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休暇を与えられても……

「……え? お休みですか?」

「はい。 この国では国民に最低でも週一日の休暇が義務付けられていまして。 私達メイドも日替わりで休みを取ってるんですよね。 それで、今日はセリカちゃんの日ってことです」

「……はぁ」


 今日もメイドとしての職務を全うするべく、勇んでスクナさんの元にやってきた僕であったがその言葉に肩透かしを食らう。

 そんなスクナさんも今日は休暇のようで、いつものようなメイド服ではなく町娘らしい格好に身を包んでいた。


「……? あんまり嬉しくなさそうですね?」


 僕の顔を覗き込んだスクナさんは、不思議そうに首を傾げる。


「いや……なんというか、やる事がないというのも考えものだと思いまして」


 端的な話やる事がない。

 そもそもメイドの業務すら魔族の文献の翻訳の片手間として始めたものであるし……急に休暇を与えられるのも考えものだ。

 そんな僕の返答にスクナさんは顔を顰めた。


「あー……。 それは良くないですよセリカちゃん」

「……良くない、とは?」

「手段と目的が逆転しちゃってます。 私達が労働してるのは遊ぶお金を得るためですよね? それなのにいざ休暇を与えられてやる事がない、だなんて労働するために生きてるようなものじゃないですか」

「…………なるほど」


 スクナさんの言う事も一理ある。


「ですが……生憎私には趣味らしい趣味もなくて。 どうやって過ごしたらいいのかなと」

「ふむふむ。 それなら……私と一緒にお買い物にでも行きませんか?」


 スクナさんはパッと笑顔を浮かべる。


「買い物ですか?」

「はい。 お恥ずかしながら私も無趣味な女でして……休みの日にやることがないんですよ。 だからよく街をぶらついてまして」


 スクナさんは人懐っこい笑みを浮かべて言う。


「……なるほど、わかりました」


 そんなスクナさんに流されて僕は承諾してしまったのだが……

 ★


「……む」


 スクナさんとの約束を取り付け、共に街へと向かうべく自室で準備を進めていた僕はとある問題に気がついた。


「……服がない」


 基本的に昼はメイド服、夜はパジャマで生活していたため今まで気にもしていなかったが、僕は外で遊ぶのに適した服装を持ち合わせていなかったのだ。


「うーん……流石にこれは……まずいな」


 一応メイド服以外にもいくつかドレスなどを貰ってはいるものの……どれもパーティーなどで使用されるような高価なものであり、とてもじゃないが街に買い物にいくような服装ではない。


「うーん。 まぁ……これ……なのか?」


 僕はこの身体を手に入れてすぐに手渡されたローブを見つめる。

 これもまた到底買い物をするような服装ではないが、手持ちの服の中では一番マシであろう。

 あまりスクナさんを待たせるのも良くないので、僕はメイド服の上にローブを羽織って出掛けることにした。

 そんな軽い気持ちで服を選んだ僕であったが、後にこの選択を後悔することになるとはこの時微塵も感じていなかった。

「女子の買い物」僕はそれを甘く考えすぎていたことを知ることになるのだが……それは少し後の話である。

体調が少し不安定ですので、投稿が不定期になるときがあります、すいません

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