠牲になったと思ってるんだッ!!!』


私の髪の毛を乱暴に引っ張る父は、私の口に無理矢理魚の身を押し込みました。

恐怖で吐き出してしまい、身体には蕁麻疹が……


「アレルギーを持っていたんです…───魚料理を見るだけで、その時の事を思い出します」


「……でも、本当は…魚料理が好きなんじゃないの?」


「……どうしてそう思うのですか?」


「だって…、そうじゃなかったら……この国の為に、スイは食戦争で戦わないと思うもの。……この国を救うのは勿論だけど、それ以上の闘争心────腐った野郎を叩き潰すってね!」


拳を突き上げて、ひまわりは笑った。


「ねぇ、スイ───あたしが、アクアパッツァを作るから、それを食べてみて欲しいの。」


「え……」


「ボラさんからね……──ごめん、聞いちゃった。昔……ボラさんを…スイのお父さんから庇う為に、魚料理を口にしたって……───」


「全く……───アイツは余計な事しか…」


「魚アレルギーだって聞いたけど、あたしは、心因性なんじゃないかって思うの」


「……元々ではなく……と?」


「あたしも一時、野菜が食べれなくて……、口にするだけで吐いちゃったり、蕁麻疹が出来たこともあるの。でも、お母さんが工夫してくれたら……いつの間にか食べれるようになってて、逆に今は野菜Loveだよっ。」


「そうではなかった時……───どう責任を取るおつもりですか?」


「……その時は───トイレ掃除一生やります。」


「……────ふふっ、貴女は思った以上にアホですね。……私の傍で、トイレ掃除を一生やり続けて下さい。」


「?……それって……結局あたし、トイレ掃除から逃れられないルートってこと?」


「私からも……ですね」


?を頭に浮かべるひまわりに、スイは穏やかな笑みを浮かべた。

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